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忘却オルゴール  作者: たかだ よしまさ
9/12

怒れない男 6

Y次郎はF子に何もかもを話した。突如開花した能力のこと。それが自身でコントロールできないこと。それが恐ろしく、会社を休みがちになっていること。世間を騒がせている連続破壊行為を行っているのは、わざとではないが自分であること。


ありのまま、全てを話した。それだけF子はY次郎にとって信頼のおける友人であるし、何より医者という立場上、患者の個人情報を簡単には漏洩させないという安心があった。


「あなたに同情するわY次郎くん、辛かったね」


「ありがとうF子。本当にまいったよ。なんでこんな能力がついてしまったのか、俺は神を呪うよ」


きっと神様も驚いているんじゃない?とF子は優しく笑う。ああ、やはり友人を訪ねて良かったとY次郎は心から安堵した。


「しかし、なかなか繁盛しているみたいじゃないか。大学時代から君は優秀だと思っていたが、もう独立して心療内科を開業してるとはね」


「今私が看ている患者はね、みんな父が現役バリバリの時から来てくれている人達なの。私は二代目ってわけ、早い話おこぼれをいただいてるのよね。でも、まだまだ私もヒヨッコだから父はいまだに診察室にべったりなの。仕事の間くらい一人になりたいわ」


「でも、お父さんが近くにいてくれればヒヨッコも安心じゃないか」


「お薬、いらないの?」


「ごめんなさい、いただきます」


「ふふ、効果があるかは分からないけどY次郎くんの症状は怒りの感情によって出るみたいだから、安定剤を出しておきます。ただ現代の医学では理解できない症状だから、完全に治すためにも信頼できる方達にカルテを見せて私も研究してみるわ。いいかしら?」


「いいけど、ただ」


「分かってるわ、マスコミなんかに漏洩させません!安心して」


「助かるよ、ありがとうF子」


「どういたしまして、現代の切り裂きナントカさん」


「じゃあ、またなヒヨッコ」


久しぶりの学友との談笑にY次郎はすっかり心の霧が晴れ、薬局で精神安定剤を受け取って足取り軽く帰宅した。


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