ロザンワの許否と拒否
「ふふっ、本当に貴女は私なのね・・・」
私は思わず苦笑してしまう
その様子を見て相手も嬉しそうな表情をする
「えぇ私は貴女。病的に魔法を求め、魔法の為ならば全てを捨てる事が出来る貴女。・・・だからこそ、人族の為に【勇者】であるなんて薄ら寒い事を言わないで頂戴。」
「えぇ・・・その通りね。確かに私にとっては魔法が全てだったわ。人族全ての命なんて・・・魔法1つの習得重要度にも劣る。」
「でも、そんな貴女に朗報が有るわ。」
そう言いながらもう1人の私が手を平げて私を見下ろす
まるで神からの啓示を告げる使者の様に見えてる仕草をする
「貴女、いえもう1人の私は今此処で命を投げ出しなさい。」
そう言って得意満面な表情で告げる相手に違和感を感じる
「・・・何故?私は希望通り魔法を使える。教会に行く前のあの頃とは違うわ。」
私がそう反論すると顔を近づけてくる
自分と同じ顔が自分の意思とは違う表情を浮かべているのをみるのは気持ち悪い
「ねぇ、もう1人の私?初級魔法、中級魔法、上級魔法と僅かな超級魔法を使用できる程度で満足?あの頃と同じ気持ちの私なら、その程度では当然満足してないわよねぇ?」
「・・・・・・死んだからと言って来世で魔法が使える保証も無いわ。そもそも来世という概念すら不確かだしね。裏付けのない希望で今の私を捨てる事は出来ない。」
「勿論、裏付けはあるわ。私はもう1人の貴女だけど・・・同時に【禁呪】に行使されている貴女でもあるの。【禁呪】はあらゆる魔法に干渉できる魔法よ。来世の貴女に対して【禁呪】の適性を与えるなんて造作も無い事なの。【禁呪】の適性を得る事が出来れば、ありとあらゆる魔法の適性を得る事だって可能だわ!!!貴女は、そして私は【大魔法使い】になれるの!!!【勇者】なんて目じゃない!!全ての魔法を使用できる存在になれるの!!!」
その言葉に心がドクンと震える
「【禁呪】が・・・私に適正を?」
「そうよ。ハッキリ言っておくけど・・・今この場に答えを頂戴ね。【禁呪】からしても破格の条件なのだから、ね?」
私はその言葉を聞いて目を閉じる
もう1人の私も、私の思考を邪魔しない様に何も話しかけてこない
・・・
・・・・・・
「・・・決断したわ。」
私が目を開き、一言そう呟くと相手は嬉しそうな表情を浮かべる
(あぁ・・・本当に・・・)
「そう。じゃあ今から貴女を倒すけれど・・・逃げたりしないでね?大丈夫、直ぐに私と出逢えるわ。」
徐に魔力を込めて、こちらの方へ手を翳す
(本当にもう1人の私は・・・)
「じゃあね・・・また後なっ?!!!!」
ゴウーーーゥン
彼女が魔法を放とうとした正にその瞬間に合わせて、出力速度を大幅に引き上げたファイアランスが彼女に襲い掛かるも、紙一重で躱されてしまう
「・・・もう1人の私、・・・どういうつもり?」
その瞳には怒りの色が濃く映し出されている
「どういうつもりも何も・・・言ったでしょ?決断したって。来世で魔法が使えなくなるかもしれない事実を受け入れ、あなた達相手に戦う事を決断したのよ。」
「へぇ、私って馬鹿だったのね?!!じゃあ死ねば?!サンダーレイン!!!」
彼女がそう詠唱した瞬間、複数の雷が広範囲に稲光りだす
「くぅ!!あぁぁぁぁーーーー!!!」
アースウォールで対処を試みるも、雷の速度に間に合わずダメージを受けてしまう
「ねぇ、もう1人の私、私だと思えない位に馬鹿な私。何を考えて【禁呪】に背いたの?」
肩で息をする私を前に、私と思えない程に冷たい瞳でこちらを見下しながら尋ねてくる
「・・・・・・フフフ。」
絶体絶命に近い状況にも関わらず、思わず笑いが零れる
「気でも狂ったのかしら?私が聞きたいのは笑い声では無いわよ?」
そう言って苛ついた表情をみると、より笑いがこみ上げてきた
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