天使の宿命1
黒華は漆黒の羽根を翻して空を舞っていた。
(それにしても、まさかあの白魔に会うなんて)
「黒華」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「なんだ、黒羽ね。」
黒華に声をかけてきたのは黒羽[くろは]だった。
彼女は黒華と同じように突然変異で羽が黒い色で生まれた天使だ。黒華の良き理解者で、漆黒の天使、黒華と同じように黒羽根の天使として
名をはせていた。
「ねえ黒華、あなたまた仕事すっぽかしたんですって?」
黒華は痛いところをつかれギクリとした。
「だって、つまらないんだもの。」
「つまらない?」
どんなに小さい悪魔でも、将来は人に危害を加える悪魔になる。
天使はそいつらを殺さなければならない。だが、まだなにも知らないのに悪魔というレッテルを貼られ、
邪悪な存在に扱われる。
そんなやつらを殺してどうなるのだろうか。
黒華には震えている小さな悪魔を殺すことが嫌でしかたがなかった。
「うふふっあなたそんな容姿なのに」
黒羽はそれを聞いて笑っていた。
「なによ、黒羽だって変わんないじゃない。」
黒華はムッとして反論する。
「でも、気持ちは分かるわ。」
そう言って黒羽は少し寂しげな顔をした。
「黒華、それが私たち天使の仕事…いや、宿命なのよ。」
黒華は現実を突きつけられた思いだった。
そして黒華は飛び立った。
「黒華…」
黒羽は黒華の気持ちを悟ったのだろう。黒華は気が強い。
きっと、今は親友の黒羽でさえ見られたくなかったのだろう。
体は天使とは反対でも、心は誰よりも天使だった。
だから、それを悟った黒羽は黒華を追いかけることなく反対側へ飛び去った。