クロノの戦線と宣誓
僕に剣を向けられ片膝を付いているインキは無言で俯いていた
「インキ様が・・・」
「インキ様が敗けた・・・」
鬼人の間に動揺が波紋の様に広がる
「貴様らの大将は敗北した!!!貴様等も大人しく投降するか、見苦しく抗うか選ぶが良い!!!」
その動揺を察したバルデインの叫び声が戦場に響く
(ヤバい!!)
僕がそう思うと同時にインキが徐に顔を上げて叫び出した
「皆大人しく投降せよ!!俺は正々堂々と戦い敗れた!!ここにいる鬼人の誰よりも強い俺が敗れたのだ!!無駄に命を失うのは【魔王】様への忠誠ではないぞ!!!」
その言葉を聞いた鬼人たちは互いの顔を見合わせて武器を地面に置いた
(良かった・・・)
鬼人の性格上、投降するくらいならと捨て身で攻撃してくる可能性もあった
それを大将自らが制止する事により、戦いを終結を宣言した事によりこれ以上無駄な犠牲を出さなかったのは大きい
身体能力が鬼人に近い程強い獣人たちが投降した鬼人を捕縛する
「羽虫にデバフを、撒き、城下の檻へ・・・」
「はっ!!鬼人たちを連れて行け!!見張りを複数待機させるのを怠るな!!」
僕の指示に従い捕縛した鬼人を地下牢へ連れて行く
連れて行かれる鬼人の中でインキと目が合う
彼が何かを言いたげな表情をしていた為に僕から近づいて行った
「・・・殺さんのか?」
対面に立や否や開口一番そう尋ねてくる
「俺ら鬼人は相手が敵だった場合は容赦無く殺す。それが復讐の機会を奪うという事を知っているからだ・・・貴様は甘いぞ。」
「非ず・・・其等は、我が配下となる。配下を無闇に散らすは、愚王のする事也・・・」
僕がそう言うとインキは鼻で笑う
「甘い【魔王】だな。そんな王じゃ下から裏切られるぞ?」
「是非も無し。我を討つなら、それも良し。」
その言葉を聞いてキョトンとした表情の後、豪快に笑い出す
「ガッハッハ!!!だったらお前が俺たちの【魔王】となった時にゃ寝首を斬られない様に気を付けるんだな!!!」
そう言うと大股で歩いて地下牢へ進んでいった
「・・・【魔王】様、あの者は見せしめの為に殺すべきでは?」
バルデインは抑えきれていない殺気を身に纏いながらこちらに話しかけてくる
と言うか、剣の柄を握りしめている
「良い。我を認めし、言でもある。」
「・・・はぁ。」
そう、敗北者から【魔王】になったらと言う言葉が出たという事はその可能性をある事を示唆したという事だ
それは暗に僕がソウトウキの【魔王】になる事も認めたのではないか?と思った
「あ、お兄さ~ん!!!お疲れ様!!」
そう言ってロキフェルが機嫌良く近づいてきた
「いや~僕も久しぶりに戦ったけど・・・戦いって良いもんだね!!【魔王】になっちゃうと中々無いからさ~。あ、お兄さんは例外ね?自ら突き進む【魔王】って初めて聞いたし。」
「其は、鬼人を、如何に見る?」
「う~ん・・・鬼人は単体で言えば強いよね~。耐久力と攻撃力が飛びぬけているし・・・でも強者の驕りが正面からの戦いを好む傾向が強すぎると思う。事実、ソウトウキが手紙を返送して来ずにこの国へ向かってきていれば間違いなく苦戦していただろうし・・・」
だよね
鬼人という種族は正々堂々というか、単純な力比べに傾向している
軍には軍を、単体には単体をという感じだ
という事は・・・
「あ~、お兄さんは1人でソウトウキに向かおうって考えてるだろ?」
そう得意げな顔でこちらの思考を代弁してくる
そうなのだ、ロキフェルの言った通り単体で出向こうかと考えている
僕としては統治しようとする国の種族被害をあまり増やしたくない
それだと結局復興に時間も人手もお金も掛かる
「まあでも気持ちは分かるけど個人的には反対かなぁ~。今回の鬼人は正々堂々タイプだったけど【魔王】自体もそうだとは言い切れないしね。もしそうじゃ無かった時にあの数を1人で捌きつつ【魔王】と戦うのは厳しいよ?」
ロキフェルのその言葉にも納得出来、暫し頭を悩ませてしまうのだった
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