現在、NATO加盟を目指している日本
「俺は総理大臣になってよかったのだろうか…」
そう思う事がある。
俺が核保有をぶち負けた途端、
国の内外から反対運動が起きた。
首相官邸の前も千数百人規模のデモ隊が押し寄せた。
想定していたとは言え、神がついていながら、
核保有について、世論調査で、
反対が賛成を上回った事には驚いた。
もともと核アレルギーの強い国民性もあるけど、
原発事故のあとだけに、
結果だけ見れば、確かにこういう事になるのだろう。
人にとって、一番つらいのは、
富や名声を失う事じゃない。
人から忘れられたり、見放されたりする事だ。
反対を想定していたとは言え、
人が自分から離れていくと思うと、
さみしくてたまらない。
けれども、俺は総理大臣だ。
日本の政治のTOPだ。
民意を無視した政治は最悪だが、
大衆迎合の政治も最悪である。
時に、民意の全てが見放しても、
政治にはやらなければならない事がある。
例え、現在の人々の全てが評価しなくても、
将来の人々が歴史として評価してくれることを信じて、
やり通さなければならない事がある。
そのために俺は総理大臣になった。
そう信じて、俺は迷いを振り払っている。
核保有に関しては、
外国からの反発も予想の範囲内だった。
特にロシア、中国、北朝鮮の反発は強い。
自分らが持っておきながら…
けれども、意外だったのは、
アメリカとEUの静観ぶりだった。
欧米の首脳たちの反応は、
きわめて落ち着いていた。
どちらも核保有国であり、
同じ西側陣営と言う事もあるだろうが、
どうやら、欧米諸国は、
日本の核保有を裏では歓迎しているようだ。
日本は、現在、裏でNATO加盟を目指している。
NATOとは、北大西洋条約機構の事で、
アメリカと欧州諸国が結ぶ軍事同盟である。
一見、日本とは関係がないようだが、
実は、欧米諸国は、日本のNATO加盟を望み、
日本も、俺が総理大臣に就任する前から、
NATO加盟を目指していた。
この事実を知る日本人は少ないと思う。
とは言え、隠していた事実でもない。
公にされている事実だが、
一般的には関心が薄かったというだけの話だ。
それくらい、日本人は安全保障には鈍感だという事だ。
NATOの仮想敵は、ロシアや中国と言った
拡大する旧共産圏の国々である。
これに対抗するには、西側からだけでなく、
東側、つまり日本や
その周辺にある西側陣営の国々を取り込み、
東からも圧力をかけて、
この動きを抑える必要がある。
遠交近攻は、政治や軍事戦略の基本である。
ちなみに遠交近攻は、その字のごとく、
近くの敵に対するために、
遠くの国と結ぶという意味である。
古来より、世界中で使われてきた基本戦略だ。
そのために欧州諸国は、
日米の関係が、二国間の安全保障条約ではなく、
オーストラリアやニュージーランド、
韓国や台湾も取り込んだ
多国間の相互防衛条約、
つまりNATOのような関係に発展し、
NATOと同調していく事を望んでいた。
日本とNATOが急接近したのは、
安倍晋三内閣の時からである。
日本がNATOに財政支援している事も知ってるだろうか?
まだ、数億円規模だが、
そこまで関係が発展している事も、
残念ながら、我が国の国民はほとんど知らない。
言っておくが、政府が隠していたわけではない。
日本人の関心があまりにも薄かっただけだ。
平和とか言っておきながら、
こういう事に無知であり続けている。
そういう平和論を聞く度に俺は腹立たしくなる。
現実を知らない平和論は妄想でしかない。
平和論を語るのは自由だが、それを語りたいなら、
もっと現実を勉強しておくべきである。
さて、俺は、日本のNATO加盟に賛成だ。
NATOは、北大西洋にとどまらず、
世界規模に展開して、やがては、
世界の軍事秩序を世界規模で一元化して、
国家単位での軍事権は、廃止するべきだと考えている。
それが俺が考える平和論だ。
要するに、明治維新でやった事を
世界規模で実現すればいいのだ。
この話は、あとでじっくりとしたい。
欧米諸国は、日本が核保有すれば、
核戦力の西太平洋における移動が自由になり、
これまで隠密裏に行っていた核戦力の日本への持ち込みを
堂々と行えるようになる。
だから歓迎しているようだ。
俺の核保有の内容も良かったらしい。
俺は、日本は弾頭数にして
50発程度の核を保有すればいいと言ったが、
実は、これは欧米諸国が保有する
核原子力潜水艦(戦略原潜・SSBN)の
1隻分の核戦力にも満たないくらいに少ないのだ。
例えば、アメリカが保有するオハイオ級戦略原潜1隻には、
1発のミサイルに最大14発の核弾頭を搭載した
トライデントという海上発射型弾道ミサイル(SLBM)を
24発も搭載している。
つまり、1隻の戦略原潜には、
最大で336発の核弾頭を搭載できるのである。
これは、イギリスが現在保有する
核弾頭の総数の約1.5倍に当たる。
つまり、核保有国1国を遥かに上回る核戦力を
原潜1隻に搭載できるのである。
それをアメリカは現在14隻保有している。
(2010年末現在)
ちなみにオハイオ級に搭載されたトライデントには、
通常は、8発程度に核弾頭の搭載数が抑えられているので、
通常配備でのオハイオ級の核弾頭搭載数は、
約200発程度である。
それでもイギリスと同じくらいの核戦力だ。
いかにアメリカが圧倒的な核戦力を保有しているか解る。
そして俺の内閣で目指そうとしている核保有は、
弾頭数にすれば50発程度。
アメリカの原潜1隻分の4分の1から6分の1程度。
ロシアの原潜に比べても同程度の規模。
イギリスやフランスの原潜からすれば、
1隻分の核戦力でしかない。
欧米諸国からすれば、
俺が保有を目指す核戦力は無害に等しいのだ。
ロシアや中国の反対も、
表向きは核拡散防止と言っているが、
現実は、自国の核抑止力の無力化と、
核保有による政治的優位を失う事を恐れての事に過ぎない。
NATOからすれば、相対的に
ロシアや中国の政治力が低下するので、
日本の核保有は歓迎されるわけである。
欧米諸国は、表向きには表明できないが、
内々には、日本の核保有に賛成の意思を伝えてきた。
安全保障の力学とは、そういうものなのだ。