アカノの感動と反動
【ギスファール魔導国】を発って3日経過し、順調に聖国へ向かっていた
「この調子ですと10日あれば【インスラント聖国】に辿り着けそうですな・・・これもインスラン神様のお導きでしょうな。」
「・・・ですね。」
やや遅れてしまったが肯定の返答を行う
【インスラント聖国】へ赴く商人なだけ有り、やはり敬虔な信徒であるらしい
「勿論、剣聖様に護衛頂いた成果も否定できませんがな。剣聖様との巡り合わせもまた、インスラン神様のお導きであるのです。」
「確かに。」
私自身は全く信じていないが余計な軋轢を残す事は本意ではない
肯定の返事をする位は問題無いだろう
「しかし剣聖様もは大変理解力がおありだ。どうですか?【インスラント聖国】で洗礼を受けられては?」
「有難い申出ですが・・・私は弟を探す為に旅している身です。一刻も早く手掛かりを見つけたいと思います。」
私がやんわりと断るも商人の鼻息は荒い
尚も進めようとしてくる
「いえいえ、なればこそですよ。神を信じれば弟様と再会出来る事も早くなりますよ!!1ヶ月ほど滞在する形とはなってしまいますが結果的にはそちらの方が早いかと!!」
「はぁ・・・」
信徒である事を否定はしないが強引に勧誘するのは止めて欲しい
「一度検討してみます。」
私がそう言うと彼は延々と神の素晴らしさを私に説いて来るのだった・・・
◇
そんなやり取りをしているとギスファール魔導国の外れにある町に到着した
「今夜はこの町で宿を取ります。明日の朝に出立致しますのでこの場所で待ち合わせで宜しいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。」
そう言って別れあてがわれた部屋に入る
「ふぅ・・・」
護衛依頼は宿泊できる町や村があれば宿泊される場所が確保されるので有難い依頼ではあるが、相手に気を遣う為に精神的な疲労が強いな・・・
そんな事を考えながら帯剣していた【赤炎】を置いて眺める
この3日間、インスラン神の導きかは定かではないが魔物も盗賊も現れずこの剣の威力をしる事が出来なかった
持った重さや刃の質感は実に私好みではあるのだが、肝心のエンチャントを試す機会がない・・・
誰もいない場所でやろうかとも考えたのだが、10倍位の威力と言われてしまうとどうしても躊躇してしまうのだ
(でも・・・そろそろ町外れで試したい好奇心を抑えるのも限界だな。)
自分の興味をもう抑える事は難しい
私は少し休息を取り町をでてエンチャントを試す事にした
◇
「さて、ここらであれば問題無いだろう。」
数時間後、辺りは真っ暗となった平原に降り立った
人の気配が無い事を確認し【赤炎】を鞘から抜く
一帯が暗闇のこの草原でも剣身の眩さが感じられるほどに輝いている
「さて・・・」
剣を握りながら魔力を放出する
身体に循環する魔力を右手に集中させ、そこから剣にいきわたらせる
すると剣身の赤い宝珠が光りだし、装飾されている金色の文様が輝きだした
(金色の部分は模様ではなく、エンチャントの術式だったのか・・・)
それに関しては私は分からないが美しい芸術品の様だった
そう思った瞬間、剣身に炎が纏い出す
「おぉ・・・」
剣に纏った炎は以前の剣と比べて明らかに熱量が濃密だ
剣に纏われた炎は依然と比べ2回り程大きく顕現され、炎の勢いも止む様子が少しも見当たらない
炎はバチバチと音を出しながら燃え盛っている
「これだけでも想像以上だな。」
そう呟きながら、直ぐ近くにあるそこまで大きくない岩へ近づき、剣先を岩にあてがった
「・・・凄いな。」
岩を斬る訳でもなく、ただ岩に剣先を触れさせただけ
にも拘らず剣先の周りの岩がボロッと崩れ出した
まるで炎のレーザーで一点集中させたかの様な威力だ
こうなるとエンチャントした状態でスキルを発動したくなるな等と考えていると
「グルルルル・・・」とマッドハウンドが30匹程現れてきた
「おぉ!!」
何ていいタイミング!!と心が躍る
マッドハウンドの群れはB級レベルの魔物であり最近の私ならスキルを放たずに相手をする所だが、今だけは非常に都合が良い
「ガァ!!!」
そう吠えながら一斉に襲い掛かって来る
(インフェルノ・イーターだと今までの剣でも威力が過剰になるな。ファイア・イーター位で丁度良いかもしれない)
そう思い剣を構えてマッドハウンドに対して【赤炎】を振り抜く
「ファイア・イーター!!!」
そう言ってスキルを放った瞬間、ドゴーーーーン!!!!と激しい轟音と共に周りを覆いつくすかの様な炎の波がマッドハウンドに襲い掛かった
「・・・・・・」
その光景を見て私はただただ黙るしか無かった
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