クロノの衝撃と笑劇
いつも有難う御座います!!
僕が魔族になった事が判明してから数日後、前と同じ場所で飲み物をご馳走になっていた
彼はこの数日間、一度として僕に対し指示をする事も話しかける事も殆ど無い
僕の心が整理されるまで待っていてくれているんだろうと思うと申し訳ない気持ちになる
返り討ちにあったとは言え、討伐対象として向かってきた僕の命を助けた上に気を利かせてくれている
【真祖】にそんな気遣いをされると、そんな気持ちになるのもそれも当然だろう…
「いつも本当にすいません…」
飲み物をご馳走になりながら謝罪の言葉を告げる
「なに問題ないよ。私は長い間1人だったからね。誰かが近くにいるという事が存外心地いいのさ。」
そう言いながら何でもないという風に片手を振る
「それより、君も大分落ち着いてきた様だね。」
確かにこの数日で心に大分余裕も生まれてきた様に思う
「お蔭様でなんとか。【真祖】に助けて頂いたという事実は中々呑み込めませんが…」
ハハッと笑いながら返答する
「確かに私は【真祖】だがね、名前がない訳ではないんだよ?」
そう言いながらイタズラをする子供の様な表情を浮かべる
「それは失礼いたしました。…考えてみれば当然ですね。僕はクロノ、クロノ=エンドロールと申します。お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「勿論だよ。私はブロウド=グランニューと言う。僕が名乗ったのも随分久しいな…名前は呼ばれて初めて価値が出てくるものだからね。」
「確かにそうですね…僕も幼少期には名前がありませんでしたから…」
そう答えると彼はピクリとカップの動きを止める
「そうか…君は孤児だったのかい?」
僕はその言葉に軽く頷く
「そうですね…戦闘孤児というやつではありますが、名前に関してはそれ以前から有りませんでした。」
そう、僕が生まれた家では僕は存在しなかった事になっていた
寝る時は家の倉庫、食事は殆ど与えられずに露店の店番等で日銭を稼いで飢えをしのいでいた…
「そうだったのか…酷い話だな。人族では珍しい話なのかい?」
「そうですね、やはりモンスターの襲撃や魔族との争いに加えて、国同士の戦争もありますから…でも僕の場合はやはりこの黒髪黒目が理由です。」
僕がそう言うとブロウドさんは頭を捻り出す
「ん?黒髪黒目なのが何か問題なのかな?」
「はい。人族では黒髪黒目は『不吉の象徴』といわれて嫌われているんですよ。魔族との混血だと言われていたり、神から見放されている等言われていますね。」
僕がそう言うとカップから手を放し、深い溜息をついた
「人族というのは度し難いな…違うものを迫害しそれに同調する。聞けば聞く程に人族が嫌になるよ。」
「そう、なんですかね…まぁ人族の【真祖】がどう思っているかは分かりませんが…」
僕は苦笑しながら相槌をうつ
そうすると一瞬真顔になった後に笑い出す
よく見たら涙が出ている様にすら見える
「ハッハッハッ!!な…何を言っているんだい?!人族の【真祖】でもある私が嫌になると言っているんだから…嫌になっているんだよ…!!」
ブロウドさんが息も絶え絶えと言う風に笑いながら答える内容は僕だけではなく、人族全てに衝撃を与える様な内容だった
◇
ブロウドさんは一通り笑い終えたからなのか、ニコニコした顔でカップに口をつける
「いや、本当に面白い。ここまで愉快な気持ちになったのは覚えていない程昔の事だね。」
反面僕はどうも緊張してしまう
敬意は勿論あった。けれどヴァンパイアの【真祖】だと思っていたから緊張は余りなかったけれども、自分が人族であった事を考えてしまうと…どうしても先程よりも緊張してしまう
「ブロウドさんは…その、本当に人族の【真祖】なのでしょうか?」
不敬にならないだろうかと思いながらも怖々と聞いてしまう
(ローエル達がこの場に居たらまた殺されるかもな…)と嫌な事を思い出しもした
僕がそう聞くと彼は何でもない様に答える
「厳密に言うと人族だけではないよ。人族、ヴァンパイア族、獣人族、鳥人族、ドワーフ族等の君たち基準で言うと人族の形に近い存在は全て僕が【真祖】さ。」
僕はこの言葉を聞いて次の言葉を紡ぐ事が出来なかった…
荒唐無稽で現実味がなく、ただ夢物語か神話を聞いている様な…
神と同一視される様な存在?
とんでもない間違いだ
彼はブロウドさんは神そのものだった
やっと書きたかった部分の1つが書けました
まだまだまだあるんですが…w
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