最終確認
フェリクスと別れた後、王女との観光は何事もなく終了した。王女は終始エディとの思い出を語っていたし、サラは平静を装っていたが、よく見ればエディの名前が出るたびに不機嫌そうだったのがわかった。
「さて、どう思う?」
シェリーとアリシアと共に自宅に帰り、フェリクスから聞いた話を二人にも話してから問いかけた。
「そうだねぇ……確かにサラはエディのことをかなり警戒してるみたいだったけど、シャルロットのことを大切に思ってるなら不自然なほどではなかったかな」
アリシアが言うように、オレもサラの態度がそこまで不自然だとは感じなかった。
「それに、フェリクスもシャルロットラブなんでしょ? 結局最後までストーカーしてたし、サラに睨まれてるんならサラの事気に入らないだろうし、信用していいかどうか微妙なとこだよねー」
そう言って彼女は唸りながら机に突っ伏した。彼が言っていた内容を伝えただけで態度諸々は伝えていないのだが、それだけでフェリクスの王女への気持ちを察したアリシアはさすがだと思った。
「シェリーはどう思う?」
「そうね……エルくんはどう思ったの?」
逆に問いかけられたため、オレはあの時のフェリクスの様子を思い出してみる。
「オレは、フェリクスはアリシアの言うように王女のことが好きなんだと思う。けどそれ以外の事に関しては嘘を言っているようには見えなかった」
「じゃあ私もそう思うわ」
オレの意見にシェリーが笑顔で便乗した。おいまて。
「オレは二人に相談したつもりだったんだが。それに確証は無いんだぞ?」
「わかってるわよ。でも、直接彼と話をしたのはエルくんでしょう? だったら私たちの中で一番その言葉の中の彼の本心がわかるのはエルくんでしょうし、私はエルくんを信頼してるから。だから私の考えはエルくんの考えと同じで何も問題ないわ」
オレは相変わらずのシェリーの盲信っぷりに何とも言い難い気分になった。隣で聞いていたアリシアはツボに入ったらしくひとしきり笑い転げていたが、しばらくして落ち着いた後、それもそうねと納得して結局フェリクスの言葉は信用することになった。
「意見もまとまったところで、明日の計画について確認しますか」
アリシアの言葉で思考を切り替える。ストーカーからの手紙によると、彼は明日の朝十時に思い出の場所で待っていてくれるらしい。向こうから会いに来てくれるというのだから、これを利用しない手はないだろう。話し始めようとしたところで玄関のチャイムがなった。あまりのタイミングの良さに、ふといつも彼を完璧すぎると不満そうに言っているエドワードの顔が浮かんで思わず笑ってしまった。
「こんばんは。何か面白いことでもあったのですか?」
こちらを見て、ギルバートが不思議そうに首を傾げている。
「ふふ、いや、何でもない。どうぞ、王女もお上がり下さい」
ギルバートの後ろのフードで顔を隠した少女に声をかけると、彼女はフードを脱いで不満そうな目を向けてきた。
「ありがとう。けど敬語、今日は無しって言ったはずよ?」
「これは失礼」
ギルバートと共にやって来た王女も交えて話を再開する。誰が犯人でも王女は悲しむことになるだろうが、今日の楽しそうだった彼女を思い出し、出来るだけその悲しみが少なくなるようにオレは心の中で願った。