クロノの決断と判断
扉の向こうでの独白に驚いている僕を他所に彼の独白は続く
「我々騎士団は国の為に命を散らす事を生業として所属しております・・・そんな我らを【魔王】サンドラの護衛を行うという理由で村1つ・・・戦う事を生業としない命に犠牲を強いらせたのです。・・・私は・・・それがどうしても許せない!!!!村人達の命を!!!軽んじた【魔王】サンドラをどうしても許せなかった!!!」
扉の向こうで壁に拳を打ち付ける音が木霊する
「・・・それでも必死に耐えました。犠牲にしてしまった命の分は国を守り、少しでも彼らに報いようと必死で!!・・・ですが最後のアレはどうしても許せなかった!!!」
「・・・・・・」
僕は言葉を発せない
彼の独白であり懺悔の言葉は紡がれ続ける
「【魔王】サンドラは・・・実の娘であらされるルーシャ様の・・・暗殺を企てたのです。」
「なっ!!!!」
その言葉に思わず声を上げてしまう
けれどもバルデインは僕の声が聞こえていないかの様に言葉を続ける
「【魔王】サンドラは先程もお伝えさせて頂きました通り非常に好戦的な【魔王】でした。ですが1国の【魔王】である以上、迂闊に戦争を仕掛ける事を躊躇する臆病な【魔王】でもありました。何しろ己から同盟国も無く、大義名分も無く戦を仕掛ければ諸国からどの様に対応されるかは目に見えて明らかですから・・・そうして彼の【魔王】が考えた策が・・・『娘を殺した国に報復する為に戦争を仕掛ける』というものでした!!!!」
僕は驚きの余り、最早声は出ない・・・
戦争という大義名分の為だけに実の娘を殺そうとする親・・・
そんな狂った様な存在が他にもいるという事実が信じられなかった
「【魔王】サンドラは私に対して密命という形で私にそれを命じました・・・ですが!!!ですが私はそんな事の為に騎士になったのではない!!!国を守り、国民を守る・・・そんな騎士になる為に私は!!!」
「・・・・・・」
「私は・・・浅はかだったのでしょう・・・気付けば【魔王】サンドラの胸を突いていました・・・如何に【魔王】とは言え油断しきっていた彼奴は驚くほど容易に死んで逝きましたが、その後の事を何も考えておりませんでした・・・我に返り罪を償おうとも考えましたが、【魔王】が死に、騎士団長が処刑されてしまえばこの国は諸国からの攻撃により瞬く間に滅んで行ってしまう。そう考えて【魔王】が死んだ事を可能な限り隠ぺいしようとしたのですが・・・程無く近隣諸国にバレてしまい攻められてしまう有様でした・・・後はクロノ様もご存知の通り、ルーシャ様だけでもと思い脱走させたしたいです。」
「・・・・・・」
「ルーシャ様ご自身は実の親に殺されそうであった事をご存知ありません・・・お伝えするつもりも有りません。・・・私はその時に【魔王】サンドラに対する忠誠か、国に対する忠誠かの選択を強制され・・・国を選びました。」
この言葉に僕はハッとした
多分、彼はルーシャから姉さんの事を思い出しそうな事を聞いていたんだ・・・
そして様子のおかしい僕から・・・記憶が戻ったと仮定したんじゃないか、と
「私は時々思うのです・・・あの時の選択は正しかったのか?と。・・・答えは出ませんがね。・・・クロノ様の苦悩を全て知っているとは申しません。もしかすると私よりも深い苦悩が渦巻いているかもしれません。後悔もするでしょうし絶望するかもしれません。それでも・・・それでも何かを選ばなければ・・・ならないのです。」
「・・・・・・」
「何もしないという選択も勿論御座います。・・・ですがそれは、どんな理屈で取り繕うとも・・・何も出来ないという事と同意義なのです。」
「・・・・・・」
「ここまで動いた以上、人族と魔族の戦争は避けられません。クロノ様には我々獣人は特に大恩が御座います。今宵は部屋の前に見張りを付けません故、クロノ様の思うが道をお進みください。」
バルデインはそう言った後、静かに扉から去っていった・・・
僕は選ばなければいけない
魔族として人族を滅する・・・最悪、姉さんと父さんを犠牲にしてでも・・・
姉さんと父さんを探しだす・・・最悪、皆と戦ってでも・・・
僕は・・・
ローブを身につけ、仮面を被り、僕は部屋を後にした・・・
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