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仮題すら思いつかない  作者: 夏目棗
第一章 覚醒
6/10

Awakening 6


「……ク?…ルク?おい、大丈夫なのかイェルク?体調が悪いのか?」


「…え、あ、いや、だ、大丈夫です父様!とっても元気ですよ!ちょっと感動してしまって……。」


「にいしゃま、たいちょうわういの?だいじょーぶ?」


「はじめまして、心配してくれてありがとう。ぼくはイェルクよろしくねアルベルト。今日は会いにきてくれてぼくとっても嬉しい!」


この時の私の表情はすこし……いや、かなりひどかったはずだ。


「本当に、大丈夫なんだな?」


「はい、父様!」


「そうか、無理はしないように。私はこれから仕事をしなければならないから…… ハンナ、私はもう行くから後はよろしく頼んだよ。」


「はい、旦那様。」


そうして父上は部屋から出ていった。


----


「にいしゃま、にいしゃま!ぼく、こっちのえほんもききたい!!」


父上が去った後、アルにせがまれて何冊か絵本を読んだ。頭の中は大混乱だったがアルが小さかったこともありなんとかごまかせた……はずである。


「お二人とも、そろそろ夕食の時間ですよ。」


「え、もうそんな時間なの?」


「はい、坊っちゃま。むしろいつもより遅めかと思われます。」


絵本を読んであげるとアルが目をキラキラさせてくれたから、私は思い出したことを一旦頭の隅においやることができた。


だけど読んであげることに夢中になって、ハンナに言われるまで夕食の時間だと気づかなかったのは、私もまだまだ子供だったということだろう。


「夕食の時間だって知ったら急にお腹が空いてしまいました。アル、今日はここまでにして一緒にご飯を食べに行きましょう!」


「いやだーー!まだにいしゃまにほんよんでもりゃうのー!」


「ふふふっ、アルベルト様は坊っちゃまの読み聞かせをたいそうお気に召したようですね。」


ハンナは微笑みながら言った。


「ですが、ほだされてはだめですよ坊っちゃま。夕食の時間はとっくに過ぎています!それに加えて坊っちゃまは病み上がりなのですから、今日はもう夕食を召し上がったら寝てもらいますよ?」


この時のハンナの表情の変化の速さが少し怖かったのは私だけの秘密である。


「うっ、わ、わかってるよ… ごめんねアル、ぼくも読んであげたかったんだけど、体調を崩したらまた母様たちを心配させてしまうから…… 今日はここまでにさせてね?」


「うー、わかりましたにいしゃま。でも、でも!!またぜったいよんでくりゃしゃいね!!やくそきゅでしゅよ!!!」


「うん、約束。読んであげるから、また遊びにおいで?じゃあ、今日はもうさよならだね。おやすみアルベルト。」


「おやしゅみなしゃい、にいしゃま……」


この時のアルは大変愛らしく、思わずあと1時間だけだめ?と聞きかけた私はハンナに睨まれた……

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