3 ホント祭りでの化けっこ勝負
その日の逆さ虹の森では、昨日行われたホント祭りの話でもちきりでした。
ホント祭りというのは、とある場所で本当の事ばかりを言うだけのお祭りです。
でも、その『場所』というのがくせものなのです。なにせ嘘をつくとそこにある根っこに足をからめられるという『根っこ広場』で行われるのですから。
今日のコマドリさんの歌も昨日のお祭り関連の事だろうとみんな考えていました。
♪今日はホント祭りでの化けっこ勝負のお話よ~♪
題材は予想通りでした。しかもそこで行われたその『化けっこ勝負』はみんなの知るところになっていたのです。みんなはわっと歓声をあげました。
ただ一匹、キツネ夫人を除いては。
「お前の歌だよ」
つんつんと彼女の夫のタヌキ氏がつっつきます。
キツネ夫人は恥ずかしそうに小さく笑いました。
♪タヌキさんとキツネさんは仲良し夫婦
いつも楽しく暮らしてる
ある春の日、タヌキさんはひらめいた
キツネちゃん キツネちゃん ゲームをしましょう!
いいわ でもどんなゲーム?
明日開かれるホント祭り
お互いに化けて参加しよう
でも相手には絶対に
何に化けるかは言わないの
面白そう とキツネさん
先にバレた方が負け とルールを作った
それいいね とタヌキさん
負けたら夕飯作り とルールを作った
はりきったキツネさん
はやくから根っこ広場に向かった
広場は動物だらけ
きゃーきゃーと騒いでる
どこにいるのかしら
キツネさんはあたりを見回した
その時聞こえて来た声
あーん あーん と泣いている
見てみるとウサギさん
お弁当を落としちゃったよ
お人好しなキツネさん
こんな事は放っておけないの
手伝ってあげるとかけ寄った
ありがとう とウサギ言う
あなたはやさしいネコさんね
そうですよ とキツネ言う
ぼくはやさしいネコさんだよ
でもそこは根っこ広場
嘘をつくとつかまってし・ま・う・の
根っこは見事にネコさん
いいえ キツネさんを捕らえたわ
悲鳴をあげるキツネさん
楽しくほくそ笑むウサギさん
あばれるキツネさん
近づくウサギさん
「あなたはキツネさんですね」
ちがうわ 私キツネじゃない
根っこはさらにからみつく
ちがうの 私キツネじゃない!
まわりのみんなが振り返る
いたいわ タヌキさんどこ?
ついにキツネさん泣きべそかいた
「ここだよ」
いつものやさしい声
振り返ると……ウサギさん
この勝負は
タヌキさんの勝ちだね♪
コマドリさんの歌が終わった途端、その場は大爆笑に包まれました。
「もう! コマドリさんは!」
文句を言うキツネ夫人ですが、顔はまんざらでもありません。実際、昨日も、今日の歌も、とても楽しかったのですから。
「来年のホント祭りも楽しみだね」
ぽつりとクマくんが言います。
その言葉に、その場にいた全員がうんうんと頷いていたのでした。