クロノの我慢と傲慢
「【魔王】様、お待ちください。」
聞きなれた声が聞こえて僕は歩みを止める
「ルーシャ・・・」
「ここで【魔王】様に奴等を殲滅して頂く事は容易です。こちらの損害もかなり軽微になるでしょう。」
「是。」
確かに彼女の言う通りだ
四武が3人いようとも、天使族の兵士がいようともハッキリ言って敗ける所か傷一つ付かない自信がある
それにより自軍兵士の損害も抑えられる
「ですが・・・ですが、それでは駄目なのです。」
「・・・何と?」
「【魔王】様・・・クロノスは【魔王】様のお陰で大国となりました。それは紛れもない事実です。ですが裏を返せば、全てを【魔王】様に任せなければいけない国となってしまっては駄目なのです。」
「・・・・・・」
「トリクトリロと単身で同盟後に属国にし、ブーザルを単身で滅亡させクロノス領とし、インフォニアを単身で属国とし、ソウトウキをほぼ単身で属国とし、人族の国1つを単身で滅亡させる・・・このままでは我々クロノスの兵士は誇りを、国を守っているという自負が持てないのです。」
そう言われてハッとする
僕は・・・なんでも1人でやり過ぎていた・・・?
僕は大切な誰かを失いたくはない
失いたくなければ守らなければならない
僕が守る続けることで負い目を与えてしまっている、と
「【魔王】様を諫めている訳では御座いません。我々は心より感謝し、敬愛しております。ですが・・・私たちに【魔王】様の力となれるチャンスを下さい。」
「「おおぉぉぉぉーーーーー!!!!」」
(そうか・・・僕は知らない内に、彼らに期待されていないと思わせていたんだな・・・)
「私たちが戦場に立つ事で負傷者は増えます。・・・死者も出ます。それでも【魔王】様や国、家族を守る為ならば・・・それすらも必要な事なのです。」
彼女の言い分は充分に理解できる
いつまでもこのままが良い訳もない・・・
正直、割り切れない気持ちもあるけれど・・・彼女が言っている事は正論だ
僕は前を向きなおし再度アンギスの方へ歩みを進める
「【魔王】様!!」
「・・・露避けを、行うが、良い。我は羽虫の王と相対す。」
「・・・はいっ!!全軍、私の指示の通りに!!全軍進めーーーーー!!!!」
「「おおおおーーーーーーーーーー!!!!」」
そう言ってルーシャの指揮の元、兵士たちは僕の両端から相手国へ一斉に駆け出した
僕はその兵士たちを追いかけずに、ゆっくり最短距離で以って【魔王】が待ち構えている城へ歩みを進める
「地べたを這う獣人たちが調子乗ってるんじゃないわよ!!!こっちも行くわよ!!全軍突撃!!!」
「「ははぁぁぁーーーーーーーー!!!」
相手国からもそんな声が響き渡り、こちらへ突貫しようと進軍して・・・僕の前方から激しい衝突音と咆哮が響き渡った
「おおおお!!!」
「ぐぁぁ!!!」
「喰らえーーー!!!」
そんな戦う皆を網膜に焼き付けながらも・・・僕はゆっくりと進む
彼らを忘れない様に・・・彼らを裏切らない様に・・・
手を出したくても・・・歯を喰いしばり手を出さない・・・
これは・・・彼らの誇りを守る戦いでもあるのだ・・・
そんな気持ちを裏切るかの様に1人の天使族が眼前に立ちはだかる
「ねぇアンタ・・・さっきは私に恥をかかせてくれたわよね?」
そう言ってこちらを睨みつけてくるのは・・・四武の1人と思わしき10代前半位の少女だった
魔力の高まりから既に臨戦態勢なのが窺える
「・・・失せよ。其の様な羽虫と、じゃれ合う気は、無い。」
「はぁ?!羽虫ぃ?!!誰が・・・羽虫だーーーー!!!!」
そう言うと同時に風の斬撃を複数コチラに飛ばしてくる
「私は四武の1人、ジュリアン=セレーノ様よ!アンタを羽のない虫の様にしてやるわ!!!」
風の斬撃を受け流そうか思案していると前方に透明な盾が顕現され、斬撃から僕を守ってくれた
「なっ?!!」
「ふふ・・・そんな斬撃では旦那様は疎か、私の魔法にすら傷はつけれませんよ?」
そう言っていつの間に傍らに控えていたのか・・・【妖精霊国インフォニア】、【魔王】ファーニャ=S=イスフォンダルが姿を現していた
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