1話
──時々、生きる意味とは何なのか考える。
僕達、人間はどうして生きるのか。母親の胎内に命を宿し、生まれ、成長し、死んでいく。
命はループしているように見える。
どこかで人が死に、肉体から魂が離れ天に昇り、また別のどこかでその魂が生まれる。
輪廻転生。
僕はそのように考えてしまう。
しかし、そんなものは信じられないだろう。
でも、僕はそう考えた。考えてしまった。
目の前に起こった信じられない光景に何度も瞬きをし、目を擦った。
『お兄ちゃん!』
消えたはずの声が頭の中でぐるぐると回る。
もう僕の耳に入るはずもない声が聞こえたように感じる。
何度も頭を振っても離れない。
目の前の──病院のベッドで考え事をするように窓の外を眺める少女の姿が。
似ている。
似ているのだ。
髪も、目も、鼻も、口も、考える仕草も、癖も。
そして──死んでしまうことも。
見てしまった。見てはいけなかった。見たくなかった。
それでも僕は目を離せなかった。
離したくなかった。
「どうかしましたか?」
そう聞かれるまで僕はずっと見ていた。
「い、いやなんでもない……です。ごめん……なさい」
そう言ってそそくさとその場を立ち去った。
僕は暴れる心を抑えるように胸に手を当て服を握りしめた。
なぜ。なぜ。なぜ。
なぜ、彼女がいるのか──