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 レティシアは、教室にいる人たちの中でただ一人――ではなく、ステラもレティシアの傍にいたが――野次馬に加わらず、椅子に座って考え込んでいた。


 これは、確か‘‘彼女’’に関係する事だ。


 レティシアはそう確信していた。


 何故レティシアがそう思ったかと言うと、以前のこの時期にも同じような事があったのだ。


 以前も、エドワードが二年のAクラスを訪れ、フィリップに『国王が早く帰って来るように言っていた』と伝えに来た。

 今のこの状況と全く同じだった。違う点を強いて挙げるならば、レティシアがフィリップの近くにいない事と、レティシアの傍にステラがいる事ぐらいだ。

だが、それはレティシアの行動によって変化したに過ぎない。


 そして、この国王の『話したい事』もレティシアは、以前と同じだろうと考えた。きっと‘‘彼女’’が発見されたのだろう、と。


 ‘‘彼女’’と会う日が近づいて来ている。


 その事実を、思いがけない形で知らされたレティシアは、恐怖で顔が真っ青になった。


 レティシアは以前と違う行動を取っている。


 だが、もしまた‘‘彼女’’を傷付けてしまったら?


 そしてまた、あの牢獄に入れられてしまったら?


 また、家族にまで迷惑をかけてしまったら?


 今、自分はステラと一緒にいる事が多いが、ステラとステラの家のアーノルド家にまで迷惑をかけてしまったら?


 そしてアルフォンス。もし、彼にも迷惑をかけてしまったら……


「……シア様、レティシア様!」


 悪い想像ばかりしていたレティシアは、誰かに声を掛けられ、ハッとなった。


「ごめんなさい、ちょっとボーッとしていたわ」

「大丈夫ですか? 顔色がよろしくないようですけど……」


 声を掛けてきたのは、ステラだった。ステラに心配を掛けないようにと、レティシアは笑顔を作る。


「ええ、大丈夫よ。ちょっと考え事をしていたから、顔色が悪く見えただけよ」

「でも……」

「本当に大丈夫よ。心配しないで」


 そう言って、レティシアは立ち上がり、野次馬の中に加わろうとした。

 だが、レティシアの手首を掴む者がいた。ステラだった。


「無理しないでください、レティシア様! レティシア様が無理してるって、私でも分かりますよ! だっていつもの笑顔と全然違いますもん!」


 レティシアは目を大きく開いた。驚いたのだ。レティシアの作り笑顔を見破る事が出来たのは今まで家族しかいなかったのに、と。


 ステラの言葉は続く。


「私はレティシア様と親しくなって、まだ少ししか経っていませんけど、レティシア様の事を少しは分かっているつもりです! レティシア様は、時々、何か悩んでいる事がありますよね? 相談に乗ることは出来ないかもしれませんけど、無理して笑わないで欲しいんです!」


 レティシアは更に驚いた。ステラは、レティシアが‘‘彼女’’の事で悩んでいたのに気付いていたのだ。何故悩んでいるか知らないのに、何も聞かずに静かに見守っていてくれたのだ。そんなステラの優しい心遣いに、レティシアは思わず感極まって、抱きついてしまった。


 いつのまにか、野次馬達はフィリップとエドワードの方ではなく、二人の少女の美しい友情に見入っていた。


 その事に気付いたステラは、レティシアの腕の中で慌て出す。先程までステラは、レティシアに気持ちを伝えるのに夢中で、自分が大きな声で喋っていた事も、周囲の視線も気にしていなかったのだ。これは、周囲を常に気にしているステラにとって、らしくない行動だった。

 レティシアに抱きしめられてから、ステラは周囲の人に見られている事に気付き、自分の行った事について振り返り、顔が真っ赤になった。そして、今すぐ逃げ出したくなった。


「れ、れ、レティシア様……。あの……は、は、離してください……」


 レティシアは、そんなステラも、周囲の視線も気にせず、ステラの耳元で「ありがとう、ステラ」と囁いた。

 

 先程まで、悪い想像ばかりして気持ちが落ち込んでいたいたレティシアは、ステラのお陰で元気になる事が出来た。


 まだ、‘‘彼女’’と会う日までは時間がある。


 ‘‘彼女’’と会う事になるその日までに、自分の出来る限りのことをしてみよう。


 もし、また牢獄に入る事になっても、家族やステラ、そしてアルフォンスに迷惑がかからないように……。


 レティシアにとって、アルフォンスはどんな存在なのか。その事に、レティシアはまだ気が付いていない。






お読みいただきありがとうございます。

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