クロノの対峙と回避
「飽くまでも『帰ラズノ国』を目指すと・・・。理由を聞いても?」
「別に問題は無いけどね・・・。それがある人の課題であり約束だからかな。」
僕がそう告げると目に見えて不愉快な表情を浮かべる
(まぁ、そうだろうな。)
相手側からすれば魔族領をある意味でメチャクチャにした挙句、人族にまで喧嘩を売った厄介者がズファイオに行く理由が約束だからとのたまっている
逆の立場なら僕だって腹正しく思うだろう
「その課題?約束?とやらの為に何百の命をも散らさせてもそれを果たすと?」
「・・・うんそうだね。貴女からすれば取るに足らない理由だとは思うけれど・・・命を助けられ、生きる意義を与えられ、今と言う時間を与えてくれた方からとの約束なんだ。・・・僕だって自分勝手だって理解はしているけどね。」
「その為に敵軍のみならず、友軍の命さえ散らす事に意味はあるのか?!!」
そう言われるとかなり辛い・・・
僕が出来る限り単身で他国に出向こうとしている根底にはそれがある
でも、ここでそれを理由に引くわけにはいかない
「・・・貴女の様な生まれながらの強者には理解できないと思うけれど、弱者には弱者なりの矜持があるんだよ。それに・・・」
「・・・それに?」
「この魔族領では強さは全てより優先されるんだろう?」
僕がそう言った瞬間、彼女は酒瓶を地面に投げつけ叩き割る
「僕がこの魔族領に来てから散々聞いた言葉だよ。僕は出来る限り周りを幸せにしたいと思っているけれど・・・とどのつまり魔族領ではそれが優先されてしまう。だったら・・・そうするしかないよね?」
そう挑発すると笑顔が歪みだし、好戦的な目に変わる
8枚の翼を広げ、魔力を一気に解放させてくる
「僕からも書状にしたためた事を再度問うけど、属国になるつもりはないかな?調べているかもしれないけど、僕は属国だからと言って奴隷の様に扱ったり尊厳を踏みにじった様な生活はさせていないんだけど・・・」
「おうおうおう・・・よくぞそこまで啖呵を切って問うてくれるな?最早貴様等が我が国の属国になる以外にこの戦闘を避ける術は無いぞ?」
「じゃあ仕方ないな・・・」
そう言って帯剣していた剣を取り出し、僕も魔力を開放させる
「良い剣だのぉ~・・・?」
「・・・僕を殺した奴の遺物だよ。」
「そうかっ!!!」
「なっ?!!」
その瞬間、眼前に僕の持っていた剣が投げつけられる
すんでのところで回避し、投げつけられた剣を見ると・・・間違いなく僕の剣だ
そして僕の手には剣が・・・無い?!!
「・・・何をした?」
距離を取り警戒するが・・・冷や汗が止まらない
さっきは仮面を剝ぎ取られ、今は掴んでいた武器を奪われた
日常ならば兎も角、敵国の【魔王】と対峙しているこの瞬間でそれは・・・有り得ない
「何かした、か・・・。我はブーザルの様な愚か者でも、そこらのお人よしでもないぞ?」
そう言いながら翼をはためかせて宙を舞い、サタニックの周りには光の鎗が円状に顕現される
「まぁ、まずは小手調べという事にしておこうか。」
そう言うが否や光の鎗が20程が一斉にこちらに襲い掛かって来る
「くっ!!!」
鎗が投擲される速さは避けられないでもないが、一斉に襲い掛かって来られると軌道が読みづらい
僕は着弾点から離れた場所へ一旦回避を試みる
「あぁ、予測しておると思うが・・・この鎗は追尾式だからな?」
「?!!」
僕が避けた箇所から軌道が変更され地面すれすれからこちらに向かって来る
再度襲い掛かって来る鎗を避け、最初に立っていた所と変わらない場所へ移動し立ち止まる
「・・・こういうやり方は僕好みじゃないんだけどな。」
そう愚痴りながら【暴喰ノ口】を発動させると同時に鎗が僕に直ぐ傍まで近づいて来ていた
「まずは先制よな。」
そう言われた瞬間、ザシュザシュザシュと鎗が僕に攻撃を仕掛けてきた・・・
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