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第2回 かざやん☆かきだしコンテスト!  作者: 秋原かざや
■リメイク部門 ●現代ファンタジー
27/35

無理やり魔法少女にされました

タイトルイラスト:相内 充希さま

挿絵イラスト:那々月さま

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


――それは本当に突然だった。


「魔法少女になりませんかぁ?」


この一言で全てが狂ったのだろう。

運命の歯車と言うか、そういうものが。


結衣にとって当たり前の日常を壊され、普通とは違った女の子にされてしまった。

常識なんて鼻で笑い、有り得ない事を平気でやってのける――“魔法”のような力を手に入れてしまったのだ。


そうなった原因は、多分アレではないだろうか。


時は、数時間前に遡る……


☆☆☆


結衣はその扉を開けた。

その扉の先には、結衣にとっての天国――図書室がある。

そこを真っ直ぐ歩いて、結衣は窓の外を見やる。


結衣の通っている小学校――○○市立、咲姫小学校。

その学校はグラウンドに植わっている、天まで高く伸びたメタセコイアが特徴的だ。


結衣は視線を変え、図書室の中を見やる。


結衣の学校の図書室は結構変わっていて、魔導書やら妖についての本やら。

オカルト的な本が沢山置いてある。


初めは結衣も疑問に思っていたが、結衣がオカルト好きなだけあって、結衣にとって宝物庫のような場所になりつつある。

そのため、あまり深くは考えなかったのだ。


――この時から既に運命の歯車とか、そういうものが廻っていたのだろう。


しかし、その時の結衣はそれに気付かず、いつも通りオカルト系の本を漁っていた。

すると――


「な、何……?」


何か軽い物が、床に落ちたような音がした。

図書室の本はいつも、図書委員の人達が綺麗に並べてくれているのに。


不思議に思った結衣は、音のした方へそっと静かに歩いていく。

音を立てないよう、慎重に足を運ぶ。


結衣以外誰もいないのだから、物音がするはずがないのだ。

そして音のした場所の近くまで来ると、本棚の陰からチラッと顔だけを向けてみる。


しかし――


「なんだ……何も無いじゃん……」


そう、落ちていたであろう“何か”も、本棚の変化も、何も無かった。

だが、それが却って結衣の好奇心をくすぐった。


――普通なら気味が悪いと思うだろう。

しかし、結衣はオカルト好きなだけあって、ホラー系も割と好きなのだ。


だが、これでは音の正体を調べることが出来ない。

どうしようか……結衣がそう悩んでいると、下校時刻を報せるチャイムが鳴った。


「あ、やっば!」


結衣はそう言うと、急いで帰りの支度をし、慌てて図書室から飛び出す。

――結衣は急いでいたせいか、本棚の陰に潜んでいたモノに……気付くことが出来なかった。


☆☆☆


夕方頃――夕陽がギリギリ沈むか沈まないかぐらいの、闇が空の大半を占めている時間帯。

そんな時間帯に帰宅すると、お母さんが暖かく結衣を迎えた。


お母さんは結衣の好きなシチューを作って、結衣の帰りを待っていたようだ。

結衣は照れくさいと思いつつ、お母さんの優しさに甘えた。


少し子供っぽいかと結衣は思ったが、まだ小学生なのだ。別に甘えても誰にも文句は言われまい。

そう結論付けて、シチューを頬張った。


夜ご飯を食べ終え、お風呂に入ると一番にシャワーを浴びる。

その時、鏡に結衣の姿がぼんやりと写る。

雪のように白い髪に桜色のグラデーションがかかっていて、瞳は深い緑色をしている。


――結衣は自分の姿から目を逸らす。


結衣はあまり自分の姿に自信を持っていない。

だが、結衣はフルフルと頭を振り、余計なことを考えないようにする。


温かなシャワーを浴び終わり、湯船に肩まで浸かろうとすると――


「え、なにこれ」


変な……いや、何か固い感触のものが湯船の底に沈んでいるのがわかった。


今日は入浴剤を入れているので、お湯は透明ではなく、ラベンダーのような紫色をしている。

だから、結衣は気付くことが出来なかったのだ。


そして手探りで探し当て、手に持つと――何やら本のようだった。

表紙には何も書かれておらず、シンプルな作りになっている。


「――は? え、えええ!? なんで本が此処に!? しかもびしょびしょで読めなくなってるんじゃ――……」


結衣は突然のことに驚き、飛び上がってしまった。そして悲鳴を上げたが、最後まで言わずにそこで言葉を切った。

何故かと問われれば、それは――


「な、なんで……濡れてないの?」


そう、湯船の底に沈み、たっぷりと水を含んでいるであろうその本は――

まったくと言っていいほど、濡れていなかったから。


『なんで濡れてると思ったんですかぁ?』と嘲笑っているようなその本は、水が染み込んだ痕跡すら見せていない。

それどころか、汚れが全くなくて不気味なぐらいだ。

どういうことだろう……と結衣は不思議に思っていると、本のページがひとりでにパラパラと捲れていった。


「ひっ!」


