【間章】真祖の会議と合議
私は手に持っていたカップに入っている飲み物に口をつけるのを止めた
「・・・やれやれ、君たちは暇なのかい?」
そう言いながら私は気配する方へ視線を向ける
そこには旧友でもあり敵でもあり同格の存在でもある男女が立っている
いや、男というには体格が立派過ぎる正に『龍人の姿を模した化物』と言った容姿だ
筋肉は盛り上がりすぎるほどに盛り上がり、猛々しい角が天に向かって反り返る
目は爬虫類の様な形をしているが噴出している魔力で目の奥が見えないという圧倒的な魔力を内包している
女は・・・いや女児と言った方が正しいだろうか?
真白の髪がウエーブされ足元にまである長さとなっている
髪だけではなく、肌、口、目全てが真白となっており神々しいという言葉が最早陳腐に聞こえる神々しさだ
彼女も魔力だけで凡人であれば殺すことすら可能だろう
「機嫌が良いみたいだな、【人魔の真祖】ブロウド。貴様の顔なんぞ見たくもなかったが、ファスミーヤが呼ぶから来てやったぞ。」
「私はどちらも招待した覚えが無いんだけどね・・・まぁ良く来てくれた【精霊の真祖】である【ファスミーヤ】、【龍の真祖】である【ソテルアス】。君たちを歓迎しよう。」
そう言って椅子と飲み物を2つずつ出す
彼らはその椅子に腰かけて飲み物に口をつけて出した
「で?この世界の【真祖】が集まって何の話をするつもりかな?最後に集まったのは・・・」
「2000年前になる。」
抑揚のない声でファスミーヤが回答する
「そっか、もうそんなになるんだね。で?ファス?私と彼と君が介した理由は?」
「そうだ。お前が集めたのだから理由はあるだろう?」
ソテルアスがそう尋ねるとこくんと頷く
「ブロウド・・・死国は滅亡する。」
「ふーん・・・」
その言葉を聞きながらカップに口をつける
「この300年、均衡されていた魔族領が急激に動き出す可能性がある。それによってヴァンパイア族と精霊族のハーフであるレイス族が滅亡するわ。あなたはなにも思わないの?」
彼女はそう言って私を責め立てる様な口調でたずねてくる。
「思わないねぇ・・・」
そう言ってから言葉を続ける
「正直、生命体が数百年停滞し続けること自体が異常だ。そこには進化も変化もない。私の眷属が多いからそう思ってしまうのかもしれないが私の眷属は少し間引かれた方が良い気がするよ・・・それにより変化が期待できるからね。それに・・・」
「・・・それに?」
「あぁ、それに死国の【魔王】は醜悪だ。精霊の根源を有しているのかが疑問な位に・・・容姿、心根、能力、知能の全てが低水準といえるだろう。君にとってもあの様な【魔王】の【真祖】を担うのは虫唾が走らないかい?・・・私はそうだけどね。」
そう告げると彼女は黙りこくってしまう
「・・・ブロウド、貴様にもう1つ尋ねるべき事がある。」
ソテルアスがそう言って口を開く
「貴様がどうでも良いと囀るならば死国は儂にはどうでも良い。しかしだ、その死国を追いやる国の【魔王】の姿かたちが見覚えがあってな・・・」
「・・・姿かたち?仮面をつけてローヴを纏っているってことかい?」
「あぁそうだ。貴様が忌々しくも世界に我が物とした時の物だ。・・・貴様、何をした?」
その言葉に少し笑みがこぼれる
そうか・・・彼はもうそこまで動いているのか・・・
「・・・特に何も。殺されていた人族を変生させ、少しだけ鍛えてやっただけさ。」
その言葉に2人とも目を見開く
「あ、あなたが鍛えたというの・・・・?」
「い、いやそれより貴様が変生を施しただと・・・?!
彼らの驚きには充分納得ができる
だからこそ頷いて言葉を返す
「あぁそうだよ、彼は僕の依り代だ。このままより強くなって貰い魔帝国を目指す事を課題に出している。」
「・・・だったら最低数国は彼の手に落ちる可能性があるわね。」
「うむ。ここ数百年が安寧的であったのだ・・・今更この安寧を「黙れ。」」
僕はソテルアスの不快な講釈を遮り2人を威圧する
「数百年も動きがない世界が安寧だと?互いの国々を警戒しながら生きているのが安寧だと?我らは真祖だ。直接介入することはせずとも手を貸す事くらいは貴様らも行っているだろう・・・」
「「・・・」」
「改めて宣言しよう。彼が他の【魔王】たちに敗れるのは構わない。しかし貴様らが直接介入し不利益を与える事があれば・・・貴様らと私は対峙する事になるだろう。」
私がそう告げると緊張した面持ちでこちらを見つめてくる
「・・・本気?」
「勿論だ。」
「世界がなくなるぞ?」
「私にとってはどちらでも良い。貴様らにとっては不利益になるだけだ。」
そう言って威圧感を消しながら言葉を続ける
「何、君たちが直接記入しなければそんな事にはならないさ・・・さ、もう一杯どうだい?」
そう言いながら2人に飲み物を注ぐ
2人の表情には少し陰りがったが、私の心の内は晴れ晴れしている
(クロノ君が魔帝国に到達するのもそう遠くないかな・・・)
そう思いながらティーカップに口をつけるのだった
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