フィリップ・ルミナーレ 2
フィリップ視点です!
フィリップ好きな人って少ないので、需要無いかもですが……
レティシアとアルフォンスが、穏やかな時を過ごしていた頃。
フィリップは、エドワードと共に、父である国王の話を聞いていた。
「それは、本当なんですか……! 父上」
誰に対しても、尊大な態度を崩さないフィリップだが、例外はある。それが、今目の前にいる、自分の父であり、国王でもある人だ。
「ああ、本当だ」
フィリップは平静を装うのに必死だった。
まさか、自分の父親に――がいたなんて。
そして、――もいるとは。
つまりそれは、自分の――になるのではないか。
そんなこと、何故今まで誰も教えてくれなかったのか。
フィリップは、必死で動揺を抑えようと、自分を落ち着かせた。
エドワードは、フィリップと対称的に、静かに国王の話を聞いていた。何も考えていないのだろうか、とフィリップは思う。
「そ、それでどうするんですか」
「引き取るに決まっているだろう」
‘‘彼女’’は、今まで孤児院で暮らしていた。――歳まで孤児院で暮らしていた者を、今頃引き取り、学習させてもちゃんと身につくのだろうか、とフィリップは思う。
だが、王の決定に逆らえる者はそういない。ましてや、‘‘彼女’’は――――――――――のだから、異論を唱える者は、一人もいないだろう。
「引き取ってしばらくしたら、――――――――――――――つもりだ。しっかり面倒を見てやるように」
フィリップは自分の心の中で、怒りがこみ上げてくるのを感じた。フィリップは、物心ついた時から現在まで、国王ーー自分の父に、面倒を見てもらった記憶などない。接する機会が少ないのは、忙しいからだと理解して、フィリップは我慢していた。
だが、ある時気付いたのだ。父は、自分のことを愛していないと。
時折一緒に食事をしても、目を合わせてもくれない。自分が頑張ったことを報告しても『ああ』『そうか』としか言わない。失敗したことを知られた時だけ、厳しく叱責される。
そしてフィリップは、自分の父に父としての役割を期待することをやめた。
それなのに。
今、この男は『面倒を見てやるように』とフィリップとエドワードに言ってきた。
自分はやろうとしなかった事を、自分の息子にやらせるのか、とフィリップは、自分の怒りを鎮めるのに必死だった。
だがエドワードは、
「もちろんです、父上」
と笑顔ですぐさま言ってのけた。
フィリップと同じ目にあわされてきたにも関わらず、だ。
遅れてフィリップも
「もちろんです」
と努めて平静に言葉を発した。
エドワードは何を考えているのか。外面を被っている時のエドワードの考えは、フィリップには全くもって理解できない。
エドワードの外面は、エドワードの従者であり、アルフォンスの兄である人物が教えた技術だ。
あまり頭のよくないエドワードに、どうやって教え込んだのかフィリップは知らないが、エドワードの外面は、日に日に上手になっている。今では、共に育ってきたフィリップでさえも、感情が読めない程だ。
エドワードの従者は、エドワードに様々なことを教えた。エドワードが今Aクラスにいるのも、従者のお陰だ。
エドワードは元々、Aクラスに入れる程頭が良くなかった。だが、エドワードの従者に彼が付くようになってから、どんどん頭が良くなっていった。
エドワードに一体何があったのか。
それを知る者は、殆どいない。エドワードとその従者、そしてエドワードの側についている者しか知らない事だ。
つまり、フィリップは知らなかった。最近では、殆どエドワードと会話をしていないので、エドワードに聞くこともできない。
その何があったのか分からないエドワードは、国王に笑顔のまま、質問をし出した。
「‘‘彼女’’は、いつ頃こちらに来られるのですか?」
「なるべく早く、と言っておるので直ぐに来るだろう。だが、色々教え終わるまでは表に出さないつもりだ」
「では、―――――――――――――のは、いつ頃に?」
「それはちょうど、――――――に合わせる予定だ」
「成る程、ありがとうございます」
フィリップは、自分の父と弟の遣り取りを、ぼんやりと眺めていた。
今朝、エドワードが話し掛けに来てくれたことに喜んでいた気持ちは、とっくに何処かに消えてしまっていた。
今はただ、『これからどうなるのか』という不安しかない。
きっと、社交界は大騒ぎになるだろう。
誰もが、‘‘彼女’’に興味を示すに違いない。
‘‘彼女’’を狙う者も出てくるだろう。
その時は、まだ見ぬ‘‘彼女’’を守れるのだろうか、とフィリップは不安になっていた。
そういえば、とフィリップの脳内に疑問が浮かんだ時、国王は退席しようとしていた。
慌ててフィリップは、国王に問う。
「そういえば、‘‘彼女’’の名前は何と言うのですか」
「ああ、言うのを忘れていたな。‘‘彼女’’の名前は――――」
フィリップは、もう驚きを隠せなかった。
国王が退席したのにも気付かなかった。
何故なら、‘‘彼女’’の名前が、フィリップの想い人と、全く同じ名前だったからだ。
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