クロノの本音と本心
僕の気付いた仮説、それは傷を癒していた訳では無く『傷を喰っていた』。
まるで傷が無かったかの様に喰っていた
だからこそ切断された腕は戻らないし、折れた骨を繋げる事が出来ない
何故なら傷口を喰っても生えてくる訳でもないし、折れた骨はくっつく訳でも無い
(これは・・・思った以上に厄介で、もしかすると凶悪なスキルじゃないのか?)
どこまで喰らうか分からないが・・・極論、スキルどころか【大罪スキル】まで喰らう事が出来るかもしれない
今だって魔法は喰う事が出来るのだから、別物とは言えスキルを喰えない通りはない
(試してみるか・・・)
僕は未だ警戒しているサタニックに視線を向け、【暴喰ノ口】を発動させたまま一気に襲い掛かる
「?!!!」
僕からの突然の攻撃に動揺したのか、斬撃を躱す事も出来ずに槍で攻撃を防ぐ
その瞬間、触手が彼女の足元に絡みつき口の元へ連れて行こうとする
「ふんっ!!!」
だが・・・そこはやはり【魔皇帝】だ
触手レベルでは絡みつける事は出来ても捕縛する事が出来ない
僕は彼女が体勢を崩したすきに胴回りを斬りつける
「くっ!!だがっ!!!」
僕の斬撃を受けた筈なのに、鎗の連撃で反撃を講じてくる
鎗の連撃を躱し、再度僕は距離を取る
(やはりブロウドさんから貰ったローブは厄介だな・・・。敵の手に渡ってより実感してしまう。)
当初の彼女の装備だったなら、倒せてはいないまでも確実に致命傷は与えた筈だ
にも拘らず彼女自身は軽傷程度で収まっている
正直、厄介なんてものじゃない
それに・・・【暴喰ノ口】は一体に付き一本の触手でしか攻撃が出来ない
流石に一本では彼女を捕縛する事が出来なかった・・・
「・・・よう分かった。貴様が我の疑問に答える気が無いのも・・・思いの外厄介な敵だという事も理解した。」
そう言って再度魔力を上げ、自分の身体へ纏わり付けさせる
正直、答える気が無いのは当然だとは思うけれど・・・そうも言っていられない状況だ
「クロノスの【魔皇帝】、いや・・・クロノ=エンドロールよ。我々は何故、【大罪スキル】から選ばれたと思う?」
僕は何も答えない
だが、彼女は最早期待すらしていなかったのか更に言葉を続ける
「我は思うのだ。先程も言ったが、我らは誰よりも欲求に純粋だからだとな・・・。何故なら我は・・・欲しい。民を守る強さを、間違えない聡明さを、武による技量を、誰にも有無を言わせない魔力を、飢えのない世界を!!平安な生活を!!争いのない安息を!!奪われる事のない・・・我自身・・・を。・・・我はこの良にあるありとあらゆる全てが欲しい!!だからこそ、このスキルを得たのだと。」
「・・・・・・」
「貴様のソレもそこに繋がると思うぞ?我らは根深い・・・だが、だからこそ我らはこのスキルに選ばれ、そして争わずにはいられないのだ。そう言う意味では・・・はっ、7つの【大罪スキル】が降りて居ろう今の魔族領で大きな争いが数百年無かったのは・・・奇跡だな。」
僕は・・・何かを喰べたかったのだろうか
いや・・・本当は理解している
僕は全てを喰らいたかった
全てを喰らい、喰らいつくして、僕以外のこんな世界なんて無くなってしまえと思っていた
それが成長して、僕は僕と姉さん、父さん以外の世界なんて無くなっちまえと思っていた
そんな自分の心情奥深くを指摘された様で表情が歪む
「くくく・・・心当たりが有りそうだな。だがまぁ・・・1人語りも良い加減飽きたな。」
そう言った瞬間、今までとは違う魔力の噴出で彼女が視界から見えなくなる
僕も残り少ない魔力を使用するべく、必死に魔力を練り上げる
「クロノ=エンドロールよ。これが我の【魔皇帝】としての最後の一撃よ・・・。この一撃が終われば【魔神】となっているか・・・貴様に殺されているかのどちらかだろう。」
魔力の竜巻の奥から彼女の声だけが聞こえる
僕は、最後の攻撃を練り上げるタイミングを計る為に必死に彼女の動向を探った
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