ギランの告白と独白
「あいつはこの国随一の鍛冶師でした。称号も【鍛冶王】というレア称号に加えて本人も様々な試みで武具を作製しておりました。周りも、そしてあいつ自身も鍛冶の腕を疑う事は有りませんでした。実際、王族御用達にまで成り上りましたからね・・・」
「・・・」
どこか懐かし気に話始める彼は仲の良かった間柄だったのかもしれない
「けれどあいつはそんな事を鼻にも掛けず、より強い武具を、より頑丈な防具を突き詰めて考えていましたよ。その結果、あいつはより強力な武具としてエンチャントした武具を完成させました・・・その武具は少量の魔力で魔法を使う事と同格の威力を保有する強力な物でした。」
「確かにこの国はエンチャントした武具が有名ですからね。」
そう私が言うとギラン氏は嬉しそうに頷く
「そうですね。そして完成した当時、この国は新しい戦術が出来る、国全体の強さが底上げされると熱狂したものですよ。それまでは魔法力が強い事が有名だったこの国が、単純な武力でも強くなる事が確定した様なものですからね。」
「成程。」
魔導国という名前は元々は魔法が有名なところから来ていたのか・・・
「国中が熱狂し、あいつを挙って褒め称えました。けれどもあいつはそれだけでは満足しなかった。」
「何故ですか?」
そう尋ねると首を横に振りながら「分かりません。」と返答する
「でもあいつは地位も名声も富も興味はありませんでしたからね。もっと強い武具をという気持ちがあったのではないでしょうか?」
そう言いながら言葉を続ける
「そんなあいつが次にした事は1つの武具に複属性のエンチャントを施す事です。私はあまり詳しくないのですが、エンチャントを1つ施すだけでも技術が必要なのに、あいつは複属性のエンチャントに成功し、且つ簡易に出来る技術を確立させたのです。」
「でしたら国中がまた喜んだでしょう?」
「えぇ勿論、国中がお祭り騒ぎでしたよ。だがそれが良くなかった・・・」
「と申しますと?」
私がそう尋ねると眉間に皺を寄せてギラン氏は下を向く
「・・・魔族領侵攻です。」
「なっ?!!」
「増長した王や国民は国境を越えて魔族領に侵攻しました・・・ご存知の様に人族は長らく魔族への脅威と隣り合わせで生きてきました。そんな人族が強力な力を得る事が出来れば行う事は・・・復讐です。」
「・・・ですが、お恥ずかしながら私は今の今まで魔族領を侵攻した国を知らなかったのですが。」
「えぇ、この事は国を挙げて情報規制がとられております。人づてで聞いた事があると言う他国の人族はいるでしょうが、国として認める事は決してないでしょう。」
「・・・」
何故か?
それは私でも理解できる
「つまりはそう言う事です。」
「ですがそれと、あの人がエンチャントしなくなった理由とはどう結びつくのですか?」
「彼には1人息子が居ました。陽気で気さくな奴でしてね、それでいて【剣人】であるにも関わらず【剣豪】に近い実力を有しておりました。それに鍛冶をしている父親を心から尊敬している良い奴でした。」
そこまで聞いて何も言えなくなる
答えが理解できてしまった
「勿論、あいつはそんな息子を大切にしていました。魔族領侵攻の際には自分の傑作とも言える武器を持たせて見送っていました。だが・・・1ヶ月も経たない内に息子は戻ってきました。手には折れた剣を握りしめて、ね・・・」
「あいつは戻って来た息子の知り合いに聞いて回りました。その結果・・・複属性エンチャントを施したアイツの傑作は魔族に一太刀喰らわせると同時に破裂し・・・息子は・・・」
ギラン氏はそう言いながら目頭を押さえる
私はそんな彼に言葉を返す事が出来なかった・・・
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