クロノの計算と研斬
インキと対峙しながら鬼人への対策に頭を悩ませる
鬼人は耐久力と力が異常に強い
反面、素早さについてはそれ程でも無く戦術と言えるほどの策は無い様に感じる
飽くまでインキの言動を顧みた判断ではあるが、インキと単独で戦う事になった途端他の鬼人が僕に対しては襲い掛かってこないところを見るとそう間違ってはいない筈だ
僕はフードの下に帯剣していたローエルの剣を抜く
元の所有者を考えると使用するか悩んだが・・・武器そのもので言えば元SS級の【勇者】が持っていただけあってそれなりに業物だった為に使用する事にした
「ほう・・・鬼人相手に剣を取るか・・・敵国の【魔王】ながら豪気よな・・・」
インキはそう感心した様に呟く
残念ながら僕はそんな気持ちで剣を握ってはいない
1つは相手に対して、相手の土俵で戦っていると思わせる事
「では・・・行くぞ!!!」
そう言うが否やインキはコチラに猪突猛進で向かって来る
「遅いぞ!!貰ったわぁ!!!」
そう言いながら僕の頭上に向かって躊躇なく大剣を振り下ろす
ガァーーーンーーーと金属と金属がぶつかる音が鳴り響く
「な?!!その細身でこの俺の一撃を受け止めるだと?!!」
そう、この剣はローエルが【勇者】だった事もあり人族の中でも非常な高価なエンチャントを施された剣だった
ローエルは【勇者】にしては珍しく闇属性の適性が強かった
闇属性の特徴は何もデバフだけではなく、吸収という部分でも秀でている属性だ
僕等のパーティーでは彼はどちらかと言うと盾役として行動していたのはその特性故だ
僕は万遍なく、全属性に適性はあったが体内の魔力を放出する力が弱く、当時は魔力を放出する力が無くて足手まといだった
だけど、この剣のエンチャントはローエルと同じく闇属性だ
剣と剣を合わせた事によりインキにはデバフを、斬撃による衝撃を吸収し相手を攻撃を正面から受け止めた様に演出した
「まさか・・・俺の渾身の一撃を正面から受け止められるとはな。俺は称号【剣豪】だぞ?」
「羽虫の攻撃など、手で払えば、どうとない。」
そう告げると獰猛な目でさらにこちらを睨みつけながら笑みを浮かべる
「フフ、言いおるわ・・・では羽虫の一撃では無く獰猛な蜂の一撃と思いしれぇぇぇ!!!」
そう言いながら大剣を連撃を繰り出してくるが、大剣の特性の為に攻撃モーションが透けて見える
それを敢えて避けずに全て剣で受け止めていく
「おい・・・」
「あぁ、インキ様の猛撃を受け止め続けているぜ。」
「【魔王】様でもあそこまで受け続ける事が出来るかどうか・・・」
「バカ!!【魔王】様だったら余裕だろ!!」
2つ目の狙いが徐々に浸透しているな・・・
2つ目は鬼人に認めさせる事だ
元ブーザル領と同じく、ソウトウキを奪っても強さを認めさせなければ統治が出来ない
だからこそ、僕と言う【魔王】の強さを分り易く鬼人たちに浸透させ、万全の体制を敷いて統治させる
魔法だと彼らの言う強さと認められない可能性がある
それを敢えてあちらに合わせる事により反論の余地なく強さを見せつける
「面白い!!面白いぞ!!この様な戦いは久方振りだ!!もっとだ!!もっと俺を楽しませろ!!」
そう叫びながら容赦無く大剣で攻撃を仕掛けてくる
そして最後の狙いだが・・・
「ガァ!!!」
インキの振り下ろしを初めて避けて僕は反撃に転じる
僕は鬼人と比べて素早さは圧倒的に速い
一撃は劣っていても手数で言えば圧倒的に勝る
隙あらばインキを斬り続ける内に負傷しだした為か攻撃自体の数も少なくなっていく
グサーーーー
インキの右わき腹を深く刺し、剣をそのまま薙ぎ払うと片膝をついた
「其の、負けと、認めよ・・・」
そう剣を相手に向けてながら告げると、インキの表情は歪んだ
(これが最後の狙い・・・如何に耐久力が高くても斬り続ければ勝てるという確信から僕は剣を取ったんだ。)
誰に言うでも無く、僕は心の内でそう呟いた
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