アカノの自首と自粛
「・・・・・・は?」
眼前の光景に対して疑問符を呟く事で精一杯だ
私が放ったファイア・イーター精々私の背丈に届かない程度の高さで炎波を放ち相手に襲い掛かるスキルだった
だった・・・のだが、今の炎並は私の背丈の4倍程度の高さで相手に襲い掛かっていた
何より横幅も依然と比較にならない位広範囲に展開されていた
(果たしてこれが10倍の威力なのだろうか?体感20倍と言われても信じるな・・・)
まぁ実際は20倍の威力は無いのだろうが・・・
何にせよ脅威的な威力である事は、正に骨も残っていないマッドハウンドが死んだであろう場所を確認すると嫌でも理解できる
「確かにこれは魔族に対して以外はエンチャントさせるべきではないな。」
そう考えながら剣を鞘に納める
けれどいきなり本番で使用せずに済んだのは良かった
どう考えても街中で使用する効力ではないし、守るべき者を巻き込んでしまう可能性すらあった
私は自分に対して無理やりそう納得させて宿に戻る事に決めた
◇
◇
「おはようございます。」
朝になり部屋を出て階段を降りると依頼主である商人が他の人と難しそうな表情で話し合っている
「おぉ剣聖様、おはようございます。」
「おはようございます。どうかされたのですが?」
私がそう尋ねると非常に難しそうな表情にかわる
「それが昨夜に大きな轟音が鳴り響いた事はご存知でしょう?」
轟音?私が熟睡している間だろうか?
「私が休んでいるときでしょうか?私には記憶に御座いませんが・・・」
「そうですか・・・実は昨夜の夜更けに轟音が一度だけ鳴り響いたのです。朝になり町の者が音した方に向かいますと、辺り一面が焦土となっていたのです。幸い町の者に被害はなさそうなのですが・・・魔族が現れたのではないかと町の者は怯えております。」
ここまで説明されると流石に理解できる
私がファイア・イーターを放った時の音だ
「あの「しかし魔族も人騒がせな!!許せませんな!!」」
・・・言いにくい
けれどもここで白状しないのは私の流儀に沿わない
「すいま「しかしあれだけの威力を有する魔族ですよ!我々が束になっても一笑に付し殲滅させられるでしょう。」」
「実は「幸い町の者に被害が無かったのは喜ばしいですが、今度はいつこちらに攻めてくるかと考えると不安で夜もゆっくり休めません・・・」」
駄目だ・・・非常に言いにくい
しかも何故か話始めると別の誰かの声にかき消されてしまう
これはもう言わなくても良いんじゃないか?という気持ちになってしまうが・・・
その考えを改め、私はそっと手を挙げる
「ん?剣聖様どうされました?」
依頼主の商人が私の動作に気づき声を掛けてくれる
「すいません・・・その焦土となった場所ですが・・・私がやりました。」
そう言うと周りに居た全員が驚愕の表情を浮かべる
「すいません・・・先日【ギスファール魔導国】の首都で新たな剣を手に入れたものですから、少し試したくなりまして・・・その時にマッドハウンドが現れたのでファイア・イーターを放つとあんな事に・・・」
若干、ちゃんと説明出来ていない自覚はあったが一斉に視線を向けられるとどうしてもしどろもどろになってしまう
「その・・・剣聖様?」
暫しの沈黙の後に商人が話しかけてくる
「あの焦土は、本当に剣聖様が行ったものですか?」
「場所を確認しておりませんが、ほぼ確実に私かと・・・すいませんでした!!」
そう言って私が頭を下げるとガヤガヤと声が聞こえだす
「剣聖様とは言え、人族であそこまでの威力を放てるのか?」
「しかもファイア・イーターだって言うぞ。ファイア・イーターは剣職の初級スキルだろ?」
「いや待て、さっき首都で新たな剣を手に入れたと仰っていたぞ?!という事はその剣が理由じゃないのか?!」
「なんにせよ人族であの威力を放てるんだ!!魔族相手にも引けを取らないんじゃないか?!」
「いやいや引けを取らない所か、魔族を殲滅させる事だって夢じゃないぞ!!」
そんな声が聞こえ、話し合っていた内の1人が私の前に出る
「あの、剣聖様?その新たな剣は何処で購入されたのですか?宜しければお教え頂けませんでしょうか?」
そう尋ねられ一瞬考えるが・・・
「申し訳御座いませんが今はお伝えする事は出来ません。しかし然るべき時には喧伝できるかと思いますのでお待ちください。それと今回の事は申し訳御座いませんでした。」
そう言って私は再度頭を下げる
一瞬、ゴーガンさんの事を話そうかと考えたが、彼は私の名声と共に、剣も空に届く様な名声を得る事を望んでいた。
彼は恐らくこの様な形は望んでいないと判断して、今回は伝えない事に決めた
そしてそう断りを入れた私に対して商人たちは非常任残念そうな表情をしていた・・・
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