日本の大統領権限を行使する参議院
また、愚痴っていいっすか?
国会はメンドクサイ…
内閣でなんかやるたんびに、
何かというと説明責任という単語を持ち出して、
同じ説明を何度もさせようとする。
ただ、めんどくさいのは質問だけじゃない。
その答弁もだ。
俺には今までの内閣と違って、
自分の哲学と意見がある。
俺が閣僚に選んだ奴らも、
俺から見れば、そういう奴らばかりだ。
…だったはずなのに…
答弁には、必ずと言っていいほど、
官僚が絡んでくる。
さすがに専門的知識のある者を大臣としたと言っても、
その省庁に関する知識の
全てを持っているわけではないので、
答弁には必ず官僚がついてくる。
そこまではいい。
質問された事に解らない知識があれば、
それを教えてもらわなきゃいけない。
ただ… 面倒なのは、
官僚が自分たちの意見を言わせようとすることだ。
答弁に困った大臣などは、
官僚の意見をそのまま発言したりする。
本当にがっかりだ。
俺の内閣にも、そんな奴がいる。
そんな奴だとは思ってなかったから、
お前らを大臣に選んだのに…
知識は教えてもらっても、
知恵は自分で絞り出す。
それが出来てこそ政治家であり、
初めて政治主導の政治家たる事が出来るのだ。
それが出来ないのは、
基礎的な哲学が足りないからだ。
未熟なのだ。
本当に国会答弁は、
いろんな方角において面倒くさい。
それ以上に面倒なのは、
内閣が国会を召集しなければならない事だ。
面倒くさい国会の召集を決めるのも内閣の仕事なのだ。
何で行政府の内閣が…と思うかも知れないが、
そこが、それ、議院内閣制の辛いところだ。
日本国憲法 第7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために国事に関する行為を行ふ。
二、国会を召集すること。
※国会は名目的には天皇によって召集されるが、決定権は内閣にある。
第53条
内閣は、国会の臨時会の招集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
自分が追及する場のお膳立てを
自分でしなければならないなんて本当に自殺行為だ。
だけど、予算とか通さないと行政は運営出来ないし…
本当にジレンマだ。
開催しなくて済むなら、その方が楽だ。
けれども、議会制民主主義の中では、
そうも言ってられない。
説明責任は聞き飽きたけど、
それを否定する事も出来ない。
だが… 総理大臣には、衆議院の解散権がある!!
あんまりうるさい国会なら、
これで解散させて、メンバー全員とっ変えればよい。
…ってな話にはならない。
まあ、解散権という存在を初めて覚えた時は、
まだ基礎的な知識もないから、
誰もがそんな事を思ったのではないだろうか?
俺だけか?
しかし、当然ながら、
そんなに事は簡単ではない。
何より、解散できるのは、
衆議院だけで参議院は出来ない。
衆議院だけじゃなく、
参議院も出来ればいいのに…
なぜそういうシステムになっていないのか。
これは歴史的な経緯がある。
考えてみれば、参議院というのは、
不思議な存在である。
参議院無用論という論調が出てくるほど、
その存在意義が薄いし、
意味が解らないという意見も多い。
まず、上院と下院という分け方でいうと、
参議院は上院、衆議院は下院という事になる。
原則的には、日本ではそういう分け方をしないが、
あえて分類するならそういう事になる。
これは、参議院が、
戦前は貴族院であった事の名残だ。
貴族院とは、戦前に日本にも存在した
主に貴族(華族)により構成され、
貴族の世襲により議員職が継承される議会だ。
「そんな専制政治の名残みたいな議会が戦前にはあったんだ…」
…と思う人もいるかも知れないが、
実は、現在もこの制度が残る国がある。
イギリスだ。
イギリスの上院は貴族院であり、
選挙で議員が選ばれるわけではなく、
貴族による世襲や
国王により任命された貴族により構成され、
現在は700名ほどで構成される。
とは言え、それは定数ではなく、
貴族院の定数は決まってなく、
ごく一部の議員を除いては、
議員だからと言って、
国から歳費を受けているわけでもない。
このイギリスの貴族院に模倣したのが、
日本の貴族院であり、戦後の参議院である。
そして、こうした歴史があるために、
参議院は上院という扱いにはなっているが、
権限的には、下院である
衆議院の方が上という構造になっている。
日本国憲法 第59条
②衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
④参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
第60条
①予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
②予算について、参議院で衆議院と異なる議決をした場合(中略)、衆議院の議決を国会の議決とする。
第67条
②(内閣総理大臣の指名において)衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合(中略)衆議院の議決を国会の議決とする。
このように衆議院の方が優位となっている。
こうしてみると、参議院の存在意義が
ますます解らなくなってくるだろう。
しかし世界には、この参議院と
似たような権限を持つ存在がある。
それは大統領である。
例えばアメリカの場合、
大統領には、法律案に対する署名権限があり、
連邦議会で議決された法律案は、
この大統領署名をして初めて法律となるが、
署名を拒否された場合、
上院と下院の両議院で三分の二以上の議決をしなければ、
法律案は廃案となる。
(アメリカ合衆国憲法第1条第7節2項)
最終的には立法府である議会の結論を優位にしているが、
参議院で否決したものを
衆議院の三分の二以上の可決で法律とする事と
全く同じな関係である。
似たような権限は、他の国の大統領にも見られる。
例えば、イタリアの大統領には、
憲法第74条に基づき法律再議権が認められている。
フランスの大統領にも、憲法第10条2項に基づき、
再審議を議会に要求する権限が保障されている。
これが良識の府と呼ばれる参議院の存在意義だ。
良識の府なんて面倒な言い方をするから、
余計に解らなくなってくるが、
要するに、日本の大統領権限を担っているのが、
参議院という議会なのである。
大統領という個人でこの権限を行使させているが、
議会という集団で行使しているかの差に過ぎない。
もちろん、全く同じという事でもないが、
こうしてみると、参議院の意味も解るだろう。
ただ…
俺は、これらを理解した上で、
改めて参議院は改革が必要であると思う。
もっとも、俺が考えているのは、
参議院だけでなく衆議院も含めて、
国会全体の改革である。
日本には国会改革が必要である。
俺は、最近の国会の停滞ぶりを見て、
その意思をさらに強くした。