エピローグ
いつもの国民生活支援センターの応接室。オレとエドワードは、仲良く床に正座していた。目の前には仁王立ちのギルバートがいる。
「さて、昨日の話では囮捜査はしないと言ったと思ったのですが。私の記憶違いでしょうか?」
「いいえ、間違いありません」
「そして、あなたには絶対に自宅から出ないように、と言いましたよね?」
「はい、その通りです」
「何か言い訳が?」
「「申し訳ございませんでした!!」」
二人そろって勢いよく土下座した。
「全く貴方たちは……」
ギルバートが説教を続けようとしたところで、彼の電話が鳴った。すぐに戻るから待機しておくように、と言って彼が部屋を出て行ったことにより、オレ達はようやく正座から解放された。
結局犯人はサラだったらしい。彼女はずっと王女に恋をしていた。しかしそれは許されないことだと思い、その思いをずっと押し殺してきた。しかし一年前、王女はエドワードと出会い、恋をしてしまった。最初は応援しようとしていたが、嬉しそうな王女を見るたびにドロドロした感情は膨らむばかりで、今回のパーティでエドワードに再開してしまったらと思うともう気持ちを抑えることが出来なかったらしい。彼女は王女に危害を加えるつもりはなく、ストーカー被害に遭って男性恐怖症にしようとしたのだという。しかし思うようにいかなかったため、今回エディの名前を使って誘拐事件を起こしたという訳だ。その後は自分も王女の身の回りの世話のため誘拐されたと偽り、雇った男と共に遠い国へ逃亡するつもりだったという。
王女はそれを聞き最初はショックを受けていたが、すぐに気持ちを切り替えたようで、悪意ではなくてよかった、彼女の気持ちに応えることはできないが、きちんと向き合って話をしてみると言っていた。罪に問うつもりはないそうだ。
エドワードはオレが待ち合わせ場所に行く少し前からあの場所に張り込んでおり、オレ達のことを尾行した後、閉じ込められたのを目撃したが倉庫に危険はないと判断し、男の方を追ったらしい。そしてその先で男とサラがお金の受け渡しをしているところを目撃したという。
「そういえば、エドは手紙の内容を聞いてたんだな」
「いや、シャルロットに聞いたんだ」
予想外の言葉にオレは驚いた。彼は王女と会ってしまわないようにと自宅待機を命じられていたはずだ。オレの反応を見てエドワードは苦笑した。
「会うつもりはなかったんだけど、まさかノエルの家にいるとは思わなくて。今回は協力できないからと思って何も聞いてなかったんだけど、こんなことならもうちょっと情報もらっとけばよかったなぁ」
そう言うエドワードは、王女と再会したことを後悔しているようだった。しかしばれてしまったのならもう彼らの間には何の障害もなくなったということだ。王女はもう思いを伝えたのだろうか?
「そもそも、何で王女を避けていたんだ?」
「あー……自意識過剰って引かないでほしいんだけど……。何ていうか、ほら、彼女ってわかりやすいじゃん? だから彼女の気持ちも大体わかってたんだよね。けど俺は応えてあげることができないから、それなら会わないほうがいいかなって思って」
「ということは、彼女に言われたのか」
「えーと……まぁ。けどちゃんと断ったから! 諦めないとか言われたけど、オレはノエル一筋だから!」
「……そうか」
「っていうかあれ? もしかして嫉妬してくれちゃった? なーんて……え?」
そんなことを冗談交じりに口にしてこちらを見たところで、エドワードは固まった。当たり前だ。いつもは軽く流すか、呆れたような顔で返してくる相手が目をそらして明らかに挙動不審なのだから。きっと顔も赤くなっているだろう。
わかりやすすぎるオレの変化に彼が気づかないはずがない。それに今回の事でずっと目をそらしていたことにいろいろと気づかされてしまった。目の前の彼は、息をのんでこちらの様子をうかがっている。もう覚悟を決めるしかなさそうだ。
オレはしっかりと彼の目を見つめた。
「こんなオレですが、どうかよろしくお願いします」
はじめまして、またはお久しぶりです。はねうさぎです。
この度は本作品をご覧になっていただきありがとうございました。
これにてマーブルは完結になります。
長い時間がかかってしまいましたが、無事に終わらせることができて嬉しく思います。
しかしいろいろ上手く表現できないところもあったため、もっとがんばろうと思いますので、よければこれからもよろしくお願いします。
では、こんなところまでお付き合い頂きありがとうございました。