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仮題すら思いつかない  作者: 夏目棗
第一章 覚醒
5/10

Awakening 5


「坊ちゃまは旦那様たちの前では幼くなられるのですね」


ハンナがクスクスと笑いながら言った。


「ハンナ?どうしてそんなことを言うんだい?」


「坊ちゃま、気づいておられないのですか?」


「何に?」


「言葉使いが少々幼くなられることにですよ、坊っちゃま。」



「えっ……」


ものすごく恥ずかしかったのを覚えている… 私は全く気付いていなかったから、無意識だったのだろう。


恥ずかしすぎて布団に潜り込んでいたら、その日はそのまま寝てしまった。


そして、そのせいか次の日は日も昇らぬうちに目が覚めた。思っていたより緊張していたらしく再び眠ることはなかった。


そのあと私の起床に気づいてやってきたハンナに身支度を整えてもらったり朝食を食べありとしているうちに、とうとうその瞬間がきた。


私が弟アルベルトと対面し…… そして自分が転生者であると思い出した時が……


「は、はじめましてにいしゃま。ぼ、ぼくはあ、アルベルトといいましゅ!よ、よろしくお願いいたしましゅ!」


舌ったらずな言葉でなんとか伝えようとアルが一生懸命そう叫んでいるのを聞いた瞬間私に雷に打たれたような鈍器で殴られたようななんとも言えない衝撃が走っていた。


そして私は絶望したのだ。ぼくはあのイェルク・フリューストに転生してしまったのだと、この世界は前世で一世を風靡した乙女ゲームの世界なのだと気づいて…


私がなぜ絶望したかというと、それはイェルク・フリューストがそのゲームで唯一亡くなるキャラだったからだ。


私ことイェルク・フリューストは12才の時に弟を刺客から守り死亡するという設定だった。なぜ嫡男の私でなく弟のアルベルトを狙ったのかは前世からの謎である。


そして目の前で大好きな兄を殺されたアルは病んだ。それはもうかなり盛大に病んだ。


大好きな兄を失ったショックが大きすぎて、大好きなものをもう2度と失いたくないという思いが強くなってしまった……らしい。


『らしい』というのは、それが私の前世の知識によってもたらされた情報だからだ。


まぁ、何はともあれ。そのためアルの好きなものへの執着は強くなり、アルのルートではヒロインは高確率で監禁されることになる。


兄の死から殺そうとか傷つけようとはしないのがせめてもの救いであった……が


しかし、このルートのライバルがいけなかった。彼女はアルベルト以上に病んでしまっていたのだ!


彼女の病み具合に比べたらアルなんて可愛いものであると思えるほどに……


彼女の名はメアリー・エイスト、ゲームでは私イェルク・フリューストの婚約者だったという設定の持ち主である。

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