表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日から俺が総理大臣  作者: やいたもん
第五章 国防論
35/47

軍隊が無くなれば戦争も無くなるという幻想 ~平和憲法の犠牲となった海猿~

中谷坂太郎(なかたに さかたろう)という男を知ってるだろうか。

海上保安庁の歴史上、唯一戦争で散った保安官である。

海上保安庁は、警備隊であり軍隊ではない。



海上保安庁法 第25条

この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。



海上保安庁は、外国からは軍隊と勘違いされる事もある。

それは、全ての国境を海上に置く日本において、

その海域全ての警備を任務としているからだ。

国によっては、海上警備が海軍の任務である場合もある。

だが、軍隊のようであっても軍隊ではない。

その決意が現れているのが海上保安庁法第25条だ。


だが、その海上保安官が、戦争に駆り出された時代がある。

それは、戦後間もなく発生した朝鮮戦争である。

これに海上保安庁が参戦を命じられたのだ。

この時代、日本軍は解体され、

まだ自衛隊も発足していなかった。

つまり、日本には軍隊がない時代であった。

平和主義者の論理で言えば、

軍隊がないのだから、戦争が起きるはずはないはず。

ところが、軍隊が無かった日本に対して、

アメリカは、軍隊ではない海上保安庁の動員を命じたのである。

当時、アメリカの占領下にあった日本は、

この要請を断る事は出来なかった。


任務は、北朝鮮が設置した海上の機雷を除去する

掃海作業という任務。

現在は、海上自衛隊が担っている任務である。

そして、1950年10月17日、

海上保安官が乗船する掃海艇が、

韓国の元山沖永興湾で機雷に接触して沈没、

海上保安官1名が殉職、18名が重軽傷を負ったのである。


この時、殉職したのが中谷坂太郎だ。

享年21。彼の遺体は、海の藻屑と消え、

それすらも故郷である日本に帰る事は無かった…



誰だ!? 軍隊が無ければ

戦争も起きないなどという幻想を言う奴は!?

こうした歴史的事実も知らないで、

無責任な事を言う奴は、俺は許せない。


軍隊があろうがなかろうが戦争は起きる。

そもそも、戦車や戦闘機、

軍艦や核兵器は、戦争を起こさない。

戦争を起こすのは人間だ。

軍隊がなかろうと、戦車や戦闘機、

軍艦などが無かろうと、

人間は戦争を起こす。

それ以外のものを武器にして戦うだけだ。


軍隊は、秩序を形成する組織のひとつでしかない。

秩序の中で安全保障を維持するための組織に過ぎない。

それを曲解して、軍隊は戦争のための組織だとか、

軍隊があるから戦争が起きるとか、

それこそ詭弁を掲げて、

日本の秩序を迷走させるのは、

平和主義でもなんでもなく、

ただの破壊主義者である。


何度も言うが、平和とは作るものであり、

秩序の安寧を平和と言うのだ。

これを作るための組織としての軍隊は必要である。

軍隊が対するのは、外国の侵略者だけではない。

自然災害に立ち向かう事もあれば、

原子力などの大規模な事故などでも、

矢面に立たされる。

軍隊の一面だけをとらえて、

その存在意義の全てを否定するのは、

一を見て十を否定する愚行だ。

もっと冷静に考えてもらいたいものである。



今も海上保安官は、

こうした国民の迷走に翻弄される事がある。

1980年代に起きたイランイラク戦争では、

この戦争に日本船が巻き込まれないように、

護衛するために巡視船を派遣する計画があった。

1990年に勃発した湾岸戦争の時も、

資金だけでなく、人的な協力も求められた日本は、

一時、巡視船の派遣を検討していた。

自衛隊を海外派遣する事は危険という論理からだ。

憲法上の制約とかは、あんなのは詭弁だ。

だが、そんな詭弁や屁理屈のために、

いつも海上保安官たちは、

戦争の矢面に立たされる危険がある。


また、自衛隊法には、次のような規定がある。



自衛隊法 第80条1項

内閣総理大臣は、(中略)特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる。



つまり、日本が有事になったら、

海上保安庁が自衛隊の指揮下に入る事が定められているのだ。

全ての国境が海上にある日本においては、

これについては、やむを得ないところもあるが、

沿岸警備、沿岸防衛(海防)活動においても、

海上保安官は、常に矢面に立たされているのである。


だが、この良し悪しを論じているわけではない。

名目や建て前ではなく、

秩序を形成するためには、

実際問題として何が必要なのかという事を考えて欲しい。

これらの事も、それを主眼として見てもらいたい。


現実逃避ではなく、

全ての現実を受け入れて秩序を形成してこそ、

本当の平和は得られるのである。














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