~はじまりの時と場~
「はぁ。」
と、ため息を落とすまるで天使のような美しい悪魔が空をまっていた。
「天使局長、今日はこれをやればいいのね~?」
間の抜けた返事をする悪魔、ではなく真っ黒な魅惑の容姿をもつ天使、黒華[こっか]である。
「こら、黒華!ちゃんと聞きなさい。あなたはここ最近仕事に不真面目すぎです!」
「はいはい。」
そう答えると黒華は依頼書をもって黒い翼を羽ばたかせた。
「おーい黒華!お前またおこられただろ?」
そういって現れたのは黒華の仲間であり、ライバルの天馬[てんま]だ。彼は美しく光る白い羽を羽ばたかせている。
自分は美しい天使だと見せつけられているようでうんざりする存在でしか黒華の中にはなかった。
「だったら何?」黒華は無愛想に答えた。(元々黒華は天馬のテンションが嫌いだった)。
「お前さー。なんで何でも出来んのに真面目に仕事やんねーの?」
正直黒華は答えるのが面倒だったので、「さあね。」と答えて飛び去った。
(まったく…無駄な時間を潰してしまったわ。)そんなことを考えながら空を舞っていた。
そうこうしていると不意に目の前に現れ、ぶつかってきた。
「キャッ!!」
バランスを崩し悲鳴をあげたがなんとかバランスを保った黒華は、ぶつかってきたものを睨み付けた。
そこにいたのは、黒華が一番嫌いなものだった。
「ごっごめんなさい!!」
「あんたは…」黒華は目を見開いた。
「あっ…」そいつは黒華を見るなり怯えた。
「ごめんなさい、殺さないで!僕は天使じゃ…」そういいかけた白いやつの口を黒華はさえぎった。
「私は悪魔じゃないわ。それに、天使じゃないってどういうこと?意味がわからないし、何で殺されるの?それから名前は?」
黒華は不思議そうに彼を見つめた。
「あ、あの、僕は白魔[はくま]といいます。僕は、その…。悪魔なんです」
「あっ悪魔!?」黒華は驚いた。なぜならどんな天使よりも美しい純白をみにまとっているのだから。
「僕は悪魔なのに白いからだで生まれてきちゃって、下等な扱いを受けているんです。そんな僕が悪魔にぶつかったら殺されてもおかしくないんです。」
黒華はやっと納得した。
(なるほどね。)
「私は黒華。あんたは噂には聞いてたけど、純白の悪魔の白魔ね?」
「はい。じゃあ、あなたは漆黒の黒華さん?」
「ええ。そうよ。」
「僕、あなたに憧れていたんです!一人色が違うだけで僕はいじめられてたけど、あなたは一人で生き抜いてて…」
黒華はため息をついた。
「はあ。私はあんたの人生相談なんかした覚えないわ。忙しいの。さよなら」
黒華はいそいで飛び立っていった。
(めんどくさ…。)
「黒華…さんか。」白魔は一人呟いた。そして同時に黒華に対してある気持ちを抱いていたー。