クロノの動揺と咆哮
「君ぃ・・・その顔は、何だねぇ?」
顔?
何を言っているのか分からない
サイクスが呆けているのを見ている僕の顔も呆けているのだろうか?
「何を言っているのか分からないんだけど・・・」
そう言葉に出してハッとし、手で自分の頬に触れてみると・・・仮面が無い?!
「黒髪黒目・・・私と同じぃ?君は一体何なんだね?!!!」
サイクスが今までにない位取り乱す
彼からすれば自分が造った【魔造宝珠】で魔族化?した皇帝など最早どうでも良いみたいだ
「一体なんだと聞かれても・・・僕は【魔王】で黒髪黒目、『不吉の象徴』と呼ばれている存在なだけだ。」
「黒髪黒目が【魔王】・・・【魔王】となった・・・?有り得ない有り得ない有り得ない・・・」
何やらブツブツと思考の海に潜ろうとするが僕も聞きたい事がある
「お前は何故、ローエルを魔族化したんだ?この国に魔族化を提供したんだ?何故・・・クロノスに侵攻させたんだ?答えろ!!!」
そう言って殺気を放って相手を威嚇する
すると調子を取り戻したのか軽薄そうな笑顔を浮かべてくる
「クロノスへの侵攻はぁ私の決定ではありませんよぉ?私は飽くまで技術提供をしてぇ、魔族領に新興国が建国されたとお伝えしただけですからぁ~。」
それは侵攻させた事とほぼ同義じゃないか!!と叫びたいのを必死に堪える
得た力を振るいたくなる気持ちは誰もが本能としてあるだろう・・・
そこに力を振るう先を提示すれば独裁国家の皇帝など侵攻を決めるに違いない
「おま「次は私からの質問ですよぉ~?黒髪黒目同士、有益な情報交換といきましょうよぉ~。貴方はいつから黒髪黒目なのですかぁ?」」
・・・何を言っているんだろう?
「いつからも何も生まれた時からだと思うんだけど・・・」
少なくとも自我が形成された時には既に黒髪黒目の状態だった
「生まれた時からぁ?!それは有り得ないでしょうぅ?!」
「お前が信じようが信じまいがどうでも良い・・・お前が僕の国に人族を嗾けたという事実以外だけで僕はお前を殺せるっ!!」
そう言って剣を握り直すとその殺気にあてられたかの様にサイクスは焦りだす
「いやいやいやぁ~!同じ黒髪黒目ではありませんかぁ~情の1つでも湧いて下さいよぉ~。」
その言葉を無視して剣を振り上げ立ち向かおうとするその刹那
「はいは~いそこまでよ~。」
と僕が入ってきた謁見の間の入口から声が聞こえる
その声を聞きサイクスは表情を笑顔に変える
そして僕は・・・その声を聞き思わず動きを止めてしまった
「お嬢ぉ~遅いですよぉ~!!私、【魔王】に殺されそうになっておりましたよぉ~。」
「アンタねぇ~・・・面白い事になってるのは良いんだけど自分が死にそうになってどうするのよ?アンタは弱いのに必要以上に前に出ようとするからさ~。」
そう言いながらコツコツと足音がこちらに近づいて来る
その声を聞けば聞く程1人の女の顔が頭に浮かぶ
(まさか?!)
彼女は僕の横を無造作に通り過ぎ、サイクスの横へ立つ・・・
「ヴァ、ヴァリア?!!!」
「やっほ~!!あんたが【魔王】になっていたなんてね・・・さっきは私も驚いたわ。ねぇ、無能なクロノ?」
服装こそ変わっているが、その容姿、見下す視線、喋り方全てが彼女だと突きつける
「お、お前が何で此処に?!!」
「ん~・・・まぁ暇つぶし?それよりアンタが何で【魔王】になってんのよ?」
「五月蠅い!!ちゃんと質問に答えろ!!!どうしてお前が此処に居る?!!ローエルが魔族化していた事と関係あるのか?!!」
「アンタ相変わらず馬鹿なの?関係あるに決まってるじゃない。私はね・・・最初からアンタたちを狙ってパーティーに入ったんだから。あ、アンタ以外を狙って、ね。」
そう言いながら嫌らしい笑顔を向けてくるのだった
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