クロノの絶望の始動
【妖精霊国インフォニア】の【魔王】であるファーニャさんの私室に転移された僕はそのまま窓から飛び出した
背中から「クロノ様?!!」という声が聞こえたという事はファーニャさんがいたのかもしれない
けれども話をしている時間すら惜しい僕は振り返らずにそのままクロノス領へ突き進んでいった
前回インフォニアに向かうのに要した時間は約6時間位要した事を考えれば、このまま走り続ければ2時間程度でクロノス領へ、何もなければ更に1時間程度で城へ到着できるはずだ
走り続ける間も最悪な光景だけが脳裏に浮かぶ
その光景を頭を振りながら忘れようとするも、どうしても離れてくれなかった・・・
人族の国が宣戦布告を行ったのが数日前・・・
その数日がどれ位前なのかによるが、ロキフェルは転移直前1日と言いかけていた様に思える
人族がクロノス領に到着して1日が経過したと考えて間違いないだろう
(1日・・・)
問題はその1日でどれ位の損害があるのかだ
通常で考えれば人族よりも魔族の方が1人当たりの能力値は高い
だが、戦闘称号を持たない魔族と戦闘称号を持つ人族であればそれは当てはまらない筈だ
加えて絶対数が違う
魔族と比べて人族の方が数としては圧倒的に多い
同じ称号持ちの魔族1人に対し、人族は5人程度で同等と言われる
逆に言うと5人いれば魔族を殺せるのだ
そして・・・人族がクロノスに宣戦布告をしてきた理由だ
人族は魔族に対し憎しみを募らせている
けれども実力差を考慮し魔族領に攻めて来たことは無かった筈だ
今回は実力差を覆す何かがあるからこそ侵攻してきたと考えるのが自然だ・・・
(くそっ!!考えれば考える程、嫌な予感しかしないぞ?!!)
焦燥感が募り視界が狭くなる様な感覚に陥ってしまう
(!!?)
前方に黒い煙が複数立ち上っている
嫌な予感だけが広がるがあの煙を無視する事は出来ない・・・
僕は城までのルートから少し外れた煙のする方へ更に速度を速めて走っていった
◇
◇
そこは地獄だった・・・
小さな村だったが穏やかな雰囲気に醸し出していたであろうそれは・・・
正しく地獄そのものの風景を僕に突きつける・・・
炎がどこからともなく燃え広がり、老若男女問わず・・・獣人だったものが死体として・・・
また・・・肉片として散らばっている
肉の焦げた臭いと・・・
血が飛び散っている建物が・・・
守るべき者を守れなかったのだと・・・僕に現実を突きつけた
派遣していた兵士らしき獣人も鎧ごと切り裂かれている
それにも拘らず、人族らしき死体が見当たらない・・・
「お・・・」
頭が・・・白くなる
心が・・・黒くなる
「おお・・・」
『人族が嫌になるよ』・・・
そんな【真祖】の声が・・・聞こえた気がする・・・
「おおおぉ・・・」
襲い掛かって来る絶望は後悔は憤怒は狂気は殺意は嘲笑は狂乱は復讐は破滅は殺戮は焦燥は苦悩は哀願は祈願は苦渋は自傷は憔悴は反動は凶事は衝動は絶無は殲滅はそれらが入り混じった感情が声から漏れだした
「オおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
どれだけそう叫んだだろう・・・
1時間叫んだかもしれないし10秒かもしれない・・・
ただ明確な感情が心の内に完全に棲みついた
「殺す・・・」
僕は今まで攻め込んできた人族を殺した事はあれど、それ以上の無いかを行った事は無い
人族に対しても広まる様に喧伝して警告を放ってきた筈だ
「足りないのであれば・・・思い知らせるしかない、か・・・」
僕は多分、今この瞬間から本当の意味で魔族になったんだろう
だけど・・・それが哀しいとは一欠けらも思う事は無かった・・・
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