アカノの初動と称号
「さて・・・我が弟子はどれ位強くなったかな?あぁ、今までと同じくスキル使用は無しで良いね?」
あれから受付で闘技場を借り、父さん、いや師匠と対峙する
軽口を叩きながら剣を振り回す動きが滑らかでサマになっている
単純な技術であれば【勇者】だったローエルより高いだろう・・・
「さて、称号【剣聖】で有り、【真祖】からも手ほどきされた我が弟子に勝てる気はしないが・・・師匠の意地を見せてやろう。」
そう言って剣を構え、こちらを眼光鋭く見つめてくる
「・・・・・・」
その立ち姿に冗談でしょ?と言いたくなる衝動に駆られる
私は称号【剣聖】、師匠は称号【剣豪】・・・
私はまだ若く、師匠は私よりも年老いている・・・
私は健康体、師匠は左足を失い義足をしている・・・
幾らでも私が有利な部分が出てくるにも拘らず、師匠の構えに容易に踏み込めない
あの頃に分からなかったであろう師匠の強さが、今だと明確に理解できる
「師匠、本当に引退していたのですか?」
頬から汗が一筋流れる
「まぁ、毎日健康の為に剣は振るっていたし、魔物はやって来るからね。怖気着いたか?」
「まさか。ですが今になって師匠の強さが理解出来ますよ。」
「そう思っているならまだまだだ。人は視える所でしか理解は出来ない。お前に視えていない部分はまだまだあるぞ?」
「でしたらそれを今から教えて貰いますよ!!」
そう言うと同時に師匠に対して一気に距離を詰め上半身へ斬りかかる
師匠は下に屈み込み上半身を起こすと同時に斬り上げてくる
(速い?!)
下から迫って来る斬撃を僅かに上半身を逸らして避ける
が!!そのまま手首の力で斬撃の軌道を変え、胴を狙ってきた
(胴顔右腕胴右足左腕首顔胴左足胴右肩首胴左足右足右腕首顔胴?!!)
息する間も無く繰り出される斬撃に避けるので精いっぱいだ・・・
この攻撃を避けながら反撃を計ろうとすると一手遅れで私が負傷してしまうだろう
私は避けながら一気に距離を置く
義足の師匠だと追い打ちが無い事を知っている為に行った苦肉策だ
「ふっ、この打ち合いは私の勝ちかな?」
「そうですね・・・ただ、勝負自体は私が勝たせて貰いますが。」
「相変わらず負けず嫌いだな。打ち合うなら一手先しか読まないなら三流、三手先までしか読まないなら二流、五手先まで読んで一流と言えるだろう。」
師匠はそう言いながら剣を振りを確かめる
「師匠は五手先まで読んでいると?」
「馬鹿にするな。私は七手先まで読んで、尚且つ相手がどの様に動くか3パターンは予測している。」
他の誰かがそう言うとブラフである事も念頭に入れるが師匠が言うと疑いの余地がない
事実先程の猛攻だけでも動きに淀み等無く、私は避けるのが精いっぱいだった・・・
「とんでもないですね・・・」
「だけど年だな。先まで読めても途中で身体が追い付かなくなる。でなければこうして一気に距離を開けられる事など無かったのだがね。」
そう言って苦笑し言葉を続ける
「良いかい?剣に携わる者として言える事は、称号は飽くまでオマケだ。確かに称号は強力なスキルを習得する、成長が早い等のメリットは確実にある。だがそれで得るスキルや成長は実践ではオマケ程度でしか役に立たん。」
「今身を以って実感してますよ・・・」
「まぁ身のこなしは合格だ。だがそれだけじゃあまだまだだな。」
「では、次は師匠に避け続けて貰いましょうか?」
そう言って私は再度剣を構える
(ブロウドさんは私を人族の化物と言ったが・・・私以上の化物が目の前にいるじゃないか・・・)
もし師匠が【剣聖】だったなら、今頃私はやられていただろう
連綿と続く終わらない剣の道を終わる事なく続けていった境地を目の当たりにした気分だった
(称号はオマケか・・・)
そんな考え方をする人だからクロノの事も大事に想っているんだろうと改めて気付かされる
ブロウドさんと行った修業とはまた違う、充実した修行を受けている気分だった
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