アカノの勘案と提案
「それではカラミトル殿、アカノ殿、これから宜しく頼む。」
そう言って眼前に立つ【ギスファール魔導国】の【勇者】であるロザンワが私たちに頭を下げる
紫色の髪をショートカットにして黄色い瞳を輝かせている彼女は礼儀正しくも人懐っこそうな雰囲気を醸し出している
身体は非常に女性的で武骨な私からすれば羨ましい位だ
彼女はどうやら様々な補助系スキルに突出した【勇者】であるらしい
「いえいえこちらこそ。アカノ=エンドロールです、これから宜しくお願い致します。」
ロザンワに倣って私も頭を下げるが、傍らに居るカラミトルは平然とした表情で
「ロザンっち宜しく~。」と返答する
そんなカラミトルの態度を気にする事も無く、会釈してからロザンワは言葉を続ける
「私たちは今回魔族領の情報収集を行いながら、実力の底上げも計らなければなりません。情報収集を行えば基本隠密行動となりますので戦闘行為は避けなければなりません。実力の底上げの為に戦闘を行えば情報収集に支障が出てきますが・・・どうしましょうか?」
「だねぇ~・・・私が強くなる為にはお友達を増やす必要もあるしね~。戦闘は避けられないかな?」
2人の意見を聞きながら私も考える
私自身は【真祖】と父さんから指導を受けた事により格段に強くなっている
【真祖】には【魔王】クラスでなければ問題無く勝てると告げられている為、今更魔族と戦っても強くなる手段では効率的であるとは言えない
武器は【赤炎】を手に入れた
色々な武器を見てきたが、この剣は今まで見た剣の中でも群を抜いて質が良いと言い切れる
また、私に非常に合っている剣にも思えるし、これ以上の剣を探すというのもまた効率的だとは言えないだろう・・・
身体能力、武器が強くなった私がより強くなる為には・・・
「・・・スキル?」
「ん?どしたのアカのん?」
そうだ!!
より強くなる為にはスキルを向上させなければならない
私は魔力量が高くない
それを【赤炎】に魔力を付与する事により威力を跳ね上げているが・・・
そもそも威力自体を跳ね上げれば、付与する威力も更に跳ね上がる!!!
そう思い立った私は2人の顔を見て口を開く
「2人共、提案があるのだが・・・これから龍族領へ行かない?」
私がそう伝えると2人とも目を見開いて驚愕の表情を浮かべる
まぁ、それはそうだろうとも思うが・・・
龍族領とは人族領とも魔族領とも接した広大な山のそびえ立つ場所だ
広大な山と言ったがどれ位大きいかと言われると龍族領の端から端まで全てが山という異常な程大きい山となる
その山には竜と龍が住んでおり立ち入るモノが何者であろうと問答無用で襲い掛かって来る
それが龍族の一般常識だ
「りゅ、龍族?!!!」
「龍族のとこ行ってどうするの?!!」
「私は赤龍という龍とある出来事がキッカケで契約しているの。赤龍と会ってもっと深い契約に変更して貰おうと思って。」
「く、喰われるんじゃない?」
「大丈夫よ。龍は知能もあるし、感情もある。私が赤龍と契約していると分かれば無闇に襲って来る事はない・・・と思うわ、・・・多分。」
「「多分?!!」」
私の小声を聞き逃さず2人は反復して聞き返してくる
「だ、大丈夫よ!!それにカラミトルは龍の友達が出来るかもしれないし、ロザンワさんは仲良くなれば龍族の秘匿魔法を教えて貰えるかもしれないわよ?!」
「龍のお友達・・・」
「秘匿魔法・・・」
そう言って2人とも気持ちが揺らいでいる
「そ、それに私以外と一緒に行くよりはよっぽど危険は低い筈よ!!赤龍は龍族の中でもかなり高位な龍だと言っていたから!!」
「「・・・・・・」」
私の言葉に2人は暫し無言になる
「ですが、情報収集はどうしますか?」
「情報収集は勿論大切だけど・・・私たちが強くならないと任務も遂行できないわ。それにいつまでとは言われていないし、龍族領は魔族領とも接しているから、龍族領から直接魔族領に向かう事も出来るわ。」
「・・・ほんとに危険はない?」
「ない・・・とは言い切れないけど、少なくとも私と別に行くよりは少ないと思う。それに3人とも強くなれる絶好の場所だと思うわ。」
私の言葉に2人とも更に無言になり・・・
「「・・・行く。」」と徐に口を開いた
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