クロノの狡猾な恫喝
「フフフ・・・ハッハッハーーー!!!」
僕たちの叫び声を聞きラザアルは笑い出して魔法弾の射出を止めた
先程まで尻餅をついて震えていたのが噓の様に立ち上がり大声で勝利を宣言するかの様に口を開く
「たかだか騎士団長が四武に刃向かうからこうなるのだ!!!私が手加減した鎗術を本気だと勘違いし、油断するから魔法弾を直撃する!!貴様等も覚えて置け!これも戦略だぞ!!決して私は敗けていなかったのだぞ?!」
「「お、おおおおーーーー!!!」」
そう触手に捕縛されている天使族に向けて叫ぶ様は滑稽だ
滑稽だが・・・横でルーシャが不安げな表情を浮かべる
「【魔王】様・・・」
「些事故、気に病むでない。我が雑兵は、あの程度で屈する者は、存在せぬ。」
ラザアルはそんな僕等に向かって指を差し得意げな表情を浮かべる
「さぁ、貴様の部下が約束した通り、即刻この国から出て行け!!!勿論私の部下の捕縛を解いてな!!なんだったらそこの女共は置いて行け!!私たちが有効活用してやろう!!!」
そう言いながら舌なめずりをする様を見てルーシャとファーニャは心底嫌そうな表情を浮かべ、僕は怒りのあまり襲い掛かりそうになる
(平常心だ・・・平常心・・・)
深く呼吸をして視線をラザアルに戻すと・・・
「な゛?!!!な゛ぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー?!!!!」
そこには、剣を胸に突き刺されたラザアルの姿が映る
土煙が徐々に晴れ、剣の柄を握っているバルデインの姿が見えた
「バルデイン!!!」
「貴様・・・姫様を相手に何をのたまった・・・」
「が・・・ぎ、ぎざまぁ゛・・・な゛、な゛ぜぇ・・・」
「あの程度の魔法弾であればどうという事はない。それより・・・」
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
憤怒の表情を崩さず、もう片方の剣で右腕と翼を同時に斬る
そんなバルデインを見て意外だったのは、余りにも傷を受けていない事だ
獣人は種族にもよるが攻撃力、素早さが高い代わりに魔力保有量が少なく、防御力も脆いという見解だった
けれど・・・天使族の魔法弾を何十発も受けたにも拘らず、彼には余りにも傷がついてなさすぎる・・・
そんな事を思考している間にもバルデインは容赦なくラザアルを斬っていった
◇
◇
「・・・【魔王】様、申し訳御座いません。怒りのあまり・・・我を忘れてしまい・・・」
そう言って神妙な面持ちで僕に対して頭を垂れるバルデインの傍らには辛うじて息をしているラザアルが横たわる
僕が捕獲していた兵士たちもラザアルが一方的に斬られるのを見て戦意喪失をしていた為に縄で縛っている
「些事故、気に病むでない・・・」
そう告げてラザアルの傍に近づくが・・・両腕、両翼は斬られており、身体の斬り傷は無数、肩の部分の骨にかんしては盛り上がって変な形となっていた
ラザアルに対して僕が回復魔法を施すとみるみるうちに傷は癒えてくる
「あ・・・これは・・・あ・・・あぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
傷が癒えたからかラザアルは意識を取り戻すも、自分の身体を見て再度叫び出す
(まぁそうだろうな・・・)
僕の魔法は飽くまで傷を癒す魔法であり、切断された腕を接合したり、骨を元通りにする様な事は出来ない
プライドが高く、他者を見下していた彼からすれば、今後も両腕、両翼を失いながら生活する事には耐えられないだろう
・・・だけど僕にはそんな事はどうでも良い
僕は自分の為にラザアルを顧みる余裕もそんな気持ちもない
そして動揺し発狂しそうなラザアルの顔を掴んで持ち上げ、
「約定の基、其は、我らを、其の【魔王】の元へ誘うが良い・・・」
魔力を微少ながら込めてそう告げると、「あ・・・あ・・・」と何かを呟いた直後、白目をむき尿を垂らして気絶してしまった
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