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仮題すら思いつかない  作者: 夏目棗
第一章 覚醒
3/10

Awakening 3


「うん、だいぶ安定してきましたね。一時はどうなるかと思いましたが、次の新月を過ぎるまでは大丈夫だと思いますよ、奥様。」


お医者様はそう言った。私はそれを聞いてとても安心したのを覚えている。


「まぁ、本当に!あぁ、良かったわイェルク!母様とっても心配していたのよ?お食事も喉を通らないくらいだったわ!あぁ、とっても嬉しい!駆け出したいくらいだわ!どうしましょう!今日はお祝いね、イェルク!」


母上は私以上に私の回復を喜んでくれていた、私も母上の笑顔がとても嬉しかったけれど、本気で走り出しそうな母上を見てひどく呆れた様子の父上の方が印象的だった。普段は絶対にそんな顔はしない人だったから。


「少し、はしゃぎ過ぎじゃないかい?」


「そんなことないわ!」


「そ、そうかい?まぁ、兎に角、回復おめでとうイェルク。辛かったろう?よく頑張ったな。」


父上はそう言って私の頭を撫でてくれた。とってもあったかくて優しい手に思わず笑みがこぼれた。


「ありがとうございます父様!ぼくこれからも頑張ります!頑張って、いつかお外を駆け回るの!」


「そうね、イェルク。いつかお外を駆け回るイェルクの姿をみれるの、母様も楽しみにしているわ。」


本当に嬉しそうな母上と私の顔を見て、父上は少し涙ぐんでいた。きっと、父上は本当は泣き虫なのだろう。父上の名誉の為にも誰にも言いはしないけれど。


「お医者様、新月まではイェルクの体調はこのまま安定しているのですよね?」


「はい、絶対に悪化しないとは言い切れませんが比較的良い状態を保てると思いますよ、旦那様。それでは、私はこれで失礼させていただきます。」


「そうか、ありがとう。イェルク、お医者様の見送りが終わったら話がある。戻ってくるまで、寝ずに待っていてくれ。」


「はい、父様。」


さっきまでとは打って変わって真剣な表情でそう言う父上に返事をするのはひどく緊張した。


「ハンナ、ハンナはいる?」


父上たちがお医者様を見送りに部屋を出た後、なぜだか落ち着かなかった私はすぐにハンナを呼んだ。


「坊ちゃま、ハンナはここにおります。」


「ハンナ、父様はなんのお話をすると思う?ぼく、なんだか話を聞くの怖くなってきちゃったみたいなんだ……。」


そう、真剣な表情の父上から話を聞くことがひどく私は怖かった。小さい時、不安な時はいつもハンナを呼んでいた。


「大丈夫ですよ、きっと旦那様はアルベルト様のことを坊ちゃまに紹介したいのでしょう。」


「そ、そうなのかな?」


「はい、きっとそうですよ。旦那様も奥様もアルベルト様のことを坊ちゃまにお話できていないことをひどく悩んでおりましたから。」


優しく笑いながらハンナはそう言った。

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