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舞踏会

更新しました。

楽しんでいただけると幸いです。

最初は能力を失ったのか、あるいは釈迦からの贈り物かと思い釈迦に尋ね、もう一度結界を張ったが釈迦は首を横に振り、能力は特に失われてはいなかった。


どういうことか分からなかったが、それよりも周りの人間の明らかな態度の差に辟易し、暁妃はまたもほとんど部屋に籠るようになった。

知りたいことが多かった。結界を張っている以上桜花の居所はすぐにつかめたが一緒にいる栗色の髪の男ーーたぶんギルガメシュだーーが桜花と一緒にいる理由が分からなかった。


あとは雪之丞がいた。どうも桜花に心を操られているらしい。父の力を奪った暁妃を殺そうと躍起になっているようだった。暁妃がこれを翠に伝えるかどうか悩んでいると、翠が部屋にやってきてまた催しごとを行うと言った。今度は西洋風に舞踏会らしい。


暁妃は頷いたが内心げんなりしていた。帝も皇后も暁妃の髪が黒くなってから目に見えて優しくなった。それに対して暁妃は今度こそ両親2人を見限った。



しかしまあこれで天界に向かった後結婚する予定の毘沙門天に恥をかかすことはないだろうと安心していた。なぜか人間として生まれ出でたとき、白い髪に金色の眼だったから暁妃は驚いた。本来は黒い髪に茶色の目であるはずなのに。しかしそれももう解決した。暁妃は心底安堵した。



暁妃の天界での名はもう決まっていた。吉祥天、別名は功徳天ともいう。



暁妃はふと妹の桜花のことを思い出し、どうしようかと考えた。しかしまあどうせいつか彼女も、と思考を止め、今度の舞踏会の衣装を選ぶように彩也子に言われ立ち上がった。


毘沙門天にエンキドゥに抱いた想いのことは言わないでいた。幼少期から知っている夫にいらぬことは言わない方がいい。


暁妃は黒と白の生地に桜や牡丹、あらゆる花が刺繍された着物を選び柔らかい黄色のこちらにも花が刺繍された帯を選んだ。今度の舞踏会は毘沙門天と出る。なぜなら夫婦になるからだ。


帝釈天は毘沙門天の上司(主でもあるからこの言い方はおかしいかと暁妃は考えた)であるからずっと共にいてくれた。

なぜ18歳まで待ったのか。簡単だ。この国では18歳にならないと結婚できないからだ。それまでに死んでしまえば18になるまで天界で待つ気でいた。


死のうがどうしようが現世の決まりを守ってしまうのが現世で生まれた者の宿命らしい。



舞踏会の日になると暁妃は浴場で入念に現れ、化粧を施され、髪を結い、決めていた振袖を着た。


「暁妃様、美しゅうございます」

「そうか、ありがとう」

「一緒に踊る男性はもう決めておられるのですか?」

「最初から妾の踊る相手は決まっている」


そう言って暁妃はわざと廊下に待機していた毘沙門天と腕を組んで歩いて行った。それを見ていた帝釈天は息を吐き「ようやくか」と呟いた。


驚いた阿弓と彩也子は帝釈天に尋ねた。



「あの、帝釈天様、あのお2人は...?」

「ああ、夫婦になることが決まっている2人だ。しかし長かった。阿修羅王へなにか礼をせんといかんな。今回ばかりはあやつがいないとどうにもならなかった」

「あの、帝釈天様」

「ーーなんだ」


やることがある、と言いたげな帝釈天に阿弓は尋ねた。


「毘沙門天様と夫婦になるということは、暁妃様は吉祥天様でございますか?」

「知らなかったのか?」

「ええ、はい」

「.....阿弓と言ったな、お前、夫の七緒大尉に十分尽くすよう。夫婦はお互いが相手を思い遣って成立するものだ。七緒大尉はお前が大切なようだが、それに自惚れずにお前も七緒大尉を十分に愛し敬うと良い」

「は、はい!」


阿弓が緊張しながら帝釈天の言葉に返事をすると帝釈天も会場へ向かって歩いて行った。まさかまったく気づかない人間がいるとは思わなかった。阿弓のことを思い出し帝釈天は考えた。素朴な善人。ああいう人間は極楽へ行くだろうなと。



毘沙門天と共に会場へ入ると華族たちが驚いたように暁妃を見、笑顔で話しかけてきた。暁妃はもう人間の心理をだいたい理解したために毘沙門天を紹介した。


「もうすぐ結婚いたします、婚約者の毘沙門天でございます」

「それはなんとおめでたい」

「おめでとうございます、暁妃様」


華族の皆は口々に2人の幸せを願ったり、結婚に喜んで笑顔であったが暁妃が去ると扇で顔を隠し、暁妃がいなくなったら結界はどうなるかと心配そうに話していた。そしてこのことを帝は知っているのかと。




毘沙門天と結婚すると挨拶ついでに帝と皇后に言うと2人は驚き、顔を見合わせ、暁妃にどういうことかを尋ねた。暁妃は言った。



「妾は生まれた時より彼と夫婦になることが決まっておりますゆえ。そのように釈迦や如来が妾を現世に生まれ出でさせたのでございます。舞踏会が終れば妾は天界へ行く準備を始めます。そのように妾の運命は決まっているのでございます」

「待て、待て、それでは結界は、この地はどうなる?」

「神は慈悲深くございます。きっと助けてくれましょう」



それではと礼をし、暁妃と毘沙門天は去ろうとした。その時に扉が開いた。



「お母様、お父様、騙されないで。その女は魔物ですわ」



という聞きなれた声がしたのでその方を見た。

桜花が栗色の髪の男と雪之丞を連れてやってきた。暁妃は今日か、と考えた。



どうやら今日妾は死ぬらしい。




読んでいただきありがとうございます。

続きは明日8時に更新します。

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