年間1500件以上の天皇の仕事
俺は今、宮城に来ている。
宮城ってのは皇居の事だ。
誰に会いに来たかは決まっている。
天皇陛下だ。
何しに来たのかと言えば、
陛下に国政の状況を報告しに来た。
これを内奏っていう。
総理大臣やその他の国務大臣の重要な仕事だ。
不定期だが、国務大臣は陛下に、
国政の状況を報告している。
各省庁の事務次官などの高級官僚が
報告しにくる事もあるが、
それは進講って呼ばれる。
では、どんな内容を報告したのか。
それは秘密だ。
天皇陛下の政治利用を避けるために、
その内容は機密事項になっている。
これを漏らしたらクビが飛ぶ。
どうしても知りたければ、
お前らも総理大臣になればいい。
でも、どうしてそんな事が必要か、
疑問に持つ奴もいるだろう。
何しろ天皇陛下は、国政には関与せず、
国事行為のみを行う存在だからだ。
その陛下に国政の状況を報告する必要がどこにあるのか。
解らないという人もいるだろう。
それは、陛下がどれだけの仕事をしているのか、
理解すれば解る事だ。
天皇は、まず内閣で閣議決定された事項の書類に、
その全てに目を通してから署名や押印しなければならない。
国事行為のひとつだ。
その書類だけでも年間約900件にも及ぶ(平成22年度)。
天皇は、この署名や押印を拒否する事は出来ないが、
自らがどんな書類に署名押印しているか、
内容を知らずにそれをさせるわけにはいかない。
だからこそ、内奏や進講が重要になる。
法律や外交文書への署名押印の作業も含めれば、
さらに数は膨大なものになる。
さらに天皇は、外国から来た国賓や大使に会い、
拝謁、会見、午餐、晩餐などの
もてなしなどもしなければならない。
その相手が、どんな理由で日本に来たのか、
どんな人物なのかなどを理解しなければ、
満足に、もてなす事も出来ない。
外国の王族、大統領などの元首、
首相、議会議長などの国賓だけでも、
天皇は36名もの国賓に会い、
宮中晩餐などのもてなしを行っている。
それ以外に外国の大使の着任や離任の度に、
その都度会見し、その数は56ヶ国にも及ぶ。
日本の大使が外国に赴任し、あるいは帰参した際も
これに会ってねぎらわなければならない。
その数は93ヶ国の大使に及ぶ。
そして、外国から送られてくる
親書や親電にも目を通し、必要であれば返信する。
これが年間420件にも及んでいる。
(数字は全て平成22年度のもの)
これ以外にも、スポーツ活動や文化活動で
功績のあった人たちと会ったり、
国会議員や都道府県知事、裁判官、
教育委員会や小中学校などの教育界の責任者、
医療や福祉業界の関係者などとも会っているのだから、
その数は計り知れない。
この他に天皇は、外国を親善訪問したり、
日本国内を行幸啓したりしている。
外国の親善訪問は、公式訪問だけで
即位後は通算24ヶ国。
年1回以上は外国を公式訪問している計算になる。
行幸啓の数は、即位してから通算450ヶ所以上に上っており、
年間平均20ヶ所以上にもなる。
特に皇室外交は、純粋な文化的国際交流を実現するものとして、
日本と世界との友好関係を築くのに
大いに貢献する重要な事項である。
数字として出ているものだけ合わせても、
天皇の国事行為は1500件を軽く超え、
数字になっていないものまで合わせれば、
計り知れない事になる。
だからこそ、その全てに意義を以て臨むためにも、
天皇に内奏や進講する事は
必要不可欠であり、重要になってくるのだ。
この他にも天皇には、
国会の召集や開会の宣言、衆議院の解散、
国会議員の選挙の施行、
総理大臣や最高裁判所長官の任命、
国務大臣や官吏の認証、
栄典の授与、儀式や祭祀など、
多数の国事行為をこなしている。
国家元首としての天皇の役割は、
かなり重要なものなのだ。