アカノの収集と収穫
「まぁ全滅と言っても戦略的全滅と言った方が正しいですがね。」
ハミアは目の前で肉を頬張りながらそう付け足す
「戦略的全滅とは言っても・・・」
戦略的全滅とは作戦遂行が実質不可能な割合を示す
35,000人の半数も減ればそう定義されるのだが・・・
「17,500人も死亡したのか・・・」
「あぁ、帝国は違いますよ。皇帝の命令は絶対遂行が旨ですからね。8割程が死亡して初めて戦略的全滅に定義されます。」
「?!!であれば・・・」
「約28,000人ですね。しかもその死者数ですが1日程度で死んだ数の総数です。」
「1日?!!!」
幾ら個体差で魔族の方が強いと言っても1日でその数を圧倒できるのだろうか・・・
「しかも・・・噂ではありますがその半数以上は【魔王】1人によって葬られたそうです。しかも・・・数時間で、です。」
「1人?!!数時間?!!!」
その話は誰かが盛って話したとしか思えない・・・
数時間で14,000人を抹殺できる【魔王】なんて・・・悪夢以外の何ものでもない
【真祖】に鍛えられた私でも、出来るか?と聞かれると出来る気がしない
「その【魔王】は侵攻されたことに怒り狂い、1人で帝国に侵入し帝国を文字通り殲滅し亡国としました。」
「・・・・・・」
あの惨状が1人の【魔王】で成し遂げられた?
現実離れし過ぎで言葉が続かない
そんな私を見てハミアは言葉を続ける
「アカノさん、問題は此処からです。その【魔王】が人族全体に対して宣戦布告、そして根絶やしにすると宣言しました。これは元帝国民に聞いた事ですから間違いありません。」
「人族全体に宣戦布告?!!そんな事になれば・・・」
「はい・・・どちらが勝つにせよ膨大な血が流れ、有史以来の大惨事となります。少なくとも今までの人族間での戦争が可愛らしく思えるくらいには・・・」
無意識に喉を鳴らしてしまう
そんな事になればクロノを探す事すら困難だ
まじてや今魔族領に向かえば問答無用で襲撃されてしまう可能性が高いだろう
「各国は最早人族の国で戦争や小競り合いをする余裕が無いと見て、どの国にも中立という理由でギルド側へ会議を委託しました。ギルマスが出かけたのはその会議に出席する為です。」
「成程・・・」
そんな一大事に余計な事をする余裕はない
とはいうものの先日まで戦争をしていた国とは会議は中々行いにくいし日数も掛かる
であれば国家間の戦争には干渉しないと宣言しているギルドは中立で話が早いと考えられる事も納得できる事だった
まぁ、各国家はギルドに大きな貸しを作る事にはなるがそうも言っていられないのだろう・・・
「まぁ私が知っているのはこれ位ですね。あとはギルマスに聞いて頂く方がより確実化と。」
「ハミア有難う、助かったよ。」
「いえいえ、でもギルマスは戻るまで最低3日は掛かると思うのですが・・・どうされます?」
そうなのだ・・・
この3日間、何もしないのも勿体ない
かと言って今の状況で魔族領に無闇に行ってもクロノと逢える可能性は無いに等しい
感情のまま魔族領に入って犬死にすれば私は悔いても悔いきれないだろう
ブロウドさんも感情のまま動くのではなく、俯瞰的視野も広げなければならないと言っていた
「まぁ、装備を整えるか修行するか・・・一度己を見つめなおすよ。」
「それも良いかもしれませんね、さて、とそろそろお昼の時間が終わりますしギルドに戻ります。アカノさんも依頼を見に一緒に戻りませんか?」
ハミアはそう言って立ち上がるので「そうだな。」と言って私も立ち上がり、一緒にギルドへ戻った
「戻りました~。」
ハミアがギルドに戻ると元気にそう声を掛ける
それを見た別の受付嬢がこちらを見て私?に手を振っている様だ
「アカノさん、丁度いい所に!!何か不審な中年男性がアカノさんを出せと言ってテーブルに居座っているんですよ!!」
「中年男性?」
この街でギルドに来る様な中年男性に知り合いはいない
「それがお身体は不自由な様なのですが・・・何かオーラ?みたいなのが凄くて・・・」
身体が不自由?オーラ?
・・・
・・・・・・1人だけ心当たりはある
だけど・・・この街に居る筈が・・・
「アカノ。」
後ろから声を掛けられ思わず身が竦む
この声を知っている
この声はある特定の条件下で聞くときの声だ
私は恐る恐る後方を振り返る
「アカノ・・・貴様、誓いを失ったのか?」
そう、この声は怒りすぎて逆に冷静になった時の声だ
「父さん・・・久しぶりです・・・」
私はそう言うだけで精一杯だった
いつも有難う御座います!!
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