政治の責任を明確化させる官位制度
時代劇で名奉行として有名な人物と言えば、
大岡越前と遠山の金さん。
俺は、どちらかと言えば、
作品に、よりリアリティがある
大岡越前の方が好きで、
桜吹雪を豪快に見せる金さんの方は、
派手すぎた印象があったが、
そういう方が好きだという人もいただろう。
では、現実世界では、
大岡越前と遠山の金さんでは、
どちらの方が偉かったのだろうか。
「同じ町奉行だったのだから、同じではないか?」
そういう答えが帰ってきそうだが、
実は、同じである。
ただ、同じ町奉行だからという理由ではない。
官位が、どちらも従五位下と同じだからである。
日本の官位制度は、聖徳太子の時代の
官位十二階に始まる。
官職の上下関係をはっきりと定め、
その権威と権力を明確化させた事に関しては、
優れた制度である。
日本の場合、一位を最高として、
さらに各官位を正と従、上と下に分けて、
権力と権威の上下を細分化している。
その官位において、両奉行は同じだった。
ただ、その死後に大岡越前の方は、
従四位という官位を贈られているので、
そういう意味では、大岡越前の方が上だったと言える。
ちなみに、遠山の金さんと言えば、
時代劇では北町奉行として有名だが、
実は、南町奉行も務めている、
1840年3月11日から1843年2月24日までが北町、
1845年3月15日から1852年3月24日までが南町だ。
実は、南町奉行であった時代の方が長い。
それが北町奉行として有名なのは、
同じ名奉行の時代劇として有名な
大岡越前が南町奉行であったため、
対比して北町奉行として有名になったものである。
また、時代劇と言えば、
天下の副将軍として水戸黄門が有名だが、
この水戸黄門の生前の官位は従三位であった。
官位において、三位以上は殿上人と呼ばれ、
天皇の御所への昇殿と天皇との謁見が許された。
単純に昇殿だけならば六位以上、
天皇との謁見だけならば四位以上でも許され、
そうした人たちも殿上人と呼ばれていたが、
殿上人は、その発音から、
天上人にも通ずるものであり、
実質的な殿上人は三位以上からであった。
その水戸黄門こと徳川光圀は、
死後に最高の官位である正一位まで贈られている。
つまり、最高位の官位をもらっているわけだから、
水戸黄門は、官位だけで言えば、
天皇を除く全ての日本人の中で、
最高位にあるということになる。
なお、徳川光圀の官職は権中納言だが、
この「権」というのは、名誉職という意味であり、
中納言に相当する官職という意味で、
正式な中納言ではない。
現在、この官位制度は、栄典制度に変わって、
現在の日本にも残っている。
けれども俺は、権力の上下をはっきりさせる事で、
行政の責任を明確化させるための制度として、
改めてこれを導入したいと考えている。
難しい肩書を聞かされても、
その閣僚や官僚がどれだけ偉いのか、
どれだけの責任を負っているのか解らないが、
そこに順位がついていれば、
より順位が高い者が、一番権力があって、
何かあった時に一番責任を負うべき人だという事が、
一目瞭然で解るようになる。
この官位は、政権が変わる度に太閤が決めて、
天皇が任命するようにする。
権限の行使は、官位の上の者の決定がより優先され、
その代わり、その責任を最も負うものとする。
正一位を太閤、従一位を内大臣とし、
それ以外の閣僚については、
二位から三位の官位で叙任する。
官僚は、最高のものであっても四位とする。
そして、官僚も官位によって格付けされる。
似たような制度が、アメリカにはある。
アメリカでは、副大統領以下の閣僚が格付けされている。
これは、権力の格付けと言うよりは、
大統領が職務を全うできない時、
誰が大統領に代わって大統領権限を行使するのか、
その順位を定めたものである。
それは、大統領継承法という法律によって定められており、
アメリカ合衆国憲法で言えば、
次の条文を根拠にして定められている。
アメリカ合衆国憲法
第20修正 第3節(一部抜粋)
大統領に当選した者及び副大統領に当選した者がいずれもその資格を備えるに至らない場合に、何人が大統領の職務を行うか、またいかなる方法でその職務を行う者を選定するかを法律によって定める事が出来る。
この継承順位が定められており、
これが閣僚の順位となっている。
ちなみに、アメリカの国務長官が、
アメリカの首相に当たる役職として説明される事があるが、
これは、国務長官が、大統領と副大統領を除く閣僚の中で、
最も閣僚の順位が高いからである。
国務長官は、日本の役職で言えば、
外務大臣に当たるもので、
決して首相に該当するものではなく、
国務長官をアメリカの首相と認識するのは間違いである。
ただ、閣僚順位で最も高いだけに、
政治的に注目される存在である事は事実である。
俺が導入を目指す官位制度も、
これに倣って、太閤権限の継承順位も兼ねておく。