【間章】ライアの傲慢と祈願
ライアの過去です
黒い炎が私を包んでいく…
熱いんだけどそこまででもない
身体に燃え盛る炎が身体を焼かずに細胞レベルで消滅させているから痛覚すらも存在させない様にしているのだろうか…
(私は、馬鹿だったのでしょうね…)
目の前で泣きながら私を見送る赤い髪の女性をボンヤリと眺めながらそう思う
◇
私の生まれた家は本当に貧しかった…
幼少期は1日1食が当り前
酷い時は2日で1食という事もままあった
貧乏である事から同世代の子供たちには馬鹿にされ私は非常に内気な性格となってしまった
内気な性格と家が貧しいという自身の負い目から友人関係をつくる事も出来ず、農民だった親の手伝いをして1日を終わらせていった。
そんな私の日々は、より裕福に、より外交的にという今の私を形成した基だと思う。
ある日私に転機が訪れた
15歳になった私は称号を得る為に協会に赴いた
私自身は【商人】等の自分次第で将来の生活に困らない称号が良いな…等と考えていた。
「君の称号は【魔術士】です。」
「【魔術士】…」
【魔術士】と言われて、私は正直複雑だった
戦闘職の中ではレアな称号ではある
人間族の中でも体内魔力が強くなければ出てこないと言われている称号
戦闘でモンスターを相手に魔法を放つのだから体内魔力が強くなければ実践では使えないのだから理解はできる
ただ…魔法をより効率的に行使したり、より強い魔法を得るには学校に行って学ばなければならない
学ぶ事をしない【魔術士】なんて、ホンの少し魔法が強いだけの存在だ
他の称号持ち程、何かに長けている訳ではない分、一生貧しいままの人生になる事も十分に考えられる
道中に考える事は私の人生はどうなるんだろう…ただその一点だけだった
重い足取りで帰宅した私に家族は結果を聞きに来る
多分、私が今より生活が楽になる称号を貰って来るという期待があったんだと思った
「父さん、母さん…私ね…【魔術士】だった…」
それを伝えながら涙声になる
父と母の期待に応えられない自分
これまでの生活と変わらない自分と家族
そう思うと悔しさと申し訳なさが混ざり合う
だが、意外にも父と母は喜んだ
「凄いなライア!!魔法をドンドン使えるんだな!!」
父はそう言って喜び、それを聞いた母も同じ様に喜んだ
「お父さん…でも【魔術士】は学校に行って勉強しないと…立派にはなれない。」
私は徐々に声が小さくなる
「学校に行くと…お金が掛かる…」
私がそういうと父は苦笑する
「ライア…確かに我が家は貧しい。でも、な…大切な我が子の将来への貯えをしていなかった訳じゃないんだよ。」
「え?!」
「お前がどんな称号を貰うかなんて分からない。でもどんな称号だったとしても貧しい事を理由に諦めさせるつもりなんて、父さんも母さんもこれっぽっちも考えていない。…学校へ行きなさい。行って、学んで、幸せになってくれ!!」
「父さん…母さん…」
涙がみるみる内に溢れ出した…
私の人生で1番泣いたのは多分…あの時だった
◇
『首席、ライア=バルバード。』
「はい。」
私は国立魔術学院を首席で卒業した
最初は家族の期待に応える為
家族を裕福にする為
自分自身幸せを広げる為に学び続けた私は…
卒業する頃には
周りの教師や生徒に羨まれる為
私自身を裕福にする為
私だけしかたどり着けない境地に達する為に変動していた
そしてその傲慢さ故に安定しながらも上下関係の激しい国からの就職オファーも断り、一攫千金を得る事が出来、名声をもそれなりの地位に駆け上がれば容易に手に入る冒険者となった…
(私は多分…)
赤い髪の女性が嫌いだった
美しいのに歯牙にもかけず、実力があるのに歯牙にもかけず、富も思いのままなのに歯牙にもかけない
最初に決めた決意である『弟を守る』、ただそれだけを体現し続ける彼女が…
(そして多分…)
赤い髪の女性が同じ位に好きだった
美しいのに歯牙にもかけず、実力があるのに歯牙にもかけず、富も思いのままなのに歯牙にもかけない
仲間として偽りなく接してくれる彼女が…
あぁ…私が消える…
炎は最早顔の半分を残しただけ…
それを見ている彼女は私を見て我慢しながらも泣いている…
(願わくば…)
今の私はそう願わずにはいられなかった
(彼女が幸せでありますように…)
ライアさんも色々あったんですね…
どこで変わったかのベースはありますが書く事はないかもしれません。
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