【間章】皇帝と肯定の工程
「皇帝陛下にご進言申し上げます!!!皇帝陛下の忠実なる兵36,311人!!今この時より準備は完了しております!!皇帝陛下の名の下にいつでも憎き魔族に対し剣を向ける覚悟であります!!!」
時はアカノがこの世界に戻る2日前
場所は【ダイン帝国】の皇帝陛下謁見の間
1人の騎士が皇帝に対して報告を行う
その皇帝はと言えば謁見の間中央の高い場所にある王座に腰掛け、その報告を聞いているのかいないのか、虚ろな瞳で見下ろしている
齢は60代だろうか?白くなった髭を蓄え、ひどく痩せこけた体形をしている
皇帝の両端には諸侯貴族約60名が整列し、騎士の報告を整列して聞いていた
「・・・・・・」
皇帝は報告を聞いても尚、身動き1つせず虚ろな瞳で階下を見下ろす
その様子に貴族たちは訝しむものの身動き1つ取れぬこの状況にただ立ち尽くすしかなかった
そこへ皇帝の後ろに控えていた男がそっと皇帝へ近づく
「皇帝陛下。忠実なる兵36,311人の準備が完了いたしました。どうぞ我らへ皇帝陛下の神託をお授け下さい。」
「貴様!!!皇帝陛下に対し不敬であろう!!!皇帝陛下は皇帝陛下のお考えをお持ちなのだ!!貴様如きが指示を促すなど言語道断である!!」
そう言って1人の貴族が激高し皇帝陛下に近づいた男を指さす
「マンブルグ様、申し訳御座いません。余りにも皇帝陛下のお声をお聞きしたいが故、先走ってしまいました。」
「そもそも貴様如き黒髪黒目が皇帝陛下の近衛兵というのはどの様な案件だ?!!皇帝陛下にどの様な甘言でもって惑わしたのだ?!」
「惑わすなど・・・とんでもないことです。皇帝陛下は私如きの浅知恵に惑わされる様な御方ではありません。皇帝陛下のご慈悲によって、弱者なる私ですがこの様な栄誉ある場に在籍出来た事に感謝の念を絶やした事など御座いません。」
「何をたわけた事を!!貴様「もう良い。」」
マンブルグと呼ばれた男の声を皇帝が遮る
そして虚ろな瞳のまま、階下のマンブルグへ視線を落とす
「マンブルグ・・・コレを近衛兵としたのは余の決めた事である。貴様は余の決定に背くというのだな?」
そう言われてマンブルグは顔を青くして首を横に振る
「皇帝陛下、とんでも御座いません!!敬愛する皇帝陛下に対しその者が不敬な「もう良いと言っておる。」」
マンブルグはそう言われ目に見えて震え始める
「余がもう良いと言ったのはな・・・貴様の存在がもう良い、必要ないという意味だ。」
「こ、皇帝陛下!!何卒ご慈悲を!!私は皇帝陛下の忠実なる僕で御座います!!!」
皇帝はその言葉を無視し、謁見の間に並ぶ兵士たちへ視線を向けて「連れていけ。」と一言だけ発した
その言葉を聞き、兵士たちは一斉にマンブルグを捕縛し謁見の間から引きずり出そうとした
「は、放せ!!貴様ら私を誰だと思っている?!!こ、皇帝陛下!!ご慈悲を!ご慈悲をーーーー!!」
そう叫びながら連れていかれるマンブルグを見て、貴族たちは顔を青ざめていった
皇帝陛下の言葉が全てであり、皇帝陛下の名の下に全てが許される
それがここ【ダイン帝国】の法であり絶対でもある
「皆の者・・・」
マンブルグが連れていかれ、再び静寂となった謁見の間に皇帝の声が響き渡る
「この【ダイン帝国】・・・いや、人族全ては太古から魔族の脅威に晒されていた。魔族領を統一し、全てを人族の物とする事は太古から人族の宿願であったとも言える。」
その言葉を聞き、全員が真剣な表情で皇帝の声や表情を見逃すまいと聞き入り、食い入るように見つめる
「その宿願が余の時代によって最大の好機を得る事が出来た。相手は建国したばかりの青二才の【魔王】の国だ。この青二才は何を勘違いしたのか、人族に対しても攻めてくるなと大々的に警告を発してきおった。余はこれを警告と受け取らず願いと受け取った・・・つまりは青二才は弱いから近づくなといっておるのだ。」
その言葉を殆どの者は頷いて聞き入る
が、少数は否定はしないものの、何処か訝しんだ表情で聞いていた
「そして、そんな青二才の存在と共に、余の国は新たな力を得る事が出来た。・・・これは天啓である。余の国で魔族を滅せよという天啓以外の何者でもないのだ。」
静かに、けれども否定を許さぬ言葉にただ全員が頷くのだった
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