クロノの弱者の策略
ダンキの腕が血飛沫をまき散らしながら宙に舞い、ボトンと音がして地面に落ちた
「まさか千載一遇のチャンスで命を取りに来るんじゃなく、腕を狙って来るとは思わなかったぜ。」
斬られた部分の腕を庇う形で構えながらそう言って来る
「其の腕は、近接、遠距離、付与と、察す・・・」
そう、ダンキのスキルは近接物理、遠距離魔法に加えて攻撃力、素早さ、防御力をバフさせる腕だった
思えば僕に攻撃してくる時も無意識かもしれないが若干あの腕を庇う様な態勢を取っていた
ならば・・・その腕は狙われたくないという事と同義だ
罠である可能性も考えない訳では無かったが、あれだけ一方的な状態で罠を張るメリットはないと考えたが、それが見事に的中した
事実、ダンキからは先程の様な脅威は薄れている
近距離攻撃があろうと遠距離攻撃が有ろうと、あの異常な割合のバフがないダンキが相手では最早勝負がついたも同然だ
「・・・その通りだがな!飽くまでバフが切れただけだ!!俺様が敗けた訳じゃねぇ!!」
「【怠惰ナ脚】・・・」
「ぐっ!おおおおおおおおおおお!!!!」
ダンテが【怠惰ナ脚】の衝撃を受け、片膝を付き、手でうつ伏せにならない様に必死に抵抗する
流石【魔王】・・・魔力を惜しみなく使用しているにも拘らず圧死させるまでは至らない
「はぁはぁ・・・はぁ・・・ふざけんな・・・ふざけんなよ!!!」
【怠惰ナ脚】で圧死させる事を諦め、解除するとダンテが憤っている
「俺様は最強だ!!俺様以上に強い奴なんて存在する訳が無いんだ!!俺様は最強の【魔王】だぞ!!お前の様な新米【魔王】に俺様が敗ける訳が無いんだ!!!!」
その言葉を聞いた瞬間に全てを理解した
ダンキは互いの命を削り合う闘争が好きなんじゃないんだ・・・
そう思うと自然に仮面に手を掛けていた
「な?!!!ひ、人族?!!!」
僕の素顔を見て驚愕の表情を浮かべる
「ダンキ・・・お前は闘争が好きな訳じゃない。自分が圧倒的な位置にいて戦い、弱者の小賢しい策をものともせず勝利する、そんな弱い者いじめが好きなんだ。」
「ち、違う!!!俺様は「五月蠅い。」」
彼の否定の言葉に言葉を重ねて言葉を紡ぐ
「お前は蹂躙を好まず、闘争を好まず、けれど弱い者いじめを好む陰湿で臆病な性格だ。闘争を好むならば自分こそが最強だ等と囀らない・・・より強い者が出て来て喜ぶべきだ。自分が最強だと思うからこそ相手が誰であれ余裕を持って戦っていただけなんだ。・・・お前の根底は、ただの弱い者いじめだよ。」
そう告げるとダンキの表情が曇る
「それでいてお前のスキルの名の通りにお前自身も傲慢だ。お前が魔帝国を目指したのは闘争が理由なんかじゃない。お前は魔族領で禁忌扱いされている魔帝国の【魔王】に嫉妬したんだよ・・・『自分こそが最強なのに何故魔帝国の【魔王】が特別視されるんだ』『魔族領全体に俺こそが最強だと示さなければならない』とね。もてはやされる為に【妖精霊国インフォニア】には侵攻せずにいたんだろう?」
「ち、違う・・・俺は・・・」
「お前が不幸だったのは、お前自身がこの国で最強だった事だ。お前はこの国では最強だった故に傲慢になってしまった・・・魔族領はこの数百年、大掛かりな侵攻や戦争が無かった。そんな中で魔族領の中でもかなりの強さを誇る鬼人の中で強いが故に傲慢にならざるを得なかったんだ。僕はお前も・・・勿論僕自身も最強では無い事を知っている。お前が敗ける理由は自分が最強じゃない事を知る弱者による小手先の一手だ。」
「お、俺様は敗けてない!!敗けない!!!」
「勿論お前は未だ敗けていない。でも・・・今から敗けるんだよ。」
そう言って僕は剣を構える
するとそれに呼応する様にダンキも大剣を構える
「俺様は・・・いや、俺は敗けねぇ・・・お前に勝って、俺は最強を目指す!!」
その決意の目を見て少しだけ笑みが零れる
決して馬鹿にしている訳では無く・・・
「ダンキ、お前は今楽しいか?これがお前の望んだ闘争だよ。」
そう言うと呆けた瞬間、顔に笑みが浮かぶ
「ハッ!!・・・闘争なんざ、くそくらえだ。」
その言葉を合図に互いが互いに斬り込んでいった
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