クロノと風速の復讐
意識を失ったグーガにそっと近づく
・・・彼の表情は何処か満足そうだった
「我は、其に・・・謝罪しなければ・・・ならぬ。」
今は・・・涙は流さない
僕の心はドンドン黒く染まって来る
そうしている間も【暴喰ノ口】は無数に魔族?の様な兵士と人族の兵士を無造作に喰らっていく
グーガ達のお陰で・・・魔族?も大分少なくなっていた今、100匹にも満たない魔族?と人族は無造作に喰われていった
「お、おいなんだ?!!」
「離せ!!はなっ!!」
周りは敵軍の阿鼻叫喚が木霊する
けれども、僕の心は陰鬱なまま・・・安らぐ事はない・・・
僕の人族に対する警告はそんなに軽いものに感じられたのか・・・
「我らはダインガァ!!」
「帝国万歳!!ギャ!!」
攻めて来た人族は・・・ダイン帝国か・・・
他の国も進軍して来ているかもしれないが、数万程度の規模ならば1国だけと考えるのが自然だ
「其等に・・・慈悲は・・・蚤ほども、無い・・・」
怒りで頭が沸騰してしまいそうだ
そんな僕に・・・心の何処かで声がする・・・
(もう良いんじゃないか?)と声がする
「もう良い・・・」
心の内に応える
(僕は人族に出来る事はしたよね?)
「やった・・・」
(そもそも、僕を殺したローエルも人族だ・・・人族なんて碌なものじゃない・・・)
「その通りだ・・・」
「グーガだって、兵士たちだって人族に殺された・・・彼らの為にも・・・)
「(人族は滅さなければならない)」
瞬間、今までよりも魔力が身体中を駆け巡る
「【暴喰ノ口】・・・」
【暴喰ノ口】を再度かけなおすと、今まで両手分である2つしか発動出来なかった【暴喰ノ口】が4つ発動する
単純に敵軍を喰らう速度が倍となって次々と喰らい出す
「て、撤退だ!!撤退だーーーー!!!!」
そうして喰わせ続ける事数十分が経過すると、何万といたであろう兵士たちが目に見えて減少しており残りは数千という様な数となっていた
敵軍の指揮官らしき人族から撤退命令が出ると同時に、一斉に軍勢は崩れて我先にと逃げ惑いだした
「「「うおおおおおおおおおおおおおーーーーーー!!!」」」
門の上から喜びの声が聞こえるが・・・僕自身の気分は全く晴れない・・・
逃げていく人族たちを見ながら、復讐を脳裏に刻み込んだ・・・
「ふぅん・・・あれがクロノスの【魔王】か・・・中々面白いけど、追撃はしないんだ。」
◇
◇
僕が城に戻る道中、国民達からの歓声は凄いもので喜びを露わに表現してくる
手を挙げて歓声に応えるが・・・仮面の内ではどうしても気分がすぐれなかった
城に戻る間際にトリクトリロの兵士を見かけたので耳打ちをし私室にこもった
報告ではルーシャやマリトナ、ファーニャさんがこちらに向かっている最中らしいが・・・
正直、僕は彼女たちに逢いたくない
どんな顔で彼女たちに逢えば良いのか分からない
(それよりも・・・あの魔族?は何なんだろう?)
魔族とは身なりは異なるが、明らかに人族とも逸脱している容姿をしている
あれは魔族というよりも昆虫が大きくなった様な風貌をしていた
(ローエルに似ていた・・・?)
思えば魔族化したローエルに似ていた様に感じる・・・
個体としての実力はローエルの方が圧倒的に強かったが、あれは【勇者】だったからかもしれない
それにローエルと違い、意思疎通も出来ない様な感じだった
(魔族では無い魔族・・・、これが奴らが攻め込んできた理由なのか?)
考えれば考える程、怒りで頭がどうにかなりそうだ
あんな玩具で僕の国に手を出してきた報いを与えなければならない
ーートントンーー
そんな事を考えていると、窓からノックされる音が聞こえる
「ご苦労・・・で?」
「はっ、【魔王】様のご推測通り、残存兵は人族領へ退却していきます。」
「是。我は、転移すが、滞りは?」
「はっ、ご指示の通り【魔王】様がマーカーされたマントを広げているかと思われますので問題無いかと。」
「了・・・後は、一任す・・・」
「畏まりました。我が国の【魔王】様、マリトナ様、ルーシャ様、ファーニャ様には私から伝達致します。」
何故この私室には転移できなかったのか・・・
その答えもあの国にありそうだと思いながらその言葉に頷き、転移を開始した
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