結衣は恐怖と混乱で気絶しそうになり、本を再び湯船の中へと落としてしまった。

しかし、気絶する前に本の動きがパタリと止み、ページの中身を見せつけるようにして結衣の手元にふわりと浮いて戻ってくる。


なんとも言えない恐怖が結衣を襲うが、一方で好奇心が芽生えてきているのも否定できない。

恐る恐る開いているページを読んでみると、そこには――


『願いを。大いなる願いを聞かせよ。さすればその願い、叶えてみせよう』


……と。

何故か上から目線な文章がでかでかと書かれているだけだった。


「よし、無視しよう」


結衣は現実逃避をしようと考えた。

そして、ほかのページを捲ろうと試み、指を動かすが、何故か開かない。

少し力を入れてみるが、びくともしない。


――……これは、どういう状況なのだろう。

結衣は困惑しながらも、再びあのページへと目を走らせる。


……つくづく胡散臭い文章である。


結衣はオカルトを好んではいるがそれはあくまで物語の中だけであって、自分自身の身に起きてほしいとは思っていない。


だが、しかし……と、瞳を揺らして――


「ま、まあ? 言うだけならタダだし? 言っても、ねぇ?」


そわそわと、挙動不審になりながら本を見つめる。

そして欲望に勝てず、結衣は願い――望みを発した。


「私の、願い……は――」


一瞬の間。シーンという音だけが鳴り響く静寂。

――しかし、それは突如破られた。


結衣は首を傾げ、不思議そうにキョロキョロと辺りを見回す。

すると、本がひとりでに空中に浮かび、光を放った。


全てを包み込むような鋭い光の中。

結衣は目を開けていられず、腕で目を隠しながら光が消えるのを待った。


暫くすると光が止み、ゆっくりと目を開けるとそこには――


一冊の本の代わりに、一本のステッキが浮かんでいる。

ステッキは結衣と対峙するように浮かび、見定めているような気配を感じさせた。


異常なまでの威圧感。

ゴクリと唾を飲み込むと、そのステッキは口を――いや、口などないのだが……口を開いた。


「いやっふ~! そこのあなた! 魔法少女になりませんかぁ?」


――……なんだかよくわからないほどテンションが高い。


「あの~、その目……やめてもらっていいですかぁ……? なんだか汚いものを見るような目をしてますねぇ……」


さっきとは裏腹に、呆れ気味に口を零す。

ステッキの指摘通り、結衣はステッキを――汚物を見るような目で見ている。


しかし、そんなことは気にしていないのか、落ち着きなく風呂場を飛び回っている。


結衣は頭が混乱していて、言いたいことが沢山あるのに出てこない。と言うか、頭が状況に追いつかない。

そんな結衣に見兼ねたのか、ステッキがまた結衣の目の前で止まり、言葉を発する。


「えっと……とりあえずあなたの名前を聞かせていただけますかぁ?」


突然のことが起こりすぎて、結衣にはツッコむ余裕がなかったのかもしれない。

だから結衣は問われた通り、自分の名前を小さく呟くことしか出来なかった。


「……椎名、結衣……」

「なるほどなるほど! では結衣様、私を手で掴んでくれますかぁ?」

「え……なんで?」

「いいから早くっ!」


強引に急かされ、考える間も与えないための策略だろう。

……と、薄々勘づいてはいたが、勢いに押されてしまい、拒否することさえできなかった。


おずおずと手をステッキへと伸ばし、掴んだ。瞬間――

全身が光に包まれ、風呂場にいたはずが、何故か煌びやかな背景に変わる。


「えっ……えええ!!」


ステッキをぎゅっと握りしめ、胸の前に持ってくる。

さっきから困惑と恐怖に包まれて、結衣は頭がおかしくなりそうだった。


結衣の全身も何やら白い光を纏い、まるで肌を覆い隠しているように見えた。


「うっふっふ。これであなたは、魔法少女になったのでぇす!」


ステッキが何やら変なことをボヤいていたが、今の結衣にはそれはどうでもいい雑音でしかない。

そして――光が止み、結衣は自分の体を見た。


「へっ!? 変身したの!?」

「いえーす!! いいですねぇ、素敵ですよぉ」

「わ、悪くはない……けど……なんか、あざとすぎるような……」


ひらふわなスカートに右の腿にガーターベルト、そして極めつけに――


「幼稚園の時ですらこんな髪型しなかったのに……」


ツーサイドアップ、という髪型でまあ要するにアレだ…………


「こ、こんなの無理いいい!!」


結衣は近所迷惑も考えず、思わず全力で叫び出してしまった。

だが――


「ふう、危なかったですぅ……音量調節魔法を使っていなければ、今頃お母さんにお風呂の中で魔法少女のコスプレをする変な子だと思われる所でしたよぉ」

「だからそれってあなたのせいだよねぇ!?」


さらっと魔法を使ったというステッキを受け流して、結衣はツッコむ。


「てへっ☆ これは失礼を……では、本題に入りましょうかぁ!」

「……へ?」


どうやらこれから――とんでもないことが待っているようだ。

……結衣は無意識に、一粒の涙を流した。



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