クロノの衝撃と奨励
驚いている僕を他所に、ファーニャさんは言葉を続ける
「最初に生み出されたのはヴァンパイア族と聞いております。ヴァンパイア族は世界に充満する魔力を操るのに長けた種族です。魔力を魔法を使用する方法を確立させたのは彼らの功績と言っても良いでしょう。ですが【人魔の真祖】はヴァンパイア族を過剰に生み出しすぎました・・・」
「過剰故の、争いと?」
そう尋ねると彼女は頷く
「えぇ・・・生物が過剰に生み出されると派生が出来ます。派生されると差別区別が生まれます。差別区別が生まれると・・・争いが起きます。」
「・・・・・・」
「当初、【龍の真祖】、【妖精霊の真祖】は【人魔の真祖】を必死に止めたそうです。この世界を形成する存在を生み出せ。自分たちの系譜が生み出したモノを我が物顔で使用する存在しかいないではないか。余りにも過剰に生み出し過ぎだ、これでは全ての存在に魔力が行き渡らない等とですね・・・」
何か広大な話で理解しきれていない・・・
過剰に生み出されたからこそ、僕の存在があるのだろうからブロウドさんが悪いとも言い切れないし・・・
「すると【人魔の真祖】は嗤いながらこう言ったそうです。『思い描く世界の安寧の形はそれぞれだ。資源があるだけでは役に立たない。』そして『争いが無ければ進化は有り得ない。進化のない世界に価値などない。』と・・・」
ブロウドさんの気持ちも分からなくはない
分からなくはないんだけど・・・何か、何かが嚙み合わない気がする
「それから何度も話し合いが持たれたそうですが、平行線で・・・遂に【龍の真祖】と【妖精霊の真祖】は【人魔の真祖】と争う事に決めました。何百年もの争いの末、勝利したのは【人魔の真祖】です。」
2人の【真祖】を相手取り、ブロウドさんが勝った?!
それは大げさでは無く世界最強であるという事だ
「勝利した【人魔の真祖】は系譜を生み出し続けました。生み出した結果、ヴァンパイア族の間でも派生が行われ、確執が起こり、永い時を得て、魔族、人族、獣人族、悪魔族等の様々な種族が確立されたのです。
派生された種族は各々の楽園を構え、国を設立していきました。そしてその中でこの国、【妖精霊国インフォニア】は唯一、我らが神が妖精霊の為に守り通して下さった国なのです。」
そう言うと彼女はフッと溜息をついてから飲み物に口を付ける
そんな様子を眺めながら彼女がこの話を僕にした意図にきづく
彼女は言外にこう言っているのだ
『人魔族から必死に守り通した唯一のこの国を、お前は奪うのか?』と・・・
その言葉の意図に気づき押し黙る彼女はニッコリと笑う
「クロノ様が聡明で助かりましたわ。何も考えていない愚か者にこの国の【魔王】にのみ受け継がれた話をしても意味がありませんからね。」
・・・そんなに軽く反応されても本当に困る
トリクトリロやブーザルとは違う、同盟、若しくは属国にする事はある意味容易い
そう言う事でなく・・・永く人魔族から守られたこの国を背負う覚悟があるのか?
問われているのはその1点だ
そんな事を考えているとファーニャが言葉を挟む
「因みにクロノ様、私は同盟に関しては受けるつもりは御座いません。あの様な紙よりも薄い信頼なんて保険にもなりませんから。受けるとすれば属国、若しくは宣戦布告のどちらかですよ。」
・・・要は責任を負うか、潰すかの2択を迫られている訳だ
冷や汗を垂らしながら悩んでいると彼女は容赦なく追い打ちを掛けてくるようだ
ニコニコしながら「そうそう」と口を開きだした
「属国を選ばれるのでしたら・・・その証として私はクロノ様に嫁ぎます。」
「・・・なんと?」
思考が停止する
仮面でも僕の言葉「は?」を適切に変換出来なかったみたいだ
「あら?クロノ様の妻となれば、クロノ様はこの国を無碍にはしないでしょう?クロノ様はこの国の国民からより信頼を得られる、双方に利がございますわ。」
彼女のその言葉に絶句するしかなかったのだ・・・
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