アカノの感動と感嘆
「秘匿魔法だと?!」
そう言って赤龍はこちらを睨む
だが、先程に出来る事は協力するという言質を取っている私は平然と返答する
「はい、彼女は魔法に優れた【勇者】ですから。赤龍様の権限でお願い致します。」
「・・・・・・小娘、龍族の秘匿魔法がどう言ったものかは知っておるのか?」
「いえ、私は知りません。だが強力な魔法だとは思っております。」
「だろうな。・・・でないと秘匿魔法の意味がない・・・結論から言うと秘匿魔法は教えられん。いや、教えても意味がないというべきじゃな。」
「意味がない?」
赤龍の言葉に疑問符が浮かぶ
ロザンワを見ると彼女もよく分からないという様な表情を浮かべる
その様子を見て赤龍は言葉を続ける
「秘匿魔法の効果はな、『龍の力を10%以下にする』という効力だと言われておる。魔族に対しては意味がないじゃろ?それに儂が持っておる秘匿魔法の知識は4分の1じゃ。残りは各龍王が4分の1ずつ保有しておるよ。」
「「成程・・・」」
聞けば確かに龍族の間で秘匿されるだけの魔法だ
それに完全には分からない上に魔族に効果が無いのでは意味がない
「だが・・・秘匿魔法ではないが、【禁呪】を1つ授けてやろう。」
「「【禁呪】?!!」」
【禁呪】とはその名の通り、禁じられた呪文という意味だ
太古は魔法を呪文と呼んでいたらしくその名残りと言われるが、世界を揺るがす効果を持つ余りに禁じられたり封印されたりしている魔法を教えて貰えるのはある意味秘匿魔法よりも稀少だ
「だが、授ける前に伝えておくが・・・禁呪は魔力量を異常な程消耗する。多少魔法に秀でた【勇者】であっても1撃、最悪1撃も放てず魔力枯渇で死んでしまう可能性すらあるがそれでも良いか?」
赤龍の言葉を聞き、私の表情は強張る
だが私のそんな気持ちを無視してロザンワは「構いません。」と答えた
「ロザンワ?!!」
「アカノ殿、貴女が私の身を案じてくれるのは嬉しいわ。だけど・・・このまま魔族と戦争になれば最前線で戦う私は勿論、人族全体が滅ぶわよね?・・・結局、【禁呪】で死んだとしても早いか遅いかの違いでしかないの。だったら私は手札が増える方を選ぶわ。」
「だねだね!!やっぱり最後はやり切った~!って思いたいもんね!!」
「・・・・・・」
そう言って話す2人を見て、私は初めてこの2人を強いと感じてしまった
彼女たちは誰よりも死地に近い場所にいる【勇者】だ
自分の意志ではなく、国から、世界から、若しくは何かから強制的に与えられた称号でそうならざるを得ない境遇で過ごしてきた彼女達が自分の意志で決断するのを見て私は感動にも似た気持ちで感嘆してしまう
それは私だけでは無く、意外にも赤龍も同様だった様だ
「・・・女子共、お前たちの心意気に感じ入ったぞ!!眷属は吟味を重ねたモノを紹介してやる!!【禁呪】もこの儂がキッチリおしえてやろう!!!」
そう豪快に確約してきたのだった
そしてその日の夜は赤龍から招待を受け、4人で食事を取りながら歓談する事となった
◇
◇
◇
次の日、赤龍領の闘技場でカラミトルと1匹の龍が対峙する
龍族領の闘技場は人族と比べても圧倒的に広かった
やはり龍そのものの身体が大きいからだろうか?
だが龍は空を飛ぶから闘技場の大きさは関係無いのでは?と思わなくも無いが・・・
「それでは人族のカラミトルと龍族赤龍の眷属との死合を行う!!立ち合いは我、赤龍と人族のアカノだ!!各々力の限り死合うが良い!!」
赤龍がそう言った瞬間、龍の姿となっていた眷属は羽を広げる
カラミトルはどうやら魔法を詠唱しているみたいだ・・・
「では準備は良いか・・・?強さと誇りを示すために、死合うが良いっ!!!」
赤龍がそう高らかに宣言した瞬間、眷属が業火の炎をカラミトルへ向け口から放つ
「カラミトルっ?!!!」
その威力を目の当たりにして私は思わず叫んでしまっていた
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