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1 クマさんとおんぼろ橋

♪今日は頑張ったクマさんのお話よ〜♪



「ほら、あなたよ!」

 キツネ夫人がからかうようにつんつんとクマくんを突っつきます。

「ぼ、ぼく? な、何の話かなぁ?」

 対してクマくんは不安そうに身を縮こまらせます。

 それもそのはず。クマくんにはコマドリさんの歌にしてもらうような、おまけにその歌で言われているような『頑張った』エピソードなど思い当たらないのです。

 コマドリさんはふふっと笑って先を続けました。



♪ある日、リスさんが言いました

 どうしてあなたは臆病なの?

 あなたはこんな、大きい体をしているのに


 それに、クマさんは答えました

 怖いものは怖いのだ

 小さい君はぼくよりずっと強いのだと


 そんなはずない

 そうリスさんは言うのです

 あなたは大きな子。だから頑張れる


 そうしてリスさんは思いつく

 とても楽しいゲームを


 クマさんの苦手なおんぼろ橋

 それをわたってみろと


 でもクマさんは怖いのです

 許して。助けて

 そう必死に頼むけど、リスさんは聞いてくれません


 目の前にはおんぼろ橋

 後ろにはいじわるリス

 クマさんは困ってしまった♪



「ああ。そんな事あったねぇー」

 リスさんは楽しそうに笑いました。クマさんは困ったように身を縮こまらせます。

 ヤギのお医者さん、ニワトリさんはそんなクマくんを優しい目で見ています。二人とも、クマくんの『頑張った事』が何か分かったのです。



♪その時、クマさんは拾った

 ピイピイと泣くかなしい声を

 くるしいよう。おなかいたいよう。


 橋の向こうにはひよこさん

 ピイピイと助けを求めてる

 いたいよう。おかあさんはどこ?


 クマさんに見えるのはひよこだけ

 いじわるリスさんの言葉など頭から消えてしまった


 そうしてクマさんは駆け出す

 走っている橋がオンボロだという事など忘れてしまった


 それを見たリスさん、黙ってニワトリさんの所へ走った


 クマさん、ひよこさんを抱え、行くのはヤギさんのおうち

 落ちていたご飯を食べてしまったひよこさん

 ヤギさんに薬を飲ましてもらったの

 ありがとう。ぼくもう苦しくない


 ピヨピヨと鳴く哀れなひよこ。守ったのはクマさんなの♪



「すげえじゃん」

 しみじみと聞き入っていたその静けさを破ったのはアライグマでした。

「見直したよ、クマ。これからは俺と同じ『クマ』を名乗る事を許してやる」

「あら、何であなたに許してもらわないといけないのかしら。クマくんは元からクマくんですよ」

 キツネ夫人がくすくすと笑いました。

「むしろ、あなたがクマくんの名前を借りているのではなくて? あなた、クマくんより年下でしょう?」

「う、うるせえよ、キツネババア!」

「うるさいのはそちらですよ、まだまだ青いアライグマくん」

「ふんっ!」

 アライグマがいつも通りキツネ夫人にこてんぱんに言い負かされています。クマくんもちょっと笑ってしまいました。でもアライグマに褒めてもらった事はとても嬉しいことです。彼はめったに他動物に優しい言葉などかけないのですから。

 そのクマくんを後ろから軽くつつく感触がありました。誰だろうとクマくんが訝しんで振り向くと、嬉しそうな顔のニワトリさんが立っていました。

「うちの坊やを助けてくれてありがとう。改めてお礼を言うわ」

「ああ。君の勇敢さには恐れ入ったよ」

 ヤギのお医者さんまで褒めてくれます。

 クマさんは恥ずかしくて真っ赤になってしまいました。


 そんなみんなの様子をコマドリさんは優しい表情で見ていました。

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