第2話 へし折られた希望
「絵里奈・・・愛しているよ」
そう言いながらベッドの上で絵里奈を抱きしめる男。
この男に監禁されて一体もう何日目になるのだろう――・・・・・?
目隠しをされている為、朝なのか昼なのかも解らない。
時間の感覚を見失い、正体も解らない見知らぬ男に抱かれ続け、
気が狂いそうだった。
しかし、絵里奈は少しだけ希望を持っていた。
友人や勤めている会社先が自分からの連絡が途絶えている事に疑問を抱き、
きっと警察へ捜索願などを出してくれるだろう・・・・。
そう、思っていた矢先だった。
「嗚呼、そうだった。言い忘れていたけどね」
「?」
「絵里奈が眠っている間に友達にメールしておいたよ。
“仕事の関係上、暫く忙しくなるから連絡が出来なくなるけど安心して”・・・って」
「え?」
言葉の意味が理解できなかった。
そして更に男が続ける。
「後ね、勤め先の会社にも連絡しておいたよ。
”急病の為、急遽長期入院が必要となったので仕事を辞めさせ下さい”ってね」
「・・・どう・・・言う・・・事・・・?」
「フフ・・・だって絵里奈が音信不通になったとなれば、
誰かが警察に捜索願を出しちゃうかもしれないだろ?」
そう言いながら笑う男。
そして、徐々に絵里奈の頭の中が冷静になり、
男の言葉の意味を理解したその瞬間、サーッと、血の気が引いた。
この男は何もかもを計算していたのだ・・・・。
絵里奈が「誰かが捜索願を出してくれる」と言う事に希望を持っていた事も、
全て解っていた上で計算して対策を取ったのだ。
「そ、そん・・・な・・・・」
「フフ、これで誰も助けには来ないし、君も絶対に逃げられない」
嬉しそうにそう言う男の言葉。
ずっとこの男と二人で一緒に狂った生活をしないといけない・・・?
監禁され、体を拘束されて、犯されて、どこの誰だかも解らないこの男にずっと・・・・?
一気に奈落へと落とされる様な絶望感が絵里奈を襲う。
同時に、無数の涙が流れた。
「いや・・・嫌よ・・・助けて・・・・誰か・・・夕鶴・・・静香・・・」
涙声でうわ言の様にそう口にした。
助けなど来ない友人たちの名を――・・・・・。
「そう泣かないでよ・・・・フフ、大丈夫、俺が永遠に君を愛してあげるよ」
そう言いながら更に男が絵里奈の身体を強く抱きしめた。
「嫌っ・・・・」
抱きしめてくる男の腕を払いたくて仕方が無かった。
仕舞いには殺してしまいたい程の殺意までも男に感じた。
へし折られた希望。
残るのは奈落の底へと落ちる絶望感。
今後、自分はどうなってしまうのだろう・・・?
絶望に塗れながら、絵里奈はそう思った。
<続く>