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チートなんていりません!

 


 異世界転移に、異世界チートは付き物だ。


 無限にレベルが上がるチート。

 誰も持っていないようなユニークスキル。

 世界で一番の魔力の量を持っていたり。

 何なら魔王でさえも一撃で滅ぼせる力を持っていることも。


 非力な現代人が異世界で生きていくための一つの力として、異世界チートは既に当然のものになりつつある。


 ――けれど、思うのだ。

 異世界を生きていくのに、異世界チートなんてものは必要なのかと。


 それはまあ、魔王を倒せだとか言われたなら、それは必要になるだろう。

 絶対的な力を持つ者と対峙するには、それと同等かそれ以上の力が要るのは明瞭だ。

 そのための異世界チートなら、甘んじて受け取ることも悪くない。


 何せ夢にみるような万能の力だ。

 立ちはだかる敵を意にも介さずに打ち払い、周りからは英雄だと崇められ、女の子にはモテモテ。

 正直なところ、羨ましい。


 けれど、僕はやっぱり、そんなものは受け取れない。


「……え? 異世界チート要らないの?」


「はいっ! 要りませんっ!」


 なんか真っ白の世界に佇んでいる、白い髭をたっぷり蓄えた神様が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。


「……話、聞いてた?」


「もちろんです! 今から僕が飛ばされる異世界が危険なんですよね! 魔王が居て、魔物が居て、明日生きられるかどうかも分からないような危険な世界なんですよね!」


 ついさっき、僕は目を覚ますとこの部屋に居た。

 昨日は普通に高校から帰って、風呂に入って、ご飯を食べて、勉強して寝た。それは覚えている。


 それで、目を覚ますとこの部屋に居た。

 目を覚ました僕をこの自称神様が迎えてくれた。


 神様は話をしてくれた。

 どうやら僕の住んでいた世界と全く別の世界が、壊滅の危機に瀕しているのだとか。

 それを阻止するために、若くて元気のある僕を呼び出したのだとか。


 それから話は、その世界は危険だから異世界チートをあげるよ、という話になった。

 僕はそれを丁重にお断りした。

 今ここ。


「え? 何言ってるか分かってる? 自分の言葉分かってる? めっちゃ危険だよ? 危ないよ? 下手すりゃ死ぬよ? 下手しなくても死ぬよ?」


「分かってます! だから要らないって言ってるじゃないですか! この分からず屋!」


「分からず屋って神様のことっ!? それと『だから』の使い方がよく分からないんだけどっ!? 君、国語の点悪かったでしょっ!?」


 神様はお爺ちゃんらしくない、若者みたいなテンションで驚いた。

 それを見て僕も驚いた。結構、精神年齢は若いのかな。

 良いことだ。病は気からって言うし。長生きするんだろうな。


「えっと、どうして異世界チート要らないの? 普通欲しがると思うんだけど。……あっ、もしかしてチートって何か分からない? 変なおじいさんに変な物押し付けられたと思って断ってる?」


「いえ! 分かってます! 妹にすすめられて似たような本を読みました! あれですよね、もう何なら何でも出来ちゃう反則的な力的なやつですよね!」


「ああ、分かってるんだ。分かった上で断られてたんだ。……まあ、どっちにしろちょっと神様傷付くんだけど」


「繊細なんですね」


「……優しく扱ってね?」


 ううっと胸を抑えながら、神様は泣きかけていた。

 ごめんなさい、神様。

 悪気は無かったんです。


「ズルいと思うんです。異世界チートって」


「……ズルい?」


「今までその世界で一生懸命生きてきた人に失礼かなって。その世界で生きるなら、僕のその世界で強くなるべきだと思うんです!」


 ずっと、違和感があった。

 異世界チートをもらって周りに認められていく物語の主人公は、本当にその世界の一員になれているのかなって。


 異世界チートはとどのつまりルールに反した力で、異世界転移した主人公はどうあがこうと異世界人。

 どっちも、本来その世界にあるべきではない異物だ。

 だからこそ、どれだけそんな物語の話を読もうと、共感できなかった。


「僕は異世界の人達と一緒に強くなりたいです! その世界の一員として、皆さんと仲良くなりたいです!」


 僕がそう言うと、神様はハッと驚いた表情を浮かべて、その後笑った。


「クソ真面目なんだね、君」


「野球部の顧問にそう育てられました!」


「……そこは両親とかでいいんじゃないの? 確かに何で丸坊主なんだろうって思ってたけど、野球部なのね」


「はい! マネージャーです!」


「……マ、マネージャーかぁ」


 マネージャーも丸坊主にしなきゃいけない。

 別に髪形気にしなかったから丸坊主しました。野球部の仲間っぽいから嬉しかった!


 そんな感じであと何個か簡単な受け答えをしていると、神様は何かを決断したようで数回頷いた。


「……分かったよ。決めた。君の希望通り、異世界チートは無しで君を異世界に送ろう。でも、条件がある」


「条件ですか?」


「異世界チートをあげるってのが神様の仕事だからさ、君が受け取ってくれないと神様困るんだよね」


 なるほど、それは分かる。

 僕も部員にスポーツドリンクを渡そうとして断られたけど、監督には無理矢理飲ませてこいって言われたことがある。

 任された仕事は果たさないとね。


「だから異世界チートの代わりに、君には好きな時に好きな願いを一回だけ叶えられる権利をあげる。困ったときは好きな願いを願えばいい。後から異世界チートが欲しくなったら、言ってくれればあげるからね」


「なるほど! 別に要りません!」


「いいから受け取ってよ。それと、神様も君についていくから。言葉は元から通じるようにしておくけど、色んな事は神様が教えるからね」


「分かりました!」


 なんかよく分からないけど、神様が困ってるみたいだったから頷いておいた。

 チートを押しつけられるわけでもないみたいだし、まあもらっといてもいいかな。


「オーケー。じゃあ行こうか。レッツ異世界!」


「あっ、一つだけ聞いていいですか? どうすれば家に帰れます? 魔王を倒せばいいですか?」


 そういえば聞いてなかった。

 異世界転移とセットでついてくる、元の世界に帰りたい問題。

 お母さんもお父さんも妹も居るし、心配させっぱなしは良くないよね。


 でも、僕がそう聞くと、神様は困ったような表情を浮かべた。


「ああ、その事なんだけどね。……君、死んじゃったんだよね」


「僕、死んだんですか!?」


「うん、死んだ。だから神様、君を選んだんだよね。向こうの世界で居なくなっても困らないから」


 神様から教えられた急な事実に、僕は目を剥いて驚いた。


「じゃあ、僕は元の世界には戻れないんですか? その一つのお願いを使ったりしても?」


「申し訳ないけど、それは無理。死んだ者をその世界で生き返らせるのはダメなんだよね。今の君はただの例外」


「分かりました! 諦めました!」


 無理なものは仕方が無い。それに、別の世界でも生き返らせてくれるなら感謝するしかないだろう。

 そんな事を考えて僕は神様にお礼を言ったら、神様はまたハハハと笑った。


「……そういうところ、君の良いところだね」


「褒められた! ありがとうございます! 神様もお髭が素敵ですね!」


「おっ、分かるかい? 君ってやっぱり良い奴だね」


 僕と神様はそう言って笑いあった。

 元の世界、というか生前では変な奴だと笑われていた僕を、神様は良い奴だと笑ってくれた。


 神様とは良い友達になれそう!


 こうして、僕と神様の世界を救う旅が始まった!



感想評価いただけると喜びます。


次回、この女の人なんだかんだで仲間になるやつやん……です!

お楽しみに。

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