バルデインの決断と判決
「クロノ様?!クロノ様何処ですか?!!」
私が城内を巡回していると、ルーシャ様の叫び声が聞こえる
恐らくクロノ様は・・・思いながら声のする方へ向かっていった
「ルーシャ様、どうかされましたか?」
声を掛けると、かなり動揺した様子で私に喰いつくかの様に距離を詰めてきた
「バルデイン!!クロノ様の私室扉が開いていたので室内を見ると・・・クロノ様がいらっしゃらないの!!」
(やはりか・・・)
クロノ様は恐らく昨日の私の独白を聞かれた上でご決断なさったのだろう
どんな事情かは存じ上げないが・・・記憶の基である女性のいる場所で向かったのだ
「バルデイン、何か知っているのですか?!!!」
「・・・・・・」
知らないという事は容易い
だがそれは私が保身に走る行動であり、私の忠誠ではない
「・・・存じております。」
そう言った私をルーシャ様は目を見開き驚いた表情を浮かべる
勘の良い彼女の事だ・・・恐らく私の表情で何かを察したのだろう
だが次の瞬間、決意を持った表情に変わる
「・・・クロノ様はどちらへ行かれたのですか?」
「全員を召集して会議室でお話しましょう・・・今後の話し合いも必要です。」
そう告げると暫し悩む素振りを見せながらもルーシャ様は頷く
「そう・・・ですね。今後の事はどうであれ必要ですから・・・それでは今すぐに伝令を走らせ執務室に集合させましょう。」
そう言って駆け出すルーシャ様の後ろ姿を眺めると、なんとも表現しにくい感情が芽生える
(・・・姫様、ご立派になられましたな。)
私が皆の前で話す内容は場合によっては私自身の命で以って償う必要すらある
何しろ主を追い出したと受け取られても何らおかしくは無いのだから・・・
◇
◇
「皆さま、突然の召集にご参加頂き誠に有難う御座います。」
そう言って私は壇上から一礼し顔を上げる
そこにはほんの数ヶ月前には想像すら出来なかった錚々たる面々が揃っている
【遊戯国トリクトリロ】の【魔王】ロキフェル=トリス
【国家クロノス】領地である【元ブーザル領】代表サラエラ=アルテミン
【妖精霊国インフォニア】の【魔王】ファーニャ=S=イスフォンダル
【鬼人国ソウトウキ】の【魔王】ダンキ=キガジマ・・・
だがこの【魔王】達も私が話す内容の結果によっては共に戦って貰えない可能性がある
この【魔王】達は【黒家クロノス】の属国となっている国々の代表であるが・・・厳密にいえばクロノスではなく、クロノ様の名の下に属国となっている国の【魔王】達だ
そんな彼らがクロノ様が座しないこの国の味方になって貰えるのか・・・
(もし失敗した場合は・・・この国は終わりだ。)
そう己に発破を掛けながら私は口を開く
「まずは皆さまに最重要点としてお伝えしなければならない事が御座います・・・【黒家クロノス】の【魔王】様であらせられるクロノ=エンドロール様はこの場にはいらっしゃいません。」
そう手短に伝えただけで動揺が場を支配する
ルーシャ様を始め、この国の大臣たちは焦燥感が容易に見る事が出来る表情をしている
他国の【魔王】達は目を見開き驚愕の表情を浮かべる
「バルデインさぁ、お兄さんが居ないのに僕らを呼び出したのかい?」
「はい・・・緊急故にご容赦くださいませ。」
「旦那様はどちらにいらっしゃるのですか?」
「それを今からお伝えさせて頂きます。」
「【魔王】様・・・我が盟主はいつ頃お戻りになられますか?」
「そちらも今からお伝えさせて頂きます。」
「我が主は尻尾巻いて逃げ出す様なタマでもあるめぇ?!」
「仰る通りです。」
同じ様な質問を各代表者から投げかけられる
まずは謝罪から口にするべきだろうと考え口を開いた瞬間・・・
「み「遅くなって悪かったね。」」
そう言ってクロノ様は素顔のまま、会議室に現れた
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