クロノの平行と抵抗
「・・・最初から?」
「そう最初からよ。そもそも私たちの目的はね、停滞したこの世界を面白くしていくって言うのが目的なの。」
「お嬢、そこまで言っちゃって良いんですかぁ?」
「良いのよ。こっちは面白がってるのに相手は真剣だなんて面白いじゃない?」
「まぁお嬢が良いのであれば良いんですがねぇ~。」
僕を他所にサイクスとヴァリアは軽口を叩く
「世界を面白くする?・・・それと僕のパーティーに加入する事の何が関係あるんだ?」
「はぁ・・・理解力が遅いのねぇ・・・良い?SS級パーティー【グングニル】は人族の中で有数の強者が揃ったパーティーだった。【勇者】、【剣聖】、【魔術士】のレア称号で集まっている上に国からも認可されているパーティー、そんな彼らが魔族化して人族領を蹂躙しだしたら・・・面白いでしょ?」
駄目だ・・・言っている事は理解できるが内容が理解できない
「魔族化させるのはそいつにさせるって事だよな?けど僕のパーティーには【勇者】、【魔術士】と【拳剛】のお前しかいなかっただろ?」
「はぁ?!!」
そう言いながら目を見開きこちらを見つめてくる
彼女の言いたい事が今一つ理解できない
「無能、幾らアンタが無能でも・・・冗談でしょ?」
「・・・何が言いたい?」
「アカノの事を忘れてんの?!【剣聖】アカノ=エンドロールの事に決まってるでしょ?!アンタの姉でしょうが!!」
その言葉を聞き急激に頭に痛みが走る
「っ!!!」
今はそんな状況じゃない!!
いつ襲い掛かって来るかもわからない相手を前に隙は見せられない
にも拘らず頭の痛みでどうしても隙を作ってしまう
だがそんな僕を前にしても襲い掛かって来る気配を感じない
「なになに?こいつアカノの事忘れてんの?!」
「お嬢、確認なのですが・・・コレは当時人族だったのですよねぇ~?」
「そうよ。ステータスボードを確認した事も有るから間違いないわ。しかもこいつ無職だったのよ。」
「でもコレは今魔族、しかも【魔王】となっておりますぅ~。」
「・・・どういう事?」
「そこは何ともぉ・・・ですが何らかがあって魔族となったと考えればぁ。」
「その時に記憶を失った・・・?」
「全てではない様ですがねぇ~。現にお嬢の事も覚えているみたいですしぃ・・・」
「それはまた何とも・・・「「面白い!!!」」
そう言いながら2人は小躍りでもしそうな表情で喜び出す
僕と言えば頭の痛みでロクにスキルの発動も出来ない
ここまでの痛みは過去には・・・
「なに?!なになになに?!!!人族の無職で無能がどうすれば魔族で魔王で属国までを従える事が出来るの?!」
「しかもコレ!!黒髪黒目で生まれつきの可能性もあるみたいですよぉ?!!そんな存在、私の常識ではぁ存在する訳がないんですよぉ!!!」
「「面白過ぎる!!!」」
「と言う訳でお嬢ぅ~、これを今殺すのは止めてくださいねぇ~!!今でも世界を面白くしてくれようとしているんですからぁ~・・・これを失くすのは損失ですよぉ~!!」
その言葉を聞くとヴァリアの動きがピタッと止まり、こちらへ視線を向ける
「・・・まぁ確かにそうね。こんな無能、いえ元無能が生きているのは不快だけど。」
「その代わりぃ、コレにはプレゼントを差し上げましょうぅ。」
そう言って懐から小さい丸薬を取り出す
「なにそれ?」
「これはですねぇ~純粋な【宝珠】ですよぉ~。この【宝珠】は異常に記憶力が良くなるという効力があるのですがぁ・・・脳を再構築する故に自我が発狂し暴れ狂う程の痛みを与えられてしまうというデメリットがあるのですよぉ。」
「あんた、それまさか・・・」
「はいぃ~、この【宝珠】で記憶が戻ってくれないかなぁ~と思いましてぇ!もし戻ったなら元人族の【魔王】は何を考えぇ、どう行動するのかぁ・・・興味ないですかぁ?」
サイクスがヴァリアにそう尋ねると目をキラキラさせる
「良いわね!!敵対する人族に何を思うのか、味方の魔族にどう接するのか?!この国をここまでした手前、どう転んでも世界は面白くなるわ!!」
その言葉を聞き、背筋が寒くなる
「や、止めろ!!」
その言葉を無視し、2人はこちらへ近づいて来る
「お嬢、少しの間身体を拘束しておいてくださいねぇ~!!」
「えぇ良いわ。こんな状態だったら如何に【魔王】とは言え余裕でしょ!!」
そう言うと同時にこちらへヴァリアが襲い掛かって来る
「くっ!!」
だが痛みが戦いに集中させてくれずあえなく拘束され・・・
そして・・・僕は意識を失った
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