バルデインと凶暴な衝動
「初めまして。私、【天聖国アンギス】にて四武の称号を賜っております、フレスト=フレンコと申します。」
そう言って仰々しく一礼をする男に私は動揺する。
(こいつは本当に戦場に来ているつもりなのか?)
執事の様な服を着て武器ももっていない
鎧なんて影も形もありはしない
そのいで立ちに呆気に取られている私にフレスコとやらは言葉を続ける
「失礼ですが、お名前をお尋ねしても?」
「・・・【黒家クロノス】で騎士団長を拝命しているバルデインと言う者だ。」
「ご丁寧に有難う御座います。「こちらからも1つ尋ねても良いか?」」
相手の言葉に重ねて尋ねると彼の右眉がピクっと動く
だが、笑顔は崩さずどうぞとジェスチャーで応えてくる
「貴公は見た所、執事の様ないで立ちで此処に降り立っているが・・・此処が戦場だとは認識しているのか?」
「えぇ勿論でございます。私は敬愛する【魔王】様の執事であり四武の称号賜っております故、執事としてのこの装いこそが私の正装で御座います。」
「成程・・・その気概は分からないでもない。だが武器すら持たないのはどういう了見だ?」
「いえいえ、しっかりと武器は携えておりますとも。ただ執事故に無造作に出さないだけで御座います。これでも四武筆頭の座を賜っております故、ご遠慮無くこ「では行くぞ!!」」
呼吸の隙間時間に合わせて一気に詰め寄る
フレストとやらは一瞬驚いた表情を浮かべるが、また右眉を動かした後に私の攻撃を容易く避けた
が、こちらも双剣を携えている一撃必殺を狙っている訳では無い
斬りつけたモーションに逆らう事なく次の攻撃に移行する
「ふふ・・・残念ながらその程度の素早さであれば避ける事も容易うございますよ。」
「ぬかせっ!!」
胴斬りから飛び上がり更に胴斬り、足斬りから回転して逆袈裟斬り、双突から着地し半回転して首斬りを行うもその悉くを躱される
一定の距離を取り、相手からの攻撃に備えて即構えるも攻撃を仕掛けてくる様子は無かった
その代わり・・・何故か身体が小刻みに震えている
「・・・何か可笑しいか?」
「・・・可笑しいかですって?何一つ可笑しく等御座いません。・・・失礼ですが、本音を申しますと・・・お前に対して怒り狂ってんだ!!この非常識な獣人がぁ!!!」
口調も表情も先程と打って変わった様子に少々面食らう私を無視して言葉を続ける
「お前如きが何俺様の言葉を遮ってんだ?!!あぁ?!!しかも一度ならず二度もだと?!!お前には教養ってもんがねぇのか!!!お前ら地べたを這いずり回る獣人如きが俺様に対して敬意もなく何挑みかかってんだ?!!どうせ直ぐに泣いて許しを請うんだから尻尾振って媚売っときゃ良いんだ!!!分かったのか!!おい分かってんのか?!!」
「・・・・・・」
余りの変わり様と一気に叫び言葉を並べるフレストに動揺し何も言えない
暫し呆気に取られている私を無視して尚も呪詛の様に言葉を並び立てる奴には最早付き合っていられない
そう判断し、再度詰め寄り攻撃を仕掛ける
「だから遅えぇってんだ!!!その程度で俺様にじゃれついて来るんじゃねぇ!!!」
そう言って造作なく避けてくるがそれに構わず再度連撃を行おうとした瞬間、わき腹に痛みが走る
「?!!!!!」
突然の痛みに距離を置こうとするも、今度はフレストがこちらに一気に詰め寄って来て頭部に蹴りを繰り出してくる
「がはぁ!!!」
「だから遅えぇってんだ!!!その程度の素早さしかないんだったら俺様の的なんだよ!!」
奴の蹴りが頭部に直撃してしまった辛うじて立ち上がる事は出来た
自分のわき腹を見ると鋭利な小振りの鎗で疲れた様な刺し傷があり血が滲んでいる
「貴様・・・何をした?」
私がそう言うと得意げな表情で更に言葉に追い打ちを掛けてくる
「貴様の様な低能な獣人は分からねぇか!!!だがな馬鹿!!言う訳ねぇだろうが!!!」
その言葉と表情、雰囲気を感じ暫し気が重くなった
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