皇帝の公開と後悔
ダイン帝国、謁見の間
そこには宣戦布告から5日しか経過していないにも拘らず全貴族が招集されていた
「早くも魔族領を陥落させたか?」
「いやいや流石にそれは・・・将軍首を取った等ではないですかな?」
「それにしてもまだ首都に残っていて幸いでした。」
「首都に赴いて数日で領地に戻る者もそうはいますまい。」
そんな声が貴族間で話されていると、
ーーゴーーーンーー
ーーゴーーーンーー
と皇帝が現れる合図の鐘が鳴り響く
「皇帝陛下のご降臨である!!!皆の者、頭を伏せよ!!!」
その言葉に雑談を話していた貴族たちは一斉に跪いて頭を伏せる
「頭を上げよ。」
暫くすると皇帝の声が謁見の間に響き渡り、それと同時に姿勢を正し、直立不動で視線を向かい合う貴族へ向ける
「先日に派遣した兵から緊急の早馬が先程に到着した。余はその内容の喜びをお前たちと共に共有したいと考えこの場を設けた。早速ではあるが、早馬にて駆け付けた兵をここへ。」
そう指示を出すと鎧を纏った兵士が謁見の間に入り跪づく
その表情は何処か青ざめた様にも見える
「皇帝陛下の忠実なる兵がご報告申し上げます!!進軍してから2日後!!憎き魔族領にて3の村と町を破壊、壊滅を行いました!!その時点での皇帝陛下の忠実なる兵の負傷者は58名!死傷者は4名!!」
「「おぉ・・・」」
その報告に貴族達は感嘆の声を上げる
自分達より遥かに強い魔族どもの町村を破壊し死者も数名程度で抑えられたのは驚異的だとは思えた
(これも例の【宝珠】の成果の賜物か・・・)
誰も口には出さないが、戦果を確認するとどう考えてもプラスに作用されているのは明らかだった
皇帝自身もその報告を聞き、僅かに口角を上げた
「し・・・しかし!!!」
早馬に乗って戻って来た兵士の言葉は続く
「進軍してから3日後!!憎き魔族領首都に到着し総攻撃を与えました!!数は少ないながらも魔族領の抵抗は激しく丸一日の時間を要し・・・」
そこまで言うと兵士は僅かに震えだす
だがそれに気付かない皇帝や貴族たちの視線は期待に満ち溢れる
「時間を・・・要し・・・」
「時間を要し・・・どうなった?」
躊躇う兵士の様子に皇帝は気付かない
兵士からすれば、正直に報告をしても反感を買い処刑される可能性がある
兵士からすれば、虚偽の報告をしても露呈した時処刑される可能性がある
余りに被害が大きすぎる為に露呈しない事は有り得ないのだから正直に報告するしかないのだから・・・
「時間を要し!!どこからか【魔王】と思える魔族が現れ!!皇帝陛下の忠実なる兵約25,000余りの兵が命を散らしました!!!」
正直に報告する覚悟を決めた兵士の声が謁見の間に響き渡る
「「「・・・・・・」」」
その言葉を聞いても誰も何も発しない・・・
当の皇帝ですら何を言われているのか理解できていない様な表情を浮かべる
暫しの沈黙が場を支配した後、その空気を破ったのは皇帝だった
「25,000の兵が・・・【魔王】によって殺されたと?」
「いえ!正確には丸一日の攻防で【宝珠】による兵200人余りが命を散らし、一般兵5,000人余りが命を散らしておりましたが・・・残りは【魔王】らしき者の手で命を散らしました!!」
逆算すれば20,000人が【魔王】らしき者の手によって死んだという話になる
「お待ちください。」
皇帝の後方にて待機していたサイクスは此処で初めて口を開く
「貴方が早馬でこちらに戻って来たとしても、進軍した時期から逆算すると・・・1日も経たずにその【魔王】は20,000人を殺したという事ですか?」
その言葉に貴族間にも動揺が走る
確かにそうだ
進軍して3日目に首都到着し4日目に【魔王】らしきものと交戦、早馬で戻って来た今が5日目だと考えると僅か1日にも満たない時間でそれを成し遂げた事になる
その言葉を受け兵士は首を横に振りながら答える
「1日では御座いません・・・僅か数時間、数時間で20,000人が命を散らしました!!」
その言葉に謁見の間には衝撃が走る
数時間で20,000人を殺せる【魔王】らしきもの・・・
その【魔王】が報復に出てくればこの国は・・・誰もがその想像をし身震いしそして絶望する
「その【魔王】らしきものは、どの様な方法で・・・」
ドゴーーーン!!
皇帝がそう尋ねようとすると同時に謁見の間の扉が乱雑に開きだす
「其等が、【ダイン帝国】の、羽虫共か・・・」
扉から現れたのは黒いローブを身に纏い、仮面を付けた謎の存在だった・・・
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